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オペレーショナルエクセレンスとは?
~伴走型のコンサルティングで日本の企業や社会を元気にしたい~

 労働力不足や低い労働生産性、インフレや円安による資材費の高騰など、日本企業にはさまざまな経営課題が立ちはだかる。しかし、こうした課題は現場力×デジタルで解消することが可能だ。経営ビジョンと合致した的確なDX戦略を描き、各現場の業務プロセスを最適化すれば、競合他社に追随できない優位性=オペレーショナルエクセレンスを確立することもできる。なぜ「オペレーショナルエクセレンスの確立」が山積する課題の解消に有効なのか。その実現に向けどのようなステップを踏めばよいのか。さまざまな企業に伴走型のコンサルティングを提供するチームのキーパーソンたちに話を聞いた。

山積する経営課題にどう立ち向かうべきか

 2030年の日本の労働人口は、2023年より約300万人少ない7076万人になると予測されている。つまり、これから数十万人規模の働き手が毎年いなくなっていくわけだ。

 問題は働き手の減少だけではない。労働生産性の低さも深刻な状況にある。2022年の日本の一人当たり労働生産性は、OECD加盟38カ国中31位だった。足元では紛争や円安による資材費の高騰、建設業界や運送業界の時間外労働時間の上限規制が適用された「2024年問題」などもあり、日本企業の経営環境は険しさを増す一方だ。

 こうした環境を打破し、成長を続けるために何が求められるのか。その有力なアプローチの1つとして近年、再び注目を集めているのが、「オペレーショナルエクセレンス」という概念だ。これは、アメリカの著名なコンサルタントであるマイケル・トレーシー氏とフレッド・ウィアセーマ氏が「ナンバーワン企業の法則」で提唱したもので、優良企業の3大指標の1つとされている(※1)。具体的には、オペレーション(業務の管理・運用)が卓越しており、競合他社が真似できない優位性を保っている状態を指す。

 これを実現している企業としては、マクドナルドやスターバックス、トヨタやニトリなどが挙げられる。特にトヨタの「カンバン方式」や「ジャストインタイム方式」などは、誰もが知る代表例だ。共通するのは、オペレーションを徹底的に合理化してコストを抑えつつ、質の高い商品やサービスを提供し続けていること。つまり、磨き抜かれた「現場力」と言い換えてもよいだろう。

 もちろん、オペレーショナルエクセレンスは、こうしたリーダーカンパニーの専売特許というわけではない。工夫次第であらゆる業種や規模の企業が実現することが可能だ。

 とはいえ、その実現に向けた道のりは平坦ではない。まず必要なのは、自社のパーパス(存在意義)に根差した経営理念を明確にし、ビジョンに即したDX戦略を策定すること。その上で業務を的確にデジタル化し生産性を高めていけば、労働力不足を補いつつ、収益性を大きく向上させることも可能だ。

  • ※1 3大指標:オペレーショナルエクセレンス、プロダクトリーダーシップ(優位性を持つ製品・サービス)、カスタマーインティマシー(顧客の囲い込み)の3つ
図1 オペレーショナルエクセレンスの適用事例

戦略・構想策定から実装、運用まで一気通貫のDX戦略が成功のカギ

 オペレーショナルエクセレンスを実現するには、さまざまな視点からDX戦略や業務を再定義する必要があるため、自社のみで完結するのは容易ではない。そこでNECは、オペレーショナルエクセレンスの確立を目指す企業に向けたコンサルティングサービスを提供。課題軸に沿って上位戦略から実行、継続改善までをトータルで支援している。2024年5月には、これまでNEC自身が実践してきたビジネス変革・社会変革の知見・経験を体系化し、顧客を未来に導く価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」を発表。「Value Driver」として、日本の競争力強化を目指している。

 「課題設定や計画策定などの上流コンサルティングから解決策の実施、運用・保守までをひとつながりにした各種オファリングもBluStellarに位置付けられています。豊富なソリューション群の中からお客様の業務現場によりマッチするものを選定しやすくなったことで、私たちも経営課題の早期解決とオペレーショナルエクセレンスの実現をご支援しやすくなりました」と語るのは、NECの曹 亨成だ。

NEC
戦略・デザインコンサルティング統括部
オペレーショナルエクセレンスグループ
シニアマネージャー
曹 亨成

 オペレーショナルエクセレンスを達成する道筋は、一本道ではなく企業によって異なってくる。そこで必要となるのは、戦略や業務改善など各企業が抱える課題の洗い出しとDX戦略の練り直しだ。これにより、経営ビジョンとの整合性が図られた計画を再構築していくわけだ。

図2 オペレーショナルエクセレンスのステップ

 「DX戦略を策定して展開を始めたものの、途中で壁に突き当たる企業は決して少なくありません。特に製造業などでよく見られるのが、慣れた仕事のやり方を変えさせられることに対して業務部門が抵抗を抱くことです。DX戦略は全社の枠組みで進められなければなりませんが、変革が個々の組織に局所化されて全体最適につながっていないケースも散見されます。また、DXの推進役となった情報システム部門のメンバーにとって既存システムの刷新や新しいツールの導入が目的化してしまい、目指すべき真のゴールが見失われるといったことも起きがちです」(曹)。

 こうした数々の「壁」を取り払うため、NECでは専属の担当チームを組成し、クライアントのDX推進組織と一体となって伴走型のコンサルティングを提供するという。大まかには3カ月を標準期間として、戦略の展開を阻害している要因を抽出し、経営戦略やビジョンにひも付いたDX施策を再定義。経営層にも改めてDX戦略への理解を深めてもらい、全社がスピーディに変革する基盤を整えた上で、部門ごとの実行計画を立案。必要に応じて業務プロセスの最適化を講じるチームを招請するという流れだ。

 ある建設業の企業からは、労働力不足の課題解消に向けたDXを推進したいとの相談がなされ、曹のチームが対応しているという。

 「その企業はそれまで、現場目線で施策やシステムの検討をしてきましたが、それでは目先の対策にしかならず、また部門間で重複も発生していました。そこで我々は、全体を俯瞰した中長期的な視点での将来業務検討と、必要となる仕組みの実現に向けて、NEC内の開発部門や営業、コンサルティング事業部内で連携しながら新たな解決策を提案しています。このようにさまざまな部門が総力を結集して一気通貫でDX戦略を支援することが成功のカギだと考えています」(曹)。

プロセスマイニングで業務プロセスを最適化

 最上流工程のDX戦略の再策定が済んだら、次はいよいよ業務プロセスの最適化を目指す。

 「大きな流れとしては、まず約1カ月程度で業務の可視化による概要を把握。改善した場合の効果の概算を提示します。次のステップでは2~3カ月かけて課題仮説を深掘りし、業務プロセスを最適化する具体的な施策プランとロードマップを策定していきます。次に、その施策を実行するフェーズに移り、改善を繰り返しつつ、定着するまで伴走していきます」とNECの成田 祐樹は話す。

NEC
戦略・デザインコンサルティング統括部
オペレーショナルエクセレンスグループ
マネージャー
成田 祐樹

 この「業務の可視化」のフェーズで用いられるのがプロセスマイニングクラウドサービスCelonis(セロニス)だ。これは業務のログデータから時系列プロセスを可視化するもの。データは基幹システムや各種ドキュメントデータから取得可能で、データ化されていないアナログ業務の部分に関しては従来どおりヒアリングでカバーするという。

 「従来のコンサルティングでは現場へのヒアリングによって現状を把握していましたが、業務データのプロセスマイニング(業務プロセスをデータにより可視化し、改善ポイントを特定する手法)やAI技術を活用すれば、主観を排した数値データとして状況が見えるようになり、より的確な課題抽出と効果的な改善提案を行うことが可能です」とNECの田所 理沙は説明する。

NEC
デジタルプラットフォームビジネスユニット
コンサルティングサービス事業部門
戦略・デザインコンサルティング統括部
田所 理沙

 例えば、ある企業の物流倉庫では、作業員の最適化に悩んでいた。そこで人員配置の適正値を算定するため、行動認識AI技術を用いたソリューションを応用。倉庫管理システムに蓄積された業務データと物流現場の画像データをCelonisで解析することで、ピッキングや出荷検品、梱包など特定の作業にかかわる作業員の行動を可視化した。

図3 業務プロセス変革を実現する「Celonis」

 「その結果、90%以上の精度で作業員の行動を認識。作業外時間が多い日時を明らかにすることができ、そのデータに基づいて時間帯や作業の種類ごとに人員配置を最適化できることが実証されました。これは物流倉庫に限らず製造工場やスーパー、コンビニなど、人員配置を適正化したい多くの業務に適応できるはずですし、人員を調整せずに業務現場のレイアウトを変更することで対応するといった方策も考えられます」(成田)。

 こうして問題点を浮き彫りにし、仮説をもとに方策を練った後の実行フェーズでは、1万以上あるAPIインテグレーション(※2)から最適なものを選定し、高度なワークフローを構築していく。「曹が触れたように、NECでは戦略構想策定後のソリューション実装を、社内の部門が密に連携しながら最後まで伴走します」と成田は力を込める。

  • ※2 APIインテグレーション:複数のシステムデータや機能をAPIを通して連携させること

自身が経験してきた「痛み」を確かな「知見」へ昇華

 なぜ、ICT企業であるNECが、こうした伴走型のコンサルティングサービスを展開できるのか。それは自身が痛みを伴った改革を実践してきたからにほかならない。

 「当社には、ITバブル崩壊後に株価が大きく下落して経営危機に瀕した経験があります。その後さまざまな改革を断行し、AI(人工知能)や生体認証などの技術力を世界トップレベルに押し上げて復活。私たち自身が『痛みを知る製造業』であることから、お客様の悩みや苦しみに深く共感して寄り添うことができます。また、自らが実験台となって新しいソリューションやサービスをまず社内で試用し、効果のほどを実証した上でご提供する『クライアントゼロ』を実践しています」(曹)。

 また、柔軟なHRポリシーがもたらす社内の人材の多様性が、技術開発力やコンサルティング力に厚みを与えている点も大きいという。

 「ジョブ型のキャリア採用も活発で、コンサルティング部門にもさまざまなスキルや知見を持つ社員が集まっています。それだけにお客様の多様な課題やご要望に臨機応変にお応えできるのも魅力だと思います」(田所)。

「日本の再興」に向けて企業や社会を活気付けたい

 こうした伴走型のコンサルティングでオペレーショナルエクセレンスを支援することでNECは何を目指すのか――そのテーマは、「リバイバルジャパン(日本再興)」だ。そこには、労働力不足をはじめとする経営課題に苦しむ企業の事業を持続可能なものにして、未来へ向かってしっかり歩を進めてほしいという想いがある。

 DX戦略の見直しやオペレーショナルエクセレンスの実現には業務改革が不可欠で、改革は往々にして痛みを伴う。だからこそ顧客企業に対して、必要な苦言を呈することも辞さないという。

 「前述した人手不足に悩まれているコンサルティングにおいては、お客様が当面の窮地をしのげればよいという近視眼的な視点が強かったため、もっと先を見据えなければ抜本的な課題解決にはならないと何度も話し合い、方針転換をしていただくことができました」(曹)。

 現場の業務が改革されれば、それに応じてDX戦略の方向性も見直しを迫られる場合があるだろう。逆に上流の戦略が変われば、それに合わせて再び業務プロセスを修正する必要が生まれるかもしれない。

 「オペレーショナルエクセレンスは、そのように上流と下流双方からのアプローチを重ねた先に達成されるものです。その意味でも、DX戦略策定と実際の施策を講じるオファリングをシームレスに利用できるようなコンサルティングサービスを提供しているのです」と成田は語る。

 既にNECに所属するコンサルタントは100人を優に超える。今後も多様な人材×知見・ノウハウ×最新技術を強化・組み合わせることで、日本企業ひいてはこの社会全体を活気付けていく考えだ。