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2021年12月17日

多世代“共”育の実践が生み出す、立場も肩書も超えた新たな学びの場
――NEC未来創造会議・共創レポート

 NECが2017年から開始したNEC未来創造プロジェクトは、2020年から東京女子学園 中学校・高等学校(以下、東京女子学園)とともに新たな教育の実践に挑戦している。100年以上の歴史をもつ同校が2020年に新設した「未来創造コース」へ向け、NEC未来創造プロジェクトはこれまで多くの有識者との議論を経て蓄積された知見を活かし、生徒一人ひとりが未来の社会を想像/創造する授業をつくりあげた。今年で2年目を迎えた両者の共創は、いかなる成果を残したのか。去る11月にNEC本社で行われた、最終授業の様子をお届けする。

技術に裏打ちされた生徒たちの未来像

 東京女子学園とNEC未来創造プロジェクトによる共創は、新たな教育の形を提示しつつある。初年度となる昨年は、NECが提供するソリューションやNEC未来創造会議のもつ知見を生徒と共有し社会の変化を考える「未来想像」とワークショップを通じて生徒一人ひとりが自身の望む未来について考える「未来創造」という2種類の授業を全12回にわたって提供。今年は同様のアプローチを踏襲しながらプログラムを洗練し、全6回の授業を実施した。

 去る11月にNEC本社ビルで行われた最終授業では、生徒たちが10組のグループに分かれ、それぞれの考える未来像やその実現に向けて必要な取り組みについてプレゼンテーションを行った。生徒が一人ずつ発表した昨年の授業に対し、今年はグループ形式の発表を行ったことでプレゼンテーションはより豊かなものとなった。

生徒たちは4人一組となって発表を行った

 自作のイラストを紙芝居のように並べることで未来の生活を説明するものもあれば、既存の映像に音声をあてて理想的な価値観を説明するもの、事前に教師の協力をあおぎ収録した音声を使いながら会話劇を披露するもの、グラフなどエビデンスを駆使しながら未来の可能性を提示するもの――10組のグループが行ったプレゼンテーションは、実に多種多様だ。その形式のみならず提示される未来像もそれぞれ大きく異なっており、AIと職人がコラボレーションする世界や誰でもどこでも多様なライブ体験を享受できる世界など、どのプレゼンテーションもその裏側にいる生徒の存在が感じられるものだったといえよう。

 「一人ひとりが将来どんな社会を望んでいるのか考えることで、その未来に向けてやらなきゃいけないことや勉強したいことが見えてくるはずです。単に偏差値のような数値で判断するのではなく、目指したい未来に向かって動けるようになる。今回みなさんの発表のなかにはいろいろな技術が登場していましたが、気になった技術についてもNECのスタッフ含め周りの方々とどんどん議論していただくことで、もっといろいろなことを考えられるようになるかもしれません」

 生徒たちのプレゼンテーションを受けてNECフェローの江村克己がそう語ったように、それぞれの考える未来像が具体的な技術の活用によって支えられていたことは重要だろう。たとえば、とあるグループはNEC未来創造会議が過去の取り組みを通じて考案した、フィルターバブルを突破するサービスアイデア「BIAS Window」を参照しながら、一人ひとりが固定観念に囚われず自身の“かわいい”を追求できる未来を提示した。BIAS Windowそのものはもともと偏見を克服するものとして考案されたが、生徒たちは「かわいい」という概念をより拡張するためのアイデアとしてこの技術を活用してみせたのだ。単に先端的な技術ドリブンで万人が同意するような未来像を考えるわけではなく、個々人の妄想から荒唐無稽な未来を描くのでもなく――どの発表も生徒一人ひとりの感情や関心を起点としながら、それを単なる妄想に留めず実際の技術や実際の社会と接続するためのストーリーを描き出したことは、まさにNEC未来創造会議がこの授業を通じて行った「未来想像」と「未来創造」が成功していることの証左といえるだろう。

授業の休憩時間ではNEC未来創造プロジェクトメンバーと生徒らが交流する様子も見られた

新たなコミュニケーションの学び

 全6回の授業を通じて、生徒はこれまでの授業とは異なる刺激を受けたようだ。生徒のひとりは次のように授業を振り返る。

 「自分の意見をみんなに伝えたとき、みんなが共感してくれると嬉しかったし、自分とは異なる意見が返ってきたときは新たな発見を得られました。最初は同じ課題なのだから大体みんな同じ内容になるのかなと思っていたのですが、ほかの人とはぜんぜん意見が被らなくて。NECさんの施設でさまざまなサービスを体験できたことも、グループワークを通じてみんなと意見を交わせたことも、さまざまな視点を知ることができ学びになりました」

 またべつの生徒は、グループ形式のプレゼンテーションだからこそできたことがあると語る。

 「これまで自分の考えを文章にするだけでは伝えにくいこともあるし、逆に文章だけ聞かされていると疲れてしまうこともありました。でも、今回は絵や音楽、映像をみんな活用していたので、楽しく表現できたし楽しくみんなの意見に耳を傾けられたんです。たとえばひとつのグループはみんなの個性が開いていく様子をポップコーンが弾ける映像に合わせて表現していましたが、映像になっていたことでより印象に残るものになったと思います」

生徒のひとりは、この授業が非常に刺激的なものだったと振り返る

 生徒たちの反応を受け、今回の授業を担当したNEC未来創造プロジェクトメンバーの岡本克彦は「認知特性という言葉もありますが、一人ひとりに適したコミュニケーションの形がありますよね。いろいろな人に合わせてコミュニケーションできるための方法をみんなで学べたともいえるかもしれません」と語る。同じくプロジェクトメンバーの道口美幸も次のように応答する。

 「どのグループの発表も、”ストーリー”を意識してつくられていたことに感動しました。やりたいことをただ『やりたいです』と伝えてもなかなか実現できませんから、どのようにして叶えていくかを考え表現することが重要になると考えます。今回、生徒たちが多世代とのやりとりを通じて、それぞれの目指す未来像を描き、それをどのように実現し、相手にどう表現するのか、その一連の流れを考えられたことは大きな力になると思っています」

 こうした授業のあり方は、NEC未来創造プロジェクトの目指す未来とも共鳴している。同プロジェクトはインターネットの次なるネットワークのあり方として、五感を含めた多様な体験を共有できる「エクスペリエンスネット」というアイデアを提唱しているからだ。プロジェクトメンバーの福田浩一が「昨年の授業を経て今年はいくつもの挑戦を行いました」と振り返るように、昨年の授業を経てさらに同プロジェクトの実践を反映するものになったといえるだろう。

 「今年はコンテンツの内容を固めて横展開できるようなパッケージ性を実現できたことに加え、NEC未来創造会議を経てつくられた『技術カード』や『HiNT for 2050』といったツールをフル活用したことでよりNEC未来創造プロジェクトらしい授業が実現しました。言葉だけでなくイメージで表現する発表形式をとったことは、生徒のみなさんにとって大変だったと思うのですが、結果としてさまざまなコミュニケーションの可能性を感じられるようになったと感じます」

授業を通じて生徒と教員の対話も促進されたのかもしれない

教育から“共”育への広がり

 「どのグループの発表も個性が出ていましたが、それは一つひとつのチームにNECのみなさんが入って生徒たちの意見を引き出してくださったからだと思います。結果として、みんなが上手にお互いの意見を聞けるような姿勢をとれるようになりました。グループ発表になったことで個々人の作業量に偏りが出る不安もあったのですが、一人ひとりに自主性が生まれて協力体制をとれていたことが印象的でした」

 そう言って授業を振り返るのは、東京女子学園の小林智美氏だ。今回の授業は単にNEC未来創造プロジェクトがつくったプログラムを提供するものではなく、授業が進んでいく過程でプロジェクトメンバーと生徒や教員の間で多くのコミュニケーションがとられていたという。授業を通じて変化したのは、生徒だけではないのだろう。教員の宮園洋一氏が「わたし自身、今回の授業を通じて新たなツールを活用するようになりました」と語るように、生徒の変化から触発されるようにして教員の側も新たな挑戦や気付きへと誘われていったのだ。

 「今回のプログラムでは、多世代交流としていろいろな方の意見を取り入れながら授業を進めていけたことが刺激的でした。わたし自身さまざまな方の意見を聞けたのは面白かったですし、オフライン授業を通じ、改めてオンライン授業では伝わらない温度感やテキストに乗ってこない情報を感じられたように思います。教員はいろいろ教えたがってしまうのですが、今年はあえて口を出さないよう気をつけていました。もちろん生徒が不安に陥ったり傷ついたりしすぎないようフォローはしましたが、まずは生徒の変化を待ってみるように務めていました」

最終授業はNEC本社ビルにて行われた

 同校の飯泉恵梨子氏がそう言って授業を振り返ると、同じく教員の難波俊樹氏も「どれだけ手や口を出さずにいられるかというのもひとつの挑戦でしたね」と同調する。他方で小林氏は「生徒たちの変化を見て、普段の授業にももっと改良できる点があるのではと思うようになりました」と語る。

 「生徒たちが音楽や寸劇を使ってコミュニケーションに挑戦していたように、普段の授業のあり方も変えていくことでもっと生徒に伝わりやすくできるのかもしれません。NEC未来創造プロジェクトのみなさんと授業の振り返りや準備を丁寧に進めていけたことも、普段の授業に活かせるように思います。生徒との関係性や学校という場を組み立てていくうえで考えていかなければいけないことがたくさんあるのだなと気づかされました」

 そう小林氏が振り返るように、今回の授業はプログラムに関わる人すべてが刺激を与え合い学びあう場へとつながっていった。昨年から授業に携わるNEC未来創造プロジェクトメンバーの福田裕希も「今回の授業では生徒や教員のみなさんもぼくらもチャレンジがたくさんありました。多くのチャレンジから活力が生まれてみんなが変わっていく環境は、まさにNEC未来創造プロジェクトが提唱する意志共鳴型社会という未来像に近づくものです」と語るように、NEC未来創造プロジェクトメンバーも同じく大きな変化を遂げている。

 オンラインへの移行や新たなデバイスの活用など教育の現場では日々変化が起きているが、重要なのは新たなツールやプログラムそのものではなく、それらを通じて新たな学びの場を生み出すことなのだろう。授業のあり方を変えていくことで生徒や教員といった立場を超えたコミュニケーションを生み出すことは、学びを一方通行から双方向的な動きへと変えていくことでもある。教える/教えられることではなく、共に学ぶこと――東京女子学園とNEC未来創造プロジェクトの共創は、「教育」から「共育」への移行を実践する場へと進化を遂げたのだ。

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