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2021年04月27日

NEC Smart Connectivity Day レポート
第2回:ローカル5Gで進化するネットワークコネクティビティ

 ―2020年12月、”本命”とされるサブ6(4.7GHz帯)の免許申請受付がスタートし、いよいよローカル5Gの本格的な普及がはじまろうとしている。DX時代にあって、ローカル5Gの果たす役割は何なのか。シリーズ第2回は、ローカル5Gの概要とともに、それがもたらすネットワークコネクティビティの進化について考察したセッションの内容をレポートする。

5G・ローカル5G時代へのこれまでの道のり

 「今日も、こうやってみなさんとリモートでお会いし、オンラインの価値を感じている。こういったことが常態化して、二度と元には戻らない、それがまさにニューノーマルの時代だ」。NECデジタルネットワーク事業部上席事業主幹でエバンジェリストの藤本幸一郎は、こう語りかけ、セッションをスタートさせた。

NECデジタルネットワーク事業部
上席事業主幹 エバンジェリスト
藤本 幸一郎

 5G、IoT、AIの普及で、ニューノーマルへの変化はさらに加速していく。ではなぜ、そうした流れが起こるのだろうか。それは、「20数年前のインターネットの登場によって、自由につながる世界が誕生したことが大きい」と、藤本は振り返る。NECは、1977年にC&Cというコンセプトを打ち出し、コンピューターとコミュニケーションが融合したデジタル化によって、新しい世の中をつくろうとしてきた。インターネットによって実際にそれが可能となり、世の中が大きくその方向に舵を切ったことが、デジタルが常態化するニューノーマルの時代へとつながっているのではないか。そう藤本は分析する。

 1985年に施行された電気通信事業法によって通信の自由化が進められ、民間の力を活用したオープンな技術開発が進展したように、通信政策とイノベーションは密接に関係している。無線通信の分野は、携帯電話という巨額の投資をともなう事業を立ち上げ、成長させるために必要であったという側面はあるものの、これまで一部の企業のみで展開されてきた。すでに携帯電話が十分に普及した現在、オープン化をこの分野にも当てはめていくべき、という考えが広がっている。無線通信のリソースを民間にも開放し、オープンな開発スタイルを導入、さまざまな投資を呼び込んで新しいパラダイムをつくっていく。これが新たなイノベーションを起こす。それに向けて、「国全体として前に向かっている、そういった時代」と、現在の状況を藤本は捉えている。

 携帯電話は新しいもののように思えるが、誕生からすでに40年近い歴史があり、インターネットが国内でサービスされるよりも前から存在している。このころ前提としていたのは、「人と人」が通信するということで、ブロードバンドを志向したインターネットとは異なる環境であった。それが4Gが普及した今では、クラウドを介してインターネットのコンテンツを視聴したり、インターネットのサービスを利用してコミュニケーションを行うなど、無線とインターネットが融合するようになっている。インターネットには、これら以外にも多種多様なアプリケーションが存在しており、これを5Gの力で無線の世界にのせていく。「AI・IoTを活用して『もの・こと』の時代へと向かっていくのが、これからの5G・ローカル5Gの時代」というのが、藤本の見立てである。

無線通信のインターネット化と5G
無線通信のインターネット化と5G
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ローカル5Gが求められる背景

 これからの時代が『もの・こと』の時代であるならば、人と人とのコミュニケーションを前提としたこれまでの通信技術だけで、本当に成り立つのだろうか、と藤本は疑問を投げかける。そして、それを解決するものとして、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gの3つの特長を示した。超高速は、モバイルブロードバンドという形でこれまでも注力してきた領域であるが、ロボットなどのリアルタイム制御や遠隔医療、あるいは膨大な数のIoTセンサー類の運用などに際して、その効率性・実現性を高めるためには、超低遅延・多数同時接続という新しいネットワーク要件を備えていかなくてはならない。ところが、この3つの特長は、「3すくみというか、互いに相容れない技術要素を同時に達成しようとしているのではないか、という議論がある」と、藤本は指摘する。1本の道路に多数のクルマが流入すると渋滞するように、多数同時接続を可能にするとネットワークに遅延が発生し、超高速性が担保できないということが起こる。このように、3つの特長は互いにトレードオフの関係にあると言えるのだ。

5Gが定義する3つの性能要件
5Gが定義する3つの性能要件
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 したがって5Gでは、この3つの特長をそれぞれ別のシナリオに分けて実現しようとしている。携帯電話などにおいては、より多彩でリッチなコンテンツを利用するため、超高速にフォーカス。一方で、低遅延・多数同時接続では携帯電話以外のデバイスが多く接続されるため、携帯電話と同じネットワークである必要は無い。こうした考えに基づいて、異なる電波帯域やリソースを使用する制度として定められたのが、わが国におけるローカル5Gである。DXを加速する2つの5Gとして、キャリア5Gとローカル5Gが国の制度として設定され、それぞれに異なる電波周波数を割り当て、用途や使い方に合わせて最適な制度設計がなされている。また、税制の面でも優遇措置がとられるなど、普及に向けて強力な政策的支援が行われている状況とのことである。

ローカル5Gの概要

 では、キャリア5Gとローカル5Gの違いはどこにあるのだろうか。キャリア5Gはコンシューマー向けのサービスであり、全国どこに行ってもSIMを挿せば利用できる。自分でネットワークを構築する必要は無く、すべての保守運用はキャリアが行ってくれるというものである。

 一方、ローカル5Gの使い方はこれとは大きく異なる。ローカル5Gは地域・産業向けのサービスで、利用者が自分専用の閉域ネットワークを自ら構築する。必要とする速度を自由に得るなど、柔軟に通信リソースを割り当てることができるほか、専用であるため他の通信の影響を受けず、利用状況・負荷状況などネットワークの見える化も可能。また、自社のポリシーに即したセキュリティ設定といった、個別ニーズに合わせたネットワーク構成も行える。いわば、LANの無線版のような使い方ができることが特長である。自営の5G通信ということで、自治体における地方創生であるとか、民間企業のビジネス革新・デジタルトランスフォーメーションなどへの活用が想定されており、地域や産業に固有の課題を解決するとともに、新しいビジネスを生み出す原動力となることが期待されている。

キャリア5Gとローカル5Gの違い
キャリア5Gとローカル5Gの違い
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 ローカル5Gはその目的上、企業や自治体などに対して、建物や土地といった単位に限定して免許を交付するため、利用する場所としては、自社の工場やビルなどに限定される。利用者ごとに異なった複雑な環境下での利用が想定されるため、実際の設置・運用に関するノウハウを蓄積すべく、NECはローカル5G 4.7GHz帯/SA(Stand Alone)構成の免許を全国で初めて取得。本社ビル「NEC Future Creation Hub」と玉川事業場「ローカル5Gラボ」において、ローカル5Gの実運用を進めているところである。

 免許が不要なWi-Fiと比較して、ローカル5Gは免許取得や基地局の設置・運用管理などの手間はかかるものの、非常に安定した、セキュリティの高い超高速ネットワークであり、エリアもより広くとることが可能である。ミッションクリティカルな通信も含め、「企業のニーズに応え、ユーザーが主役となって使える技術」がローカル5Gであり、「インターネットやデジタル化が今よりもさらに発展した社会の創造に資するもの」と、その社会的な意義を、藤本はあらためて強調した。

ローカル5Gが加速するネットワークコネクティビティの進化

 さまざまなネットワーク技術が利用されている中で、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gの特長と、柔軟な構成が可能な自営網のメリットをあわせ持つローカル5Gは、これからのネットワークコネクティビティにおける中心的な役割を担うと目されている。地域や企業の抱える課題解決に求められる高い性能を有しつつ、それぞれに異なるニーズにフィットする柔軟性・運用性を、ローカル5Gは同時に備えているからである。

ローカル5Gは、これからのネットワークの新たな選択肢
ローカル5Gは、これからのネットワークの新たな選択肢
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 その活用領域として、NECでは、製造・建設・流通・交通、さらには都市における公共サービス分野などを想定し、どのような価値創造が可能か、検証・実証をいち早くスタートさせた。また地域課題の解決という面では、総務省における「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に参画し、自治体と一緒に考えながら、ローカル5Gを活用した地域課題解決策の発見・策定に取り組んでいるところである。

 このような価値創造を支援するために、NECは「NEC Smart Connectivity」を提供している。これは、ネットワーク&データ活用において、企画段階から検証~設計・導入~運用・監視~保守にいたる一連のサイクルをサービスとして提供するもので、コンサルティング/インテグレーション/マネージドサービスの3つの要素をワンストップ化した統合ソリューション群である。LAN/WAN、Wi-Fi、LPWA、LTEなどの従来ラインナップに5G・ローカル5Gが加わることで、ネットワーク性能や特性のバリエーションがさらに拡大。ニーズに合致するネットワークを組み合わせ、NECが得意とする技術領域であるSDN*を用いて最適に管理・運用していくことで、ユーザーの価値創造プロセスを確実に前へと進めることが可能となる。

NEC Smart Connectivityのサービス構成
NEC Smart Connectivityのサービス構成
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*SDN:Software Defined Network ソフトウェアでネットワークを動的に制御することで、アプリケーションに最適なネットワークを仮想的にスライシングして提供する技術

これからのネットワークサービスの要件

 「5G時代は、IoT時代でもある」。藤本はこう語り、多種多様かつ膨大な数のデバイスが、ネットワークに接続されることによって生じる課題にも言及した。ひとつは、ネットワーク機器のライフサイクル全般におけるセキュリティの重要性である。特に、「止めることのできない」インフラなどの重要産業においては、ネットワーク機器の脆弱性や不具合によってサービスが停止するリスクは避けなくてはならない。そのため、調達・生産・運用・廃棄にいたるネットワーク機器のサプライチェーンすべてにおいて、正常性・真正性を担保することが不可欠となる。NECでは、パートナー企業とともに、改ざん検知技術やブロックチェーン技術を組み合わせて、検査情報や運用中のログを監視・管理し、安全な製品で構築・運用されていることをネットワーク管理者が簡単に確認できるようなソリューションを提供している。

 ふたつめは、AIを活用したさまざまな「自動化」の仕組みである。接続されるデバイスの数が増え、要求する通信要件も多岐にわたるに従って、ネットワーク構成も複雑化していく。そのため、人の手によって最適な設計を行うことが徐々に困難になることが予想される。「システム自動設計技術」は、業種・業務ごとの要件から即時にローカル5Gのシステム構成を導出するもので、AIの活用により、要件が曖昧であっても自動設計を可能とするものである。また、「学習型通信分析技術」では、トラフィックからネットワーク品質を解析して、リアルタイムに制御系へフィードバック。専門家が数日かけて分析していた内容をリアルタイムで行い、ネットワーク運用の最適化を図る。NECでは、ローカル5Gの導入・普及を加速するこれら自動化技術の開発に、鋭意取り組んでいるところである。

 このほかにも、映像のビットレートを動的に制御する「適応映像配信技術」、遅延を考慮してロボットの遠隔制御を行う「適応遠隔制御技術」、機器が動き出すまでの応答遅延を予測して自動制御する「適応予測制御技術」、遅延の変動を抑制し、クルマの安全運転を支援する「適応ネットワーク制御技術」など、無線環境が不安定な状態でも、アプリケーション通信を可能な限り安定化するシステムの開発が進んでいる。このように、AIによる高度化は多方面に拡大しており、ミッションクリティカルな領域におけるネットワークの信頼性向上にも、数々の貢献を果たすものとの期待が高まっている。

Beyond 5Gへ。ネットワークコネクティビティの進化は続く

 ローカル5Gは、通信の可能性を今まで以上に広げる大きな技術要素であるものの、これだけで何かが達成できるわけではない。「最終的な目標は、あくまでお客様のビジネスや生活をよくしていくこと。すなわちDXの実現」と、藤本は語る。その目的のために、ネットワークコネクティビティの進化はとまらない。5G・ローカル5Gのさらに先、2030年頃に訪れると言われるBeyond 5Gの世界を、NECはすでに見据えている。そこでは、人間・空間・時間を超えて、デジタルの力で、誰もが人間性を発揮できる、持続可能な社会が目指されると言う。「みなさま自身が主役。そうした社会変革、豊かな社会の創出、そしてSociety 5.0の実現に、われわれも一緒になって努力して参りたい」。藤本は、このようにNECの強いコミットメントを示し、セッションを結んだ。

5G、そしてBeyond 5Gへ
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