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2020年09月28日

NEC Smart Connectivity CX関連ソリューションWebinar
第1回街編:「昨日までとは異なる風景:意識・意思を持つ街」

withコロナで、DXはまちづくりにどう関わるか?

 新型コロナ感染症が蔓延する中、まちの風景や人々の活動に大きな変化が起きている。リアルの動きが抑えられる一方で、逆にリアルの価値は見直され、高まってきているようにも見える。デジタル化すればいい、という一面的な思い込みではなく、デジタルとリアルの融合という新しい視点が重要になるという。東急株式会社で長年まちづくりに携わってきている山口 堪太郎氏と、NECの立場からまちづくりを支援してきた松田 尚久が、コロナ後のまちと人ついて、熱く語りあった。

デジタルが、リアルの世界を凌駕しはじめている。

NEC
デジタルサービス・ソリューション事業部
事業部長代理
松田 尚久

 withコロナで、変化が顕著なのが、ショッピング、移動、ワークスタイル、イベントの4分野である。店舗で購入するのがあたりまえだったショッピングは、オンラインへ移行し、お金に触れたくない、という理由からキャッシュレスも加速している。また、リモートワークする人が急増しており、移動する人の数は減った。イベントも、開催が見合わされ、オンラインイベントへと変わってきている。

 「私自身も、毎年、夏フェスに行って、楽しんでいたのに、今年は中止になってしまった。一方、オンラインイベントは、人数比で2.3倍にも増えている」と語るのは、NECの松田尚久。

 ワークスタイルも、みんなが集まって行う会議から、テレカンに代わった。いまでは、50%を超える人がテレワークを日常的に行っている状況だという。

DX概念図
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 社会に大きな変化が起きている。今までは、リアルの中にデジタルが点在していた(上記説明図の左側)。つまり社会の一部がデジタル化している状態だった。ところが、デジタルが急速に加速した現在、むしろデジタルの方が常態化して、リアルがその中に点在する社会に変わっている(説明図の右側)。

 「このように社会全体がデジタル化する中で、NECは、リアルとデジタルをシームレスに融合させて DX を加速する企業だといえます」と松田は説明する。

東急は、スペイン風邪ベンチャーからはじまった?

 東急の前身である田園都市株式会社は、いまから約100年前(1918年)に創業した会社。当時、スペイン風邪が大流行しており、新型コロナが蔓延している今と、同じような状況だった。その後、1923年には関東大震災が起こる。そこで、田園調布に代表される「地盤が安定していて、空気がきれいな住宅地」を提供したのが事業のスタートだった。

 「その意味で、東急は、スペイン風邪ベンチャーだった、といえます」と、山口氏は微笑んだ。

 その後も多摩田園都市や渋谷を地域の方々と作り、郊外と都心を電車で結ぶ鉄道事業を展開。さらに、多様なリテールや生活サービス事業を重ねて、複合的にまちづくりを行ってきた。いわば日本版 TOD(公共交通指向型都市開発) を推進している企業グループなのだ。

東急株式会社
経営企画室経営政策グループ課長
山口 堪太郎氏

 東急は、現在と将来の居住者、来訪者の方に、どういう価値やサービスを提供するか、ということから逆算してまちを作っている。多様な生活者にとって「住みたい」「住み続けたい」「出かけたい」「商売したい」、サステナブルなまちを志向している。まちに投資をして、その結果、まちの価値が上がると、そこから得られた収益で、またさらにまちに投資していく。これは不偏の我々の仕事だと考えている。しかし、リアルの場や移動を起点にしたビジネスが中心で、デジタルUIを起点としたビジネスへの転換はこれからだ。

ニューノーマル時代の新しい街づくり。

 「5年ほど前から、渋谷の将来などを考えて行く時に投げかけていた言葉に"2040年の日本の都市って?"というものがあります。その代表例として挙げていたのが、(1)自宅で何でも買える、(2)どこでも働ける、(3)ライフ・ワークの境が極薄、でした。ところが、中長期でイメージしていた都市の変容が、この半年の間に一気に加速しました」と山口氏は驚きを隠さない。

 これらに対応した事業は、コロナ禍前から始めている。たとえばNewWorkというリモートワークのできるサテライトオフィスを都心・郊外・地方に多店舗展開。「自宅でテレワークするのが困難」という人のニーズに郊外店が応えている。また、東急ベルという事業では、コロナ禍下、東急ストアの生鮮品を自宅まで届けたり、駅のロッカーで受け取れたりすることが好評だという。しかし、渋谷でのクリエイティブコンテンツ産業の集積、オープンイノベーションの促進といった産業を興す施策には、リアルの発信・体感・交流・創発が欠かせないという。

"City as a Service"構想(現在から未来へ)
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 そして、「東急グループの理念に、『一人一人が自分らしく生き、幸せを実感できるよう』とある。これこそリアルとデジタルの掛け合わせの中で真に実現されるものではないか。昨年9月の長期経営構想の中で、”City as a Service”構想を掲げた。世界中で都市×デジタルの取り組みが行われているが、日本では、一人一人が自分らしく暮らせるために、産官学民が連携しあったまちづくりの形が必要ではないか」と山口氏は意気込む。

リアルとデジタルをどう融合していくか、が大きな課題。

ファシリテータ
NEC Future Creation Hub
センター長
野口 圭

野口:
 ここからは、ディスカッションしていきたいと思います。リアルにもさまざまな価値があり、デジタルにもさまざまな手段がある。何をどうやって融合するのか? 大切にしている考え方がありましたら、教えていただけますか。

山口氏:
 これまでリアルを中心に提供してきたサービスは、一人ひとりのことを考えながらも、公共交通や住宅地のように、より多くの人々が便益を受けられるようにマスを提供してきました。しかし、都市生活者の暮らし方・働き方などの志向が多様化する中、ある程度まとめて対応する、ということが難しくなってきています。デジタルで個々の求めをきめ細かく把握し、最適なサービスを提供していかなければならない。そういった世界が来ていると思います。

 ただ、旅やライブエンタテイメントの例が分かりやすいのですが、リアルの価値がいま非常に上がっているのを感じます。リモートで見ている人が「やっぱりリアルで見たい」と思えるような「贅沢なリアル」と「多くの人が見られるリモート」を組み合わせていくことでビジネスとしても成立しえないかなと。ことわざ風にいうと「百リモートは、一リアルにしかず」といえるくらいのリアルを作らなければならないと思います。

リアルとデジタルの最適融合への収れん
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松田:
 リアルとリモートとの融合ということについては、私たちも考えていることがあります。コロナ禍で急激にデジタル化が進んだというのがいまの状態です。このままデジタル化がさらに進むのかというと、山口さんがおっしゃったように、上質なリアルも求められるようになるでしょう。デジタルとリアルが融合していき、収斂する方向が最適解になると思っています。だから単純にデジタルだけでもなく、リアルだけでもなく、デジタルとリアルがいい感じに収斂していくのではないか、というのが私たちの仮説です。

ユーザーの不安に応える1to1は実現できるのか?

野口:
 1to1マーケティングについては、どのようにお考えでしょうか。

山口氏:
 悩ましいですね。誰かに自分の生活全部を把握されている状態、というのは怖い世界だと思っています。基本的な繋がりがあって、本当にその人が欲しい、と思ったときに、サッと提供できるという関係が大事なのだと思います。

松田:
 1to1にも可能性があって、たとえばオンラインのイベントで、一人ひとりにパーソナライズされたコンテンツを届けるサービスができないか、考えているところです。まだかなり難しいのですが、リアルの世界で仕事をされている東急さんに対して、パーソナライズされた形でコンテンツを提供できるようになったら、面白いのではないかと思っています。

野口:
 いまの話は、魅力的ですね。ただ、山口さんがおっしゃるように、課題もあると思います。

山口氏:
 日本だと情報の預かり方自体をパーソナルにやらないといけないと思います。人によって、「全部預けるからとにかくスムーズにサービスを受けたい」という人と、「あまり情報を預けたくないから、これくらいのサービスでいいよ」という人がいてよいので、そのグラデーションに応じた選択肢を提供しなければならないと思います。

NECのICTを活用した1on1マーケティングの実現
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松田:
 私たちも同じような考えをもっています。仕組みとして、パーソナライズするにあたっては、IDが需要になってくるのですが、どの情報をどれだけ開示するかという許諾範囲は人によって違います。そのレベルの濃淡をうまく選択できるシステムを作り上げていくのが大切だと思っています。これが実現できるとリアルとデジタルとがうまくバランスとれて、体験はシームレスになってくと思っています。もちろんセキュリティの強化はつきものです。

デジタル化、DX化で失敗しない方法とは?

野口:
 デジタル化しよう、というときにうまくいかないケースがあります。ここを勘違いしているのではないか、とか、こういうところからはじめたらDXは加速する、というようなヒントはありますか?

山口氏:
 デジタルが主役なのではなくて、お客様に対する価値提供をトランスフォーメーションすることが主役なのではないかと感じます。”MaaS”でいうと、”as a Service”の方が、実は大事だというのと同じで、デジタル化が目的になってしまうと、お客様にとって、有益なサービスにはならないと思います。

松田:
 「デジタルをやったら儲かる」と誤解される方がいますが、これは誤りですね。リアルを補完する上でデジタルをやるというのが正解で、デジタルは、あくまで本業で儲けるためのツールなのです。東急さんの方向性は、非常に正しいと思います。

野口:
 いろいろな話をうかがいました。冒頭にはwithコロナの取り組みについて。デジタルはツールにすぎないので、それをどういう目的のために合わせていくか、というお話も印象的でした。東急さんは、住んでいる方たちとずっと向き合ってきた企業だと思います。本当の意味でお客様に対して向き合うために、デジタルを駆使していくのだ、という姿勢を強く感じました。

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