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2017年04月13日

ほぼ日 CFO・篠田真貴子氏が辿り着いた「イノベーションのために本当に必要なもの」

 コピーライターの糸井重里氏が代表取締役を務める株式会社ほぼ日(以下、ほぼ日)が3月16日、東京証券取引所のジャスダック市場に上場したが、初日は大量の買い注文が集まり、売買が成立しないほどの人気だった。株式公開には管理部門の充実が欠かせないが、それを支えたのが同社取締役 CFO管理部長の篠田真貴子氏だ。華麗なキャリアを誇る篠田氏はほぼ日の何を変え、何を学んだのか。そして、その行動の背景にあるものとは何なのか。

篠田 真貴子(しのだ まきこ)氏
株式会社 ほぼ日
取締役 CFO管理部長

ほぼ日流イノベーションとは?

──最初に、これまでの経歴について教えていただけますか。

篠田氏:
 1991年に社会人になり、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入りました。長銀は98年に破綻、国有化されるわけですが、当時は人気企業でした。96年に退社してアメリカに留学したのち、98年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入り、それから製薬会社のノバルティスファーマに転職。その後、食品メーカーのネスレを経て、2008年からほぼ日で働いています。ここが5社目です。

──今、多くの企業がイノベーションを起こそうとしていますが、篠田さまから見てイノベーションには何が必要だとお考えですか。

篠田氏:
 私が思うイノベーションとは、「既成概念を打ち破る発想」です。ただ、発想だけではビジネスにならないので、成果も上げないとイノベーションとは言えません。

──ほぼ日ではイノベーションを意識されていますか。

篠田氏:
 しますね。既成概念を打ち破るとか壊すという言葉で考えているわけではありませんが、この会社は小さいながらも他にはない価値をお客さまに感じていただいています。だからこそ売り上げがあり、読者がついています。

 そういうものを生み出す基が、私が経験してきた企業とはかなり違いますから、自分がこれまで見てきたやり方をそのまま持ってきても合わないのです。この会社の良さを生かしながら、管理部門の在り方を考えるというのが日々の挑戦です。

ほぼ日の良さを活かして管理部門改革を目指す

──ほぼ日の管理部門改革で、難しかったことを教えてください。

篠田:
 難しかったことは2つありますね。1つは、世界観の違う人たちに「より良い選択肢」を理解してもらうことです。入社したときの社員は40人くらいで、社長の糸井はフリーランスとほぼ日の経験のみで、会社組織に参加したり運営するという経験がありませんでした。だからこそ当社の素晴らしい個性も生まれたのですが、それと同時に、こんなに組織としてのインフラが脆弱なのに、よくこんなに人が集まって、ちゃんと仕事ができているな、と思いました。

 私は元々ほぼ日のファンだったので、組織としての仕組みをちょっと整えるだけで、みんなが楽になるんじゃないかと感じました。たとえば、以前は、仕事を依頼した人への支払いや請求書のことまで担当者が心配しなければなりませんでした。そこで、「そういう仕事は管理部門で引き取って、担当の人には相手との信頼関係づくりや、次のより良い仕事に向かってもらう方が読者としてもいいコンテンツが読める」と考えましたが、その発想自体がない同僚たちの理解を得る、というのは過去にない経験でした。

 もう1つは、ほぼ日の自由な発想を活かしながらも、会社として企画を把握することです。ほぼ日はフラットな組織運営をしているため、企画は1人1人が自由に発案してある程度まで進められます。そのため社内で進められている企画の全部を分かっている人がいません。それ自体は当社のアイデアの源泉ですからいいのですが、それを前提に企画を把握する仕組みをどうするかというと、前例はありませんし、そもそも全部把握する必要があるのか、というところから考え、この会社に合わせて発明するしかありませんでした。

──社内の仕組みを整備する時、外から来た篠田さんは、耳を傾けてもらえないこともあったのでしょうか。

篠田氏:
 結果的にスムーズに進んだところが多かったと思います。理由の1つは外資系出身でガツガツやると思っていたらそうでもなくてホッとされたということ。もう1つは社内が混乱しているという実感がみんなにあって、「これで楽になる」という期待の方が抵抗を上回ったことがあります。糸井をはじめみんな心配しながら見てはいても大きな抵抗はありませんでした。

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