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2021年12月01日

幸せをくれるワンちゃんとネコちゃんへの恩返し
笑顔、健康、快適な暮らしをつなぐ「waneco」の輪

 「今、何をしてる?」と聞くと、自宅のワンちゃんやネコちゃんから「運動してた!」といった返事がくる。LINEを通じて愛犬・愛猫と会話のような体験ができる、ちょっとワクワクするサービスが始まった。NECが開発した「waneco talk」だ。だが、このトーク体験の提供だけが、wanecoプロジェクトの目的ではない。企業や愛好家、さまざまな人が連携して、犬や猫がもっと健康かつ快適に暮らせる社会をつくっていきたい。そんな思いが根底にある。

離れているときも、近くに感じたい

 今回、紹介するのはワンちゃん、ネコちゃんとAI、そしてDXの話。愛犬や愛猫と暮らしている人は、その暮らしをもっと充実させるために、そうではない人もAIやデータをうまく活用するための参考に聞いて欲しい。

 専用のシッターや保育園、フィットネスクラブ、タクシー、葬儀やお墓、住宅や旅行など、犬や猫と暮らす人向けのビジネスが多様化、拡大している。

 背景にあるのは「犬や猫の家族化」だ。「飼育動物」「愛玩動物」といわれてもピンとこない。「家族」「うちのコ」という方がしっくりくる。そんな愛好家は多い。総務省が実施する国勢調査において「愛犬は家族欄のどこに書けばよいのか」という問い合わせがあったという話もある。

 そんな愛好家にしてみれば、家は愛犬・愛猫と快適に暮らせる設計にしたいし、旅先でも愛犬・愛猫と一緒に過ごしたいと考えるのは当然。そのようなニーズに対応してさまざまなビジネスが生まれているのである。

 そうした中、興味深いサービスが発表された。LINEを使ってまるで愛犬・愛猫とトークしているような体験ができる「waneco talk」である(画面)。

waneco talkのイメージ
LINEを通じて愛犬・愛猫とまるで会話をしているような体験ができる。仕事中、LINEからの通知。見てみるとお留守番中の愛犬・愛猫から「目覚めたぁ!!」とメッセージがきていたりすることも

 自身も愛犬家であり、waneco talkの開発者兼事業責任者であるNECの福田 健二は次のように語る。「ワンちゃん、ネコちゃんと暮らしている人は同じ気持ちだと思うのですが、目や顔の表情、仕草やふるまいを通じて人と彼・彼女らは十分に会話をしている自覚があります。そこに言葉がないだけです。ただ、言葉がないため、離れてしまうと、途端にコミュニケーションが難しくなる。しかも調査をすると約40%の家庭でワンちゃんやネコちゃんが5時間以上の留守番をしていることがわかった。もし、一緒にいるときのように『今、何をしてる?』『運動してた!』みたいなやり取りができれば、留守番も安心だし、なにより楽しい。そう考えたのが開発のきっかけです」。

NEC
AI・アナリティクス事業部
環境分析事業推進室
室長
福田 健二

膨大なデータをAIで分析し、ふるまい判別モデルを作成

 もちろん、犬や猫がスマートフォンを立ち上げてLINEを開き、メッセージを入力しているのではない。そういう意味では「トーク」ではなく「トーク体験」がwaneco talkの正確な表現だ。しかし、それらしいメッセージによって擬似的なトーク体験を提供しているというわけでもない。そのとき、犬や猫が眠りから覚めたのも、走り回っていたのも、間違いなく事実だ。

 では、どうやってメッセージが届くのか。勘のいい人は、もうわかったはず。そう。AIが会話の仲介役を務めているのである。

 waneco talkを利用する犬や猫は首輪にセンサーを装着する。日本動物高度医療センター(JARMeC)が開発、提供している犬猫用活動量計「PLUS CYCLE」だ。

 「PLUS CYCLEは、わずか9グラムの筐体の中に加速度センサーと気圧計を内蔵しており、それらのデータによって犬や猫の活動を計測します。気圧を計測しているのはジャンプに対応するためです」とJARMeCの山本 誠氏は話す。

株式会社日本動物高度医療センター
診療本部事業開発課
山本 誠氏

 その活動データを基に犬や猫のふるまいを判別し、それに応じたメッセージを作成、送信するわけだが、会話と呼べるやりとりを実現するには、歩く、走るなどだけではなく、より細かなふるまいの判別が欠かせない。それを実現するためにNECは、犬と猫のふるまいに関する膨大なデータを収集し、AIで分析した。

 具体的にはJARMeCに協力を仰ぎ、動物園などにいる犬と猫の首輪にPLUS CYCLEを着けてもらい、普段通りの生活を録画させてもらった。

 次に録画した映像を目で確認しながら、数秒ごとに「寝た」「起きた」「歩いた」「座った」といったふるまいを手作業で記録。「ラベル付け」という作業を実施した。その上でPLUS CYCLEのデータと、そのラベル付け映像をひも付けて「どういうデータのときは」「どんなふるまいをしている」というデータセットを作成した。

 最後は、そのデータセットをNECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである異種混合学習を使ってAIに学習させ、活動データからふるまいを特定する判別モデルを作成したのである。

 「種類、性別、多様なワンちゃん、ネコちゃんのデータを取得して、精度の高いモデルを実現しました。異種混合学習技術は複雑なデータから精度の高い予測モデルを生成するのが得意な技術です。予測を1つのモデルで表現するのではなく、場合分けをして複数のモデルを生成し、それらを組み合わせて全体としての予測精度を高めるのです。今回も動作の大小や経過時間、行動の変化などから場合分けの条件を自動で見つけてくれて、適切なモデルを作成することができました。自由奔放なワンちゃんやネコちゃんのふるまいを表現するのにとても適したAI技術だったと思います。ただ、ふるまいは種類や性別だけでなく個性によるところも大きく、今後も継続的に改善を続ける予定です。また、特に排尿、排泄、給餌、給水は、健康管理上で重要な行動となるため、曖昧な判定をすることは絶対に避けなければならず、今回は判別することを見送りました。近いうちに提供開始できるように機能強化を行っているところです」(福田)

多様な事業者と愛好家、全員で愛犬・愛猫との幸せな暮らしをつくる

 このように、犬や猫の健康を願う人々の協力とNECのAIおよびデータ活用ノウハウを結集して、waneco talkは完成。現在、クラウドファンデングサービス「Makuake」にて応援を募集中だ。

 だが、waneco talkによるトーク体験は、実はwanecoプロジェクトの一部に過ぎない。さまざまな事業者や愛好家がつながり、互いに助け合いながら、犬や猫の健康を守ったり、暮らしを豊かにしたりしていく。wanecoプロジェクトが目指しているのは、そんなエコシステムの実現だ。

 「私は15年間一緒に暮らした愛犬を虹の橋に見送った経験があります。リンと名付けた女のコだったのですが、見送った後は、さまざまな思いに駆られました。『うちに来て幸せだっただろうか』『留守番が多くて、寂しかったんじゃないか』『病気の治療法は、あれでよかったのか』──。そう考え続けて浮かんだのが、人を幸せにしてくれるワンちゃん、ネコちゃんに対して私なりの恩返しをしたいということ。それをかたちにしたのがwanecoです」(福田)

 愛好家は愛犬・愛猫をとてもかわいがっているが、家族といえるレベルでケアできているかというと難しい。例えばヘルスケア。人と違って犬や猫は言葉を話せない。病院に連れていったときには手遅れということが少なからず起きている。だからこそ、日々の変化に細かく目を向け、病気やケガの兆候に気付いてあげたいし、予防策も積極的に講じておきたい。

 しかし、これらを行うには知識が必要だ。では、知識はどこで身につけるのか。犬や猫には、人の子育てにおける母子手帳のような、体系化、システム化された仕組みは存在しない……。

 その結果、「ミニチュアダックスフンドはヘルニアになりやすい」など、獣医師たちが注意喚起していることに対して「自宅の床は、こういう素材にしておくと良い」といった事業者が持つ豊富なノウハウがうまく共有されず、犬や猫が防げたはずの病気やケガを繰り返している可能性がある。

 wanecoには、この状況を好転させたいという思いが込められている。カギとなるのが「共通ID」だ。わかりやすくいえば犬や猫のマイナンバー。1匹に1つのIDを割り振り、その情報をwanecoで管理する。「この情報を基にさまざまな事業者と愛好家が連携。ワンちゃん、ネコちゃんにかかわる全員で、人と彼らとの幸せな暮らしをつくっていきたいと考えています」と福田は言う。

 wanecoの発表後、真っ先に参加を決めた事業者の一社がJARMeCである。同社は、高度な医療技術を必要とする患者を治療するための動物病院。人に例えるなら大学病院のような位置付けの病院だ。

 「私たちは、治療が難しい重篤な疾患の犬や猫と向き合っていますが、理想は、そもそも大きな病気やケガをしないこと、早期にしっかりとケアや治療をすることです。先に紹介したPLUS CYCLEは、そのための仕組み。元気がなかったり、体のどこかが痛いことによる活動量の低下を早期にとらえ、素早く手を打つことを目的としています。この仕組みをもっと多くの人に知ってもらいたいし、データを多くの動物病院と共有すれば、人でいう地域医療連携のような仕組みを構築することもできる。また、データを使ってNECがwaneco talkを開発したように、ほかの事業者と共に新しい価値を提案していくことも可能。そう考えてwanecoへの参加を決めました」と山本氏は言う。

 wanecoは、JARMeCのような事業者がたくさん参画し、その輪が広がるほど価値が高まる。例えば、参加する事業者が増えれば、愛好家は、旅行する、食事をする、クルマを買い換える、家を購入するなど、大小あらゆるイベントの度に最適な専門家に相談をすることが可能になる。また、登録する犬や猫の種類が増えれば、より多くのデータが集まり、それをAIで分析すれば、waneco talkの表現力がより豊かになったり、病気やケガの予防に関する新しい発見が見つかったりする可能性が高まる。「実際、食事、遊び、毎日の暮らし、さまざまな分野の事業者から引き合いを得ており、日々、打ち合わせを重ねています」と福田は言う。

ビデオ会議中の福田と愛犬カリンちゃん、山本氏

 引き合いの状況を見ると、どうやらwanecoの滑り出しは順調なようだが、当初はNECのような門外漢が参入してくることに拒否反応を示されるのではないかという懸念もあった。だが、それは杞憂。多くの事業者がNECを歓迎しているという。

 「実は過去、同じような構想を掲げた企業はいくつかありましたが、すべて計画倒れに終わっています。正直、NECの話を聞いたときは『またか』と思いました。しかし、実際に話を聞くと、福田さんたち担当者の熱量が違う。ペット業界の各社は、まだ連携がうまくとれていないこと。そのため、まずは連携できる体制を整えることが必要で、収益化には時間がかかるのではないか、ということをお伝えしても止めようとしない。社会インフラを支える企業として犬や猫を取り巻く環境の発展に貢献したいという思いが、ひしひしと伝わってきた。ほかの事業者も同じことを感じているのでしょう」(山本氏)

 NECは犬や猫のためのビジネスが本業ではないから、参加する事業者との間に競合関係がない。NECのような信頼できる会社のサービスなら安心して参画できる。データやITの専門家として、最適なデジタルプラットフォームを構築してくれるはず。このような観点でwanecoの発展性に期待する声も多いようだ。

 NECの新領域事業として、大きな一歩を踏み出そうとしているwaneco。人と犬や猫の幸せづくりに貢献する仕組みとして、そして、データとAIを活用した新しい仕組みとして、今後の進展に注目したい。

※クラウドファンデングサービス「Makuake」にて応援を募集中

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