2016年7月13日
NECのイノベーターズたち
世界のリテール・サービスをICTで進化させるチームリーダー
電子マネーやおサイフケータイといった電子決済など、ICTで進化するリテール・サービス。NECは、国内大手のコンビニチェーンのべストプラクティス事例をはじめとする豊富な実績をもとに、アジアや新興国などへ幅広くグローバルにリテールITソリューションを展開。プロダクトチームを率いる小池 雄一が、海外の多彩な事例、NECの実績や強み、今後のリテールITソリューションの展望などを、語ります。
話題のFinTechに、NECはいち早い取り組み
――まず最近のトレンドとして話題の「FinTech」について、リテール業における活用状況を教えてください。
小池:
FinTechとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を融合したワードで、ITによる金融分野に向けた幅広いサービスを表します。その中で、小売業においてもFinTechというキーワードが電子決済サービス等との関連で、2013年頃から注目され始めました。コンビニエンスストアなどで2007年頃から活用されている電子マネーシステムも、そのひとつです。

NECでは10年程前から、コンビニエンスストアを展開するお客さまに、電子マネー決済のソリューションを提供してきました。NECは、FinTechというワードがトレンドとして注目される以前から電子決済サービス分野に取り組み、小売業のお客さまに対する多くの実績を築いてきたのです。
リテール・サービスは、決済の進化とともに発展してきたと言われています。今後も決済領域のFinTechは、リテール・サービスの高度化に大きな役割を果たしていくでしょう。
――次に、リテール業に向けたNECの取り組みを聞かせてください。
小池:
NECは、POSシステムをはじめPC、サーバ、業務用端末、ソフトウェア、店舗を統合するセンターなど、小売業の店舗システムをトータルに支援するリテールICTソリューションを国内のお客さまに提供してきました。そうした実績をもとに、クレジットカードや電子マネーシステムなどのソリューションやシステム提供へと事業を拡大していきました。
現在では、国内の小売業のお客さまだけでなく、ワールドワイドに海外のさまざまな国へ幅広くソリューションを展開しています。
NECはいま、リテール業向けのFinTechとして「決済(Payments)」分野に注力しています。具体的には、小売業に向けたシステムをトータルにワンストップで提供するリテール企業向け電子決済ソリューション、FinTech活用によって消費者の買い物スタイルを革新するリテール・サービス業向け高度ソリューション、そして顔認証決済や社会貢献などを含めたイノベーティブ・サービス向けFinTechソリューションの3つの領域でソリューションを強化・拡充し、お客さまに提供していきます。また、将来的には「仮想通貨(Virtual currencies)」「送金(Remittances)」に対するリテール業様のニーズも出てくると考えています。
――小池さんが、現在担当している業務は何ですか。
小池:
今年3月までは、FinTech関連の業務に長く携わってきました。4月からは国内・海外全ての小売業のお客さまに向けに、当社が提供するリテールITソリューションの企画、開発、デリバリーまでをプロダクトという観点からトータルで担当しています。
私が所属するバリュークリエイション部の役割は、国内外のリテール関連のお客さまに向けたプロダクトを幅広く揃えることです。部の責任者である私の主な業務は、グローバルリテール案件の開拓や取りまとめ、新たなプロダクト開発です。チームリーダーとして部内の人材育成にも力を入れています。
個別のお客さまに向けたプロダクト開発も大切ですが、幅広いお客さまに対応できるOne to manyタイプのプロダクト開発の重要性などを、部員たちにアドバイスしています。
台湾、インドネシア、インドなど、多彩な海外展開
――小池さんが関わった、グローバルでの具体的な事例を聞かせてください。
小池:
リテール企業向け決済ソリューションの領域では、さまざまな海外事例に関わっています。例えば、台湾の大手コンビニチェーンでは非接触のICカードを活用した電子マネーシステムを提供しました。
その当時台湾には電子マネーが数種類あったため、レジカウンターにカードのリーダライタ(読み取り装置)が何台も置かれていました。NECが提供したリーダライタによって統合化を図り、1台で数種類のカード決済を可能にしました。現在は約5,000店で、NECの電子マネーシステムが利用されています。

インドネシアのイオンモールでは、フードコートの約40店舗で利用できる電子マネーシステムを構築しました。このプロジェクトでは、カードからリーダライタ、決済サーバなど、電子マネーシステム全体を一気通貫してサポートしました。現金のやり取リのないスピーディな決済により、顧客満足の向上や販売機会のロス低減などの成果が上がっています。
今後もNECは、イオンモール・インドネシア様の多店舗展開に向けて電子マネーシステムの活用をさらに拡大していきたいと考えています。
インドでは、シネマコンプレックスを展開しているPVRシネマ様に、スマートフォンで映画チケットやドリンクが購入できるおサイフケータイシステムをインド初の商用サービスとして提供しました。この取り組みでは、お客さまのトップがNECの先進技術力と正月を返上して仕事に頑張る姿勢に感銘を受けたという話も聞いています。

インドでは他にも、ICICI銀行様に電子マネーシステムを提供して、電子マネー活用を広く普及させるためのサポートも行いました。こうした電子マネーシステムの海外事例は、日本国内における豊富な実績やノウハウをもとに展開しました。

貧困層の人々が、先進のFinTechを活用
――リテール企業向け以外のソリューションでは、どんな事例がありますか。
小池:
イノベーティブ・サービス向けのソリューションとして、モザンビークの取り組みがあります。
モザンビークのような新興国における農民の多くは、生産性の低い自給自足農業を営み、慢性的な貧困状態にあります。
現金収入が得られないため、投資ができず、低生産性の農業が継続しています。また、与信がなく、農薬・肥料・機械といった資材を購入するための融資を受けることもできません。また無計画な消費によって余裕資金も生まれません。

NECはモザンビークで活動するNBF(日本植物燃料社)に協力し、2013年度からモザンビークにおいてJICA(国際協力機構)やFAO(国連食糧農業機関)に関する電子マネーシステムを使ったパイロットサービスを実施しました。
NECでは、ICカード、タブレット端末、店頭端末アプリ、リーダライタ、モバイルプリンタなどシステム一式を提供し、電子マネーや与信情報提供サービスなどを含む、情報・金融の一体型プラットフォームをクラウド上に構築するサポートを行いました。これにより農民には貯蓄、決済、送金、利用履歴閲覧サービス、特定用途向け貯蓄サービスを、そして企業には与信情報提供、貸付管理、口座間送金サービスを実現したのです。

これまでも、農業技術指導や農業資材の提供、農作物買収等の支援を行ってきましたが、新たに構築した金融・情報プラットフォームで「情報」と「効率的な資金管理手段」を補完することにより、従来の支援では解決できなかった課題を解決できると考えています。
生産性が向上して資金の余裕ができれば、教育・医療への投資などにより、住民の生活の質を向上させることができるでしょう。このモザンビークにおける取り組みは、新興国の貧困層の人々が電子マネーシステムを使いこなす新たなFinTechの活用スタイルといえます。国際的な社会貢献としても、大きな意義を感じています。
