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地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

岐阜発 聖地巡礼だけじゃない、消費呼ぶインバウンド戦略

2016年11月07日

風情を感じさせる高山市の「古い町並」。海外からの観光客も多い

 江戸時代の城下町や商家の風情が残る古い町並みをはじめとする岐阜県高山市を訪れる外国人は、最近15年で約10倍に増えている。官民が連携して取り組んだインバウンド(訪日外国人客)向けのマーケティング戦略が奏功したためだ。観光地・飛騨高山が次に挑む課題は、集まった外国人観光客にどうお金を使ってもらうかだ。そのためには、物品を購入した際にかかる消費税を免税できる「免税店」を地元の商店街にも広げていかなければならない。

人の流れ変える「2次元通り」

 この秋、若者たちの人気を集めたアニメ映画「君の名は。」と「聲の形」(こえのかたち)は、いずれも物語の舞台が岐阜県で、「聖地巡礼」と呼ばれる観光客の姿も目立つ。飛騨と美濃が合併し、岐阜県がほぼ今の姿となって140年という節目を祝うイベントが、高山市の商店街でも開かれ、「君の名は。」と「聲の形」のパネル展に人だかりができた。

 このパネル展を企画したのは、高山本町三丁目商店街振興組合の理事長で、ドラッグストアの中田中央薬品を経営する中田智昭さんだ。高山市の観光スポットである古い町並みを目当てにした観光客は、高山本町三丁目商店街の路地を素通りしてしまう。中田さんは「2次元(アニメなどのサブカルチャーを指すネットスラング)を武器に、観光客の流れを本町三丁目商店街に呼び込みたい」と意気込む。

免税カウンターの設置に乗り出した高山本町三丁目商店街振興組合の中田理事長

 中田さんは、全国の商店街に先駆けて、商店街単独で免税カウンターを設置したことでも知られる。観光立国を重要政策に掲げる安倍政権は、免税店制度の拡充に力を入れており、商店街やショッピングセンターなどの特定商業施設内で販売する物品に対する免税手続きを、免税手続きカウンターを設置する事業者に委託することができるようになった。

 また、免税の対象となる一般物品の最低購入金額が「1万円超」から「5000円以上」に引き下げられたのに合わせ、消耗品の最低購入金額も「5000円超」から「5000円以上」に引き下げられた。免税手続きカウンターのある中田中央薬品に行けば、手続きを委託している店で買った商品も合わせて、手続きすることができるわけだ。

 中田さんは言う。「手続きが面倒だから、うちがたいへんになるといって(委託を)遠慮していた店もあった。最初は4店舗で始めたが、面倒なことはひとつもないと説明すると、3か月後には一気に7店舗に増えた」。

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