世界に誇る技術で、可能性を現実へ
NEC開発の生成AI「cotomi」で未来を拓く
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生成AIとデジタルヒューマンの登場により、金融相談サービスは新たな局面を迎えています。
人間らしいリアルな対話を可能にするデジタルヒューマンが「不気味の谷」を越え、これまでのサービスの限界をどのように超えていくのか。専門家と共に、「対話の壁を超えた金融サービス」の実現に向けた未来像を探ります。
世界トップクラスのIT技術を誇るNECでは、昨今急速な変化を見せる生成AI分野にも注力。23年7月には新たな専門組織「NEC Generative AI Hub」も立ち上げた。NEC開発の生成AI「cotomi (コトミ)」は、モデルサイズはコンパクトでありながらも、高度な日本語処理性能を持つ。同社の技術開発・営業を担う4名の対談から、日々進化する技術がビジネスや生活の多様性に大きく貢献する未来が見えてきた。
SUMMARY サマリー
SPEAKER 話し手
NEC
小山田 昌史
コーポレート事業開発部門 データサイエンスラボラトリー 主席研究員・上席プロフェッショナル
鳥山 慎一
金融ソリューション事業部門 金融システム統括部 シニアエキスパート
長城 沙樹
NEC Generative AI Hub ナレッジリアライゼーションリード
羽村 慧
金融ソリューション事業部門 第二金融ソリューション統括部 担当
研究開発とビジネスの連携が鍵
小山田:大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAI技術の実用化には、基礎理論の探究からAI研究用スーパーコンピュータの構築・運用まで、幅広い活動が必要です。NECは機械学習における難関学会論文採択数で、世界企業のランキングトップ10位内を直近5年連続でキープ※し、強い理論面での研究力と、国内外で様々な大規模システムを運用してきたノウハウを活用し、生成AIの研究開発に取り組んでいます。
長城:AI分野の中核を担うのは生成AI専門組織「NEC Generative AI Hub」です。国内外の研究チーム、研究所と全社のAI事業を繋げる役割を担っています。ミッションは、顧客と連携して生成AIの業務への有用性を検証し、導入から運用までの各種サポートをワンストップで対応することです。その取り組みの一環として、自社開発の生成AI「cotomi」を商用サービスとして提供しています。cotomiという名称には「言葉により未来を示して、お客様が実現したいことが実るように」という想いが込められています。
小山田:NEC Generative AI Hubが集めた顧客の要望がきっかけとなり、新たな課題に気づくこともあります。例えば、社内マニュアルのような文字数が膨大になる資料を読解させたいという声もあったのですが、当時、cotomiの処理可能な文字数は1万文字程度。確かにこれでは対応できるケースが限られると感じ、23年12月にはcotomiの処理可能な文字数を30万文字へ増やしました。このように研究開発成果をお客様へスムーズに提供できるよう、ビジネス側との連携を図っています。
鳥山:研究開発とビジネスのシームレスな連携はNECの強みといえます。顧客がどんな利用シーンを想定しており、実現に必要な機能はなにか。顧客とのやりとりの中で情報を取捨選択し、システムを業務に特化させながら導入を進めていくことを重要視しています。
羽村:22年11月のChatGPTリリース以降、生成AIへの関心はとどまることなく高まりを見せていますが、AIの導入を考えている企業も増えつつあります。一方で、理解が浸透していないと感じる場面も少なくありません。AIにも業務の向き、不向きがありますから、顧客との最初のやりとりではAIの活用方法などを整理してお伝えするよう意識しています。
人材不足にもAIの活用を
長城:昨今の傾向としては、業務へのAI導入を考えていない企業と、積極的な活用を推進する企業の二分化が進んでいる印象です。とはいえ、業務での活用といっても社内文章の校閲といった、汎用的な使い方をしている企業が大多数。私たちはそこから踏み出して、企業のコア業務にAIを活用し、業界全体を変革させていきたいと考えています。
鳥山:労働人口の減少にともない、金融機関でも業務効率化は課題となっています。解決には生産性の向上が不可欠で、その鍵を握るのがテクノロジー、AIの活用です。例えば、三井住友海上様では問い合わせがあった際、商品・事務手続マニュアル等をもとに人間が確認や対応をしていますが、ドキュメントの情報をAIが参照し、わかりやすく人間に教えてくれる照会応答支援機能を導入して、業務の迅速化や効率化を進めています。今後はAIが対応できる範囲を拡張させ、様々なシチュエーションにも対処できるよう改良する予定です。
長城:顧客の財産を預かるという性質や業務に密着した利用が増えていることから、生成AIには高度な安全性も求められました。NECではCDO(Chief Digital Officer)直下に「デジタルトラスト部門」を設置し、リスクマネジメントに取り組んでいます。また、AIリスク管理分野に強みを持つ米国のRobust Intelligence社との連携により、大規模言語モデル(LLM)のリスク評価プロジェクトを推進。これにより、世界水準のAI品質やリスク基準をクリアした高品質で安全な生成AIモデルを提供できる体制を整えています。
羽村:単純な情報処理だけでなく、高度な水準の対顧客業務にも対応できるようになれば、生成AIの活躍の場は一層広がっていくでしょう。特に期待しているのが、人材ごとのスキルギャップを埋める役割です。昨今は人材の流動化が進んでいますが、一方で経験の差が顧客対応の質につながってしまうといった課題も見られます。例えば、窓口対応などをAIが支援することで、人材不足が懸念される業界でも常に一定水準のサービスが提供できるのではないかと考えています。
小山田:世界的に見ても特に軽量かつ高精度なcotomiなら、導入や運用の負担を抑えつつ、様々な業務での貢献が期待できます。また、研究部門では大規模言語モデル(LLM)が出力したテキストを用いて他機器を操作する研究も進めています。LLMを使うことで、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる、定型的な作業の自動化を、これまでよりもはるかに高い品質で実現できるのです。ホテルの予約手続きなど、手間がかかるが定型な業務が完全に自動化させる未来も見えてきました。
羽村:他にも、マーケティング施策では膨大なデータを取り扱いますが、複雑なデータ分析こそAIの得意分野の1つです。情報を正確に処理できればターゲティングの精度向上にもつながり、売上アップにも貢献できるはずです。また、NECは20年にスイスの大手金融ソフトウェア企業アバロック社を買収しました。今後は同社の知見とNECの生成AI技術を掛け合わせ、顧客の資産運用支援においても満足度の高いサービス提供を実現していきます。
「可能性」が現実になる1年に
鳥山:AIの進歩は目まぐるしく、新しいAI技術が日々開発されています。24年は従来、可能性の域を出なかったアイデアが次々に現実となっていく1年になると予想しています。AIの認知が一気に広がって、実際に使い始める人も増えるのでないでしょうか。
小山田:AIに入力できるもの、AIが出力できるものが、ますます広がってゆくと予想します。例えば、23年は画像を読み解くAIが注目を集めました。今後は、例えばパワーポイントの資料などある程度複雑な構造を持つドキュメントを入出力できるAIが実用レベルで登場してくるのではないでしょうか。また、1つのLLMではなくLLM同士を組み合わせ、互いの欠点を補ってゆく、という方向性も注目を集めています。また、生成AIの進化にはリスクがともなうことも理解しておかなければなりません。AIの生成物が増え、新たなAIが学習元として他のAIの生成物を利用するような状況では、バイアスが助長される問題も指摘されています。AI生成物には個別のタグをつけるなど、生成されたコンテンツのトレーサビリティが大事になってゆくでしょう。
羽村:続々と生まれる多種多様な技術を、利用者がどれだけ理解し吸収できるかが、AI普及の鍵になると考えています。時代に取り残されないためにも、開発者だけでなくユーザー側も、意識的に情報をキャッチアップしていくことが大切です。
長城:これからの企業の発展には、新しい技術をより高度なレベルで業務に取り込んでいけるかどうかも1つの要因になるといえます。AIの導入には一定のコストもかかりますが、成長に意欲的な企業は費用対効果を認めて業務への活用を進めていくのではないでしょうか。ビジネスの場以外でも、AIの普及は進むでしょう。本人に自覚がなくても、無意識にAIを生活に取り込んでいるような時代が来ると考えています。