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2020年07月01日

高輪ゲートウェイ駅前イベントで顔認証改札技術などを体験!

 JR山手線で約半世紀ぶりの新駅として開業した「高輪ゲートウェイ駅」。JR東日本グループは、この駅を中心に100年先の豊かな暮らしづくりに向けた実験の場として位置付けた「新しいまちづくり」構想を掲げている。また、高輪ゲートウェイ駅の特設会場で開催されている、スマート化された未来の街や社会を体感できるイベント「Takanawa Gateway Fest(高輪ゲートウェイフェスト)」にはNECも参画。このイベントの狙いや、高輪ゲートウェイ駅の位置付けなどについて両社のキーパーソンに話を聞いた。

半世紀ぶりの新駅は、未来につながる「実験的な駅」

 高輪ゲートウェイ駅に使われている「ゲートウェイ(Gateway)」には、「出入口・玄関」のほかに、複数のネットワークをつなぐ「接続点」という意味がある。江戸時代には、高輪大木戸として東海道から江戸府内への入口を担い、明治時代になると、文明開化の象徴である鉄道が初めて走った場所である。そういった意味で歴史的にも、さまざまなヒト、モノ、コトが行き交ってきた場所での新駅開業は、今の時代にどんな効果をもたらすものなのか。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)品川・大規模開発部の菅原 尚規氏は次のように語る。

 「羽田空港からのアクセスがよく、利用者の利便性向上が図れること。また、将来的に開業が予定されているとされるリニア中央新幹線の品川駅にも近いため、公共交通の新しい要衝としての期待があります。また、JR東日本グループはこれまで、鉄道インフラなどを起点としたサービスによるビジネスモデルを構築してきましたが、その新たな方向性として“ヒトの生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供”を掲げています。2024年に高輪ゲートウェイ駅に完成予定の新しい街は、住む人、働く人、訪れる人、すべての人にとって快適で魅力的な街にしたいと考えており、その象徴として高輪ゲートウェイ駅を位置付けました」

高輪ゲートウェイ駅(写真提供 JR東日本)

 「実験的な駅」でもあるという。例えば、著名建築家の隈 研吾氏が手がけた駅舎は、屋根のモチーフに折り紙を起用したり、梁に東北の木材を多用したりするなど、「和」の要素を取り入れたこれまでにないデザインとなっている。また、この「和」を感じさせる屋根は単なるデザインモチーフにとどまらない。屋根が光を取り込む際、障子を想起させる白い膜の部分が熱を反射するなど、照明、エアコンの消費電力の削減に通じる機能も備える。この駅は太陽光発電、小型風力発電の設置なども含め、環境保全技術を採用する「エコステ(エコステーション)」として、さまざまな仕掛けが施されているのだ。

特徴的な折り紙モチーフの屋根(写真提供 JR東日本)

 「高輪ゲートウェイ駅ではAIを活用した案内ロボットによる施設/イベント案内や、自律移動型ロボットによる警備や掃除を実験的に行っています。また、誰でも利用しやすいようにICカードのタッチ部分の形状を工夫し、かつQRに対応した最新の自動改札機も実証実験として導入しております。ほかにも無人AI決済店舗や透過性のあるサイネージによる情報提供など、さまざまな“やってみよう”を盛り込むことで、利用者が驚くような駅になればと考えています」と菅原氏は説明する。

最新の改札機も導入されている駅改札(写真提供 JR東日本)

未来の暮らしを疑似体験できるパビリオンを開催

 またJR東日本は、高輪ゲートウェイ駅の特設会場にてイベントを7月14日から9月6日にて開催としている。それが、「Takanawa Gateway Fest」だ。

 高輪ゲートウェイ駅の特設会場・約30000㎡を3つのエリアに分け、約2か月間の期間限定イベントとして開催。先進的な技術・サービスを体験できるパビリオンや、最新のデジタルアートミュージアム、日本初上陸の野外インスタレーションなど、来場者がさまざまな驚きを感じながら楽しめる空間となっている。

 その中で、JR東日本が描く新しい街のイメージを提案するパビリオンが「A DAY ~ちょっとミライのつながるセカイ~」。「ある1日」というタイトルが示す通り、朝、駅で電車に乗って出かけ、仕事やショッピング、観光などを終えて、夜、帰るまでの「未来の1日」がテーマとなっている。そして、この未来の1日に欠かせないテクノロジーが「顔認証」だ。このパビリオンの概要について、JR東日本 MaaS・Suica推進本部の深津 智威氏は次のように話す。

 「紙の切符に始まり、磁気券を経て、SuicaなどのICカードへと進化してきた改札技術について、未来の「より簡単・スムーズ」な移動が可能になる時代は、「ご利用場面に合わせて、多様な認証方式が用いられる」世界であると考えました。そんな時代に相応しい認証方式を想像し、選択肢の1つに浮上したのが顔認証です。現在は、Suicaなどの交通系ICカードやモバイル端末を自動改札機にタッチすることで改札を通過できますが、顔認証を活用した方式なら、ICカード自体を持たず、タッチ不要でご利用頂けるようになります。赤ちゃんを抱えたお母さんも、車いすの人もお年寄りも、荷物をたくさん抱えた外国人をはじめとした旅行者も、タッチレスで、より快適・便利に鉄道をご利用頂けるのでは、と思います。

 顔認証はチケットを認証する為の手段に留まらず、例えば目的地に至るまでの、MaaSとの連携や他のサービスとの連携も可能です。顔認証を起点に、様々なサービス同士を繋ぎ、個々のお客様にフォーカスしたサービス提供が可能になるような、そんな未来が訪れるかもしれません。このように、可能性を秘めた顔認証の仕組みを活用したタッチレスサービスを、パビリオンで実際に体験できるようにしました」

Suicaに関連するさまざまなサービスを顔認証でつなぐ、未来の「ある1日」

 パビリオンでの体験は、自分の顔情報を登録するところから始まる。未来の改札を模した顔認証によるタッチレスゲートを通過した後は、顔認証だけでさまざまなSuicaに関連するサービスを受けられるシーンを疑似体験できる仕組みだ。

 例えば、タッチレスゲートの先には電車のホームがあり、顔認証でスムーズに改札を通過する体験ができる。また、複数の交通手段をICTを用いて結び付けることで、人々の移動が「より簡単・スムーズ」になるMaaS(Mobility as a Service)との連携を疑似体験できるゾーンなどもあるが、そこでも特別な入力は必要なく、顔認証だけで予約手続きが完了できる。ほかにも、手入力やカードのタッチなどは一切行わず、未来の社会で1日を過ごす様子を体感できるようになっているという。

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顔認証情報を使って様々な体験ができる
エントランスで登録した自分の「顔」が、「ゲートを通過する」「モビリティサービスを予約する」「部屋に入る」といったパビリオン内の行動のキーになる

 「今回採用した顔認証技術は、ご利用サービスの認証場面によっては、認証用のカメラを意識せず(非積極的に)認証を行うこともできるので、例えば、旅行先で利用申し込みが済んでいるシェアカー/シェアサイクルの顔認証による開錠や、デジタルサイネージに近づいただけでお客様の行先案内(今回の展示には含まれない)を行うなどの活用も考えられます。これは、自分で意識してタッチする必要があるICカードなどの方式には無いメリットといえるでしょう」と深津氏は言う。

より簡単・スムーズに、さまざまなサービスがつながる未来の社会を目指して

 JR東日本が描く未来の1日を具現化するため、今回のパビリオンのパートナーに選んだのがNECだ。

 NECは、生体認証を用いた共通のIDで、複数の場所やサービスを一貫した体験を提供する「NEC I:Delight」というコンセプトを提唱している。これは、高い信頼性を確保しながら、旅行や通勤、買い物といったさまざまな暮らしのシーンをシームレスにつなぎ、快適でスマートな未来の実現を目指すというものだ。

 それを支えるコアテクノロジーの1つが顔認証である。NECの顔認証技術は、米国国立標準技術研究所(NIST)による性能評価で5回の第1位を獲得しており(※1)世界トップクラスの性能を有している点が特長といえるだろう。また、これまでは困難だった、マスクやサングラスなどを装着した人の認証についても、本人が事前に登録した画像データと照合し、本人かどうかを高精度で識別できるような技術の研究開発が進められているという。

 「パートナーに選んだ理由は、そうした技術の優位性はもちろんのこと、周辺テクノロジーの知見のほか、ユーザサイドに立った豊かな提案力や、組織を動かして粘り強く対応いただける柔軟性も評価しました」と深津氏は述べる。というのも、「未来の社会を描く」という今回のパビリオンのテーマには正解がないため、顧客の利用場面を想像しながら、最適な技術や仕組みを考える必要があったからだ。JR東日本における顔認証の体験場面をイメージし、システムの在り方の検討や、セキュリティ面では撮影したデータをどのように安全に保管するかなど、さまざまな点を考慮しながら、一緒に具体化できそうだと感じた点が大きなポイントになったという。

 またNECにとっても、今回の取り組みは大きな意義を持つものだ。「顔認証に関しては、これまでもいくつかの企業、地域と実証実験を行ってきました。展示会にも数多く参加していますが、体験者の属性はどうしてもビジネスパーソンに偏りがちです。一方、今回は駅前で開催されるイベントであり、お子様からお年寄りまで、世代・性別を問わず多くの一般の方の感想に触れることができます。将来、技術の実用範囲を広げていく上で、非常に大きな意味を持つ取り組みだと思います。駅や街を訪れた方々に、より簡単・スムーズに、さまざまなサービスがつながる体験を届けられるよう、JR東日本様とチャレンジを続けていきたいですね」とNECの西 高宏は意欲的に語る。

 また、約2か月間行われるイベントということもポイントだ。一定期間、継続して運用していくことで、社会インフラとしての運用を想定したデータや知見を得られるからだ。「なお、パビリオンで稼働するシステムの開発は、日々、交通関係のお客様をサポートしており、交通業界における顔認証案件も経験しているトランスポートシステム本部が担当しています。そのため、豊富な業務ノウハウと経験に基づいた、実用的な提案ができていると自負しています」とNECの前野 有美は付け加える。

※1 米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証技術の性能評価で5回目の第1位を獲得。https://jpn.nec.com/press/201910/20191003_01.html
NISTによる評価結果は米国政府による特定のシステム、製品、サービス、企業を推奨するものではありません。

来場者のワクワクの先に、「未来の新しい街」がある

 両社は、「A DAY ~ちょっとミライのつながるセカイ~」で得た成果を活かし、その先の取り組みにつなげていく狙いだ。

 「ただ前提として、当社のSuicaの次の改札技術に顔認証を採用することが決まったわけではありません。将来の可能性の1つとして顔認証技術が、一般の来場者にどう受け入れられるのか、どんな課題がありそうか、といったことをしっかり確認したいですね。本人認証の精度やユーザビリティーも引き続き確かめつつ、どのようにすれば未来の社会にとって本当に有益な仕組みが実現できるかどうかを、NECと共に検討していきたいと考えています」(深津氏)

 2024年に完成予定の新しい街は、今回のパビリオンの跡地に建設される予定だ。その意味では、正しく文字通り、未来の礎になる取り組みといえるだろう。このパビリオンで検証された技術が、やがて実際の暮らしを支えていく。住む人や訪れる人がワクワクするような未来をつくるため、JR東日本とNECのチャレンジはスタートしたばかりだ。

高輪ゲートウェイ駅とTakanawa Gateway Fest会場(写真提供 JR東日本)

インタビュー:
 東日本旅客鉄道株式会社 総合企画本部 品川・大規模開発部
 品川イノベーショングループ 菅原 尚規氏

 東日本旅客鉄道株式会社 MaaS・Suica推進本部 Suica共通基盤部門
 次世代ICプロジェクト 深津 智威氏

 NEC 交通・物流ソリューション事業部 第六インテグレーション部
 シニアエキスパート 西 高宏

 NEC 交通・物流ソリューション事業部 第六インテグレーション部
 主任 前野 有美

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