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2022年11月14日

丸紅の挑戦に見るこれからのオフィスの姿とは?
~顔認証でストレスフリーな入退管理を実現~

 コロナ禍をきっかけに企業の働き方は大きく変わった。最近はテレワークとオフィスワークを使い分けるハイブリッドワークが広がりつつある。こうした状況に対し、新しい働き方とオフィスのあり方を模索する企業は少なくない。その先行事例といえるのが、総合商社大手の丸紅だ。同社では、新社屋移転を機にオフィス変革を進め、その一環としてエントランスの入退館ゲートにNECの顔認証入退館システムを導入した。その狙いと効果、これからのオフィスのあるべき姿について、丸紅の公原 一氏とNECの沖中 耕平が語り合った。

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オフィスセキュリティは「生体認証」がトレンドに

── ハイブリッドワークが広がりを見せる中、オフィスの役割が再定義されつつあります。NECはこの変化をどのようにとらえていますか。

沖中:
 コロナ禍が長期化する中で「リモートでは意思疎通が図りづらい」「社員のメンタルヘルス管理が難しい」といった“負”の部分もクローズアップされてきました。そういった背景を踏まえてオフィスに求める役割というものが変わってきており、社員は明確な目的を持ってオフィスに出社するようになっていくと思います。

 オフィスビルに今後求められるのは、目的をもって集まり、快適で自律的に働ける環境であり、社内外に開かれたコラボレーションハブになる共創空間です。テナント企業としてはオフィスビル内にコラボレーションスペースやシェアラウンジをつくったり、不動産事業者としては共用部の設備を充実させ、建物全体でのABW(Activity Based Working:業務内容に合わせて、働く場所や時間を自由に選択する働き方)の実現やテナント間の交流を促すという流れが広がりつつあります。

── そうした中、オフィスセキュリティの一環として生体認証への期待が高まっていますね。

沖中:
 オフィスセキュリティで重要なのは、セキュアであることと利便性の両立です。コラボレーションの機会が増えれば、これまで以上に外部の人の出入りも多くなる。当然強固なセキュリティは欠かせませんが、セキュリティ区画が細分化されると、IDカードが複数必要になり、常にそれを持ち歩かなければならないといった課題も出てきます。そこに対して、それぞれのセキュリティチェックを生体認証でつなげば、1つのIDで入退が可能になるといった利便性の両立も考えられます。

丸紅新社屋は人、モノ、情報が集まるハブの役割を担う

── 丸紅では新社屋移転を機に、次世代を見据えたオフィスを創造したそうですね。その経緯と狙いを教えてください。

公原氏:
 竹橋にある本社の建て替えを行い、2021年5月に新社屋への移転を完了しました。建て替えを考えるきっかけは東日本大震災です。事業継続性を確保するため、耐震性を高め、災害に強いビルへ生まれ変わる必要があると考えたのです。

 新社屋建築中にパンデミックが発生しましたが、事業継続という点では結果的に目指す方向性は同じです。ビジネスを止めることなく、社員が働きやすい環境づくりを進めています。

 その新社屋のコンセプトは大きく3つあります。最先端の機能・設備の実装。内外のつながりを大切にし、情報を発信する基地となること。そして地域に開かれたスペースを用意し、周囲の環境と融合することです。

 特に重要なキーワードが「内外のつながり」です。人、モノ、情報が自然と集まるハブの役割を担い、それらをつなげ掛け合わせて知的生産性を高めていく。そんなオフィスを目指しています。

 こうした点が評価され、新社屋は第35回日経ニューオフィス賞の「クリエイティブ・オフィス賞」を受賞しました。

丸紅株式会社
総務部 副部長
公原 一氏

── 人とのつながりを促進し、新しい価値やアイデアを生み出していく空間ということですね。その具体的な仕組みや仕掛けについてもう少し詳しく教えてください。

公原氏:
 それでは具体的に新社屋の設備を紹介しましょう。

図1 丸紅新社屋の一般執務エリア
図1 丸紅新社屋の一般執務エリア
「サークル」はフリーアドレスで目的や状況に応じて席を選ぶ。「ハドル」にはホワイトボードやモニターが複数用意されており、ここでコミュニケーションを重ね、アイデアを練り上げていく。「ラウンド」は新たな価値や発想を生み出す場だ

 サークルは組織の一体感を醸成する場です。仕切りのないフラットなデスクで、自然と人が集まりやすいレイアウトになっています。ハドルはアメフト用語で円陣、つまり作戦会議のこと。少人数の打ち合わせをスピーディかつカジュアルに行えます。ラウンドは多様性に合わせて選べる新しい価値創造の場です。心を解放し、集中力を高めることで、今までにない気付きや発見を促し、新たな発想や価値を生み出す場として活用してもらっています。

 7階の社員食堂も社員に好評なスペースです。皇居に面していて景観がとても素晴らしいことが大きなポイント。快適な空間でおいしい食事を楽しめれば、社員間のコミュニケーションも自然と活発になります。

 4階は貸会議室フロアで、貸会議室やコミュニケーションラウンジ「オアシス」があります。社外のお客様や取引先様と、ここでミーティングや商談を行います。一般の方々に開放されており、終日500円で利用できることから、サテライトオフィスとして使う方も多くいます。

顔認証で立ち止まらずに入退館 社員の7割が「満足」

── 内外のつながりを育む一方、オフィスセキュリティには最先端の設備が導入されていると伺いました。

公原氏:
 新社屋のコンセプトに最先端の機能・設備の実装を掲げていたため、入退館管理に生体認証の活用を考え、さまざまな仕組みを検討しました。生体認証ならセキュリティと利便性の両立を図り、社員証の紛失や盗難によるなりすましも防止できます。

 生体認証の中でも顔認証は非接触で感染症対策としても有効です。特にNECの顔認証技術は世界トップクラスの精度を誇り、実績も豊富。しかも、マスクを付けたまま認証できる。そこでNECの「ウォークスルー顔認証システム」を採用しました(図2)。1階エントランスと地下1階の入退館ゲート、役員室への入室導線に導入しています。

図2 丸紅新社屋の1階エントランスと入退館ゲート
図2 丸紅新社屋の1階エントランスと入退館ゲート
エントランスの側面はガラス張りで天井が高く、開放感に溢れている。入退館ゲートに設置されたカメラの映像で一人ひとり顔認証する。朝の出社のピーク時でも混雑することなく入館できるという

── 導入後の社員の方の反響はいかがですか。またどんなところにメリットを感じていますか。

公原氏:
 入退館ゲートに設置したカメラの顔映像と登録した顔写真を照合して本人を識別する仕組みですが、カメラの前で立ち止まったり、顔をかざしたりする必要はありません。普通に歩いていくだけで認証されゲートが開きます。社員の評価も高く、アンケート調査では73%の社員が「満足」と回答しています。

沖中:
 先日、丸紅様の新社屋で打ち合わせする機会があり、時間に余裕があったので、ゲートの出入りを眺めていました。その際、一方の手に日傘、もう一方にカバンを持った女性社員の方がいたのですが、両手が塞がった状態でもそのままスムーズに通過されていきました。段ボール抱えた男性社員の方もゲートに対して斜めに入っていきましたが、それでも問題なくゲートを通過しているのを見て、本当に便利に使われているんだなと実感しました。

NEC
スマートILM統括部
スマートベニュー事業企画グループ
プロフェッショナル
沖中 耕平

認識率低下の課題をNECの実装ノウハウで解決

── さまざまなメリットを実感されていますが、それまでには思ってもみない課題やそれを解決するための工夫もあったのではないでしょうか。

公原氏:
 エントランスは南側に面し天井が高くガラス張りなので、特に冬は西日が強く差し込みます。それがカメラに悪影響を及ぼし、認識率が低下するという課題がありました。この課題はNECの提案とサポートを受け、カメラの上に小さな庇を取り付けることで解決できました。

 社員へのアンケート調査では、少数ですが「うまく認証されない」といった声も上がっていました。原因を調査すると、一例として前髪が目や眉にかかっている場合に認識率が低下することがわかりました。対策として顔写真の再登録などの解決策を社員へ周知することや、これ以外にも原因はいくつか考えられることから、それら課題を解決することで社員が快適に利用できるよう今後も調査・分析を続けていきます。

沖中:
 顔認証は遮光や逆光といった光の影響受けやすいため、カメラの画角や設置環境といった実装面でのノウハウが非常に重要になります。NECはこれまでの経験から多くの実装ノウハウを持っています。丸紅様のケースでもこのノウハウが課題解決に役立ちました。

 また前髪の問題は、マスクを着用した状態で目や眉が前髪に隠れて認識できるエリアが狭くなってしまったことも原因の1つとして考えられますが、認証がうまくいかなくなったというときに利用者自身で顔を再登録できるような仕組みも運用として大事なポイントと考えています。

── 顔認証システムは入退館管理だけでなく、オフィスライフのさまざまなシーンで活用できそうですね。丸紅では今後どのような活用を考えていますか。

公原氏:
 社員食堂の決済に顔認証システム導入を検討中です。今はポスレジに社員証をタッチした後、交通系ICカードで決済する手順ですが、顔認証システムならゼロタッチで決済が完了します。今後はPCログインに生体認証を活用することにも興味を持っています。

生体認証の社会実装を進め「Smart VenueCX」を創造

── 活用シーンが広がると、システムを提供するNECの役割もますます重要になってきます。NECは顔認証システムの社会実装という観点でも、さまざまな取り組みを進めているそうですね。

沖中:
 NECは生体認証を共通IDとして、さまざまな場所やサービスにおいて一貫した価値ある体験を提供する「NEC I:Delight(アイディライト)」というコンセプトを掲げています。こういった考え方のもと、人が集まる場所を中心としたサービスとして「Smart VenueCX」という事業も推進しています(図3)。

図3 Smart VenueCXの世界観
図3 Smart VenueCXの世界観
生体認証による共通IDを活用することで、人、地域、社会がセキュアにつながっていく。日常/非日常のあらゆるシーンで快適・便利な体験を創造し、新規ビジネスの創出と地域の活性化に貢献する

 Smart VenueCXが目指すのは「感性とデジタルの融和が生み出す感動空間の連鎖が、人、地域、社会の絆を深める」世界です。この実現に向け、既にさまざまな共創に取り組んでいます。

 栃木県宇都宮市様と実施したスマートシティの実証実験はその1つです。同市で開催された3人制バスケットボールの世界大会に合わせ、現地で使えるクーポンなどを配信し、提携ショップでは顔認証決済を実現。観客の来場を促進するとともに、消費者と店舗に新しい体験を提供しました。

 三井不動産ホテルマネジメント様のホテルブランド「sequence」にNECの顔認証システムを導入。フロントを通さない非対面のチェックイン、顔認証による部屋の鍵の解錠など安全・安心で快適なホテルステイを実現しています。

 日常の体験も顔認証で大きく変わります。例えば、マンションの入館や居室の解錠をキーレスで行う。配送業者に顔認証登録してもらうことで安全に玄関前の置き配が実現でき再配達の軽減にも寄与できます。

 NECは今後も丸紅様のオフィス変革を強力にサポートするとともに、生体認証を共通IDとして人、地域、社会の絆を深め、よりセキュアで感動体験に溢れた世界の実現に貢献していきます。

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