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2017年03月28日

次世代のインフラ点検でライフラインを健全に保ち
スマートな社会の実現を目指す

自律飛行のドローンによる打音検査が可能に

 人の手が届きにくいのは水道管ばかりではない。道路や橋、トンネルなどのコンクリートの内部劣化も検知が難しい。構造物の内部劣化の調査には人手による打音点検が有効だが、こうした点検には足場の構築や交通規制が必要となり、多額の費用と時間を要する。

 そうした中で、小型の無人マルチコプター「ドローン」を活用して橋梁などの高所を点検するソリューションの研究開発が進められている。それが「打音点検飛行ロボット」だ。この研究は内閣府総合科学技術・イノベーション会議が推進する「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(管理法人:NEDO)によって実施されている。

 開発を進めるドローンは周囲をレーザーで計測しながら、位置推定や障害物検知を自動で行う。GPSの位置情報に頼らないため、GPSが使えないトンネル内部や橋梁の裏側などでも自律飛行が可能だ。

 このドローンに「打音点検用センサー」と「目視点検用カメラ」を搭載。ドローンが自律飛行で対象構造物に近接し、自動でハンマーを打つ。そしてノイズキャンセリング技術を用いて、打音のみを正確に記録する。打音の音響データと目視の画像データは地上端末で点検員が確認する仕組みだ。

 現在は実用化に向けた検証を積み重ねており、2019年の社会実装を目指している。実現すれば、人は危険な作業を行わずに済む上、ベテランの知見やノウハウの継承にもつながる。

 さらにNECは、構造物内部の劣化状態を映像から推定する技術を世界で初めて開発した。映像中の物体の微小な動き(振動)を高速かつ高精度に検出する「被写体振動計測アルゴリズム」、内部劣化が生じている箇所の振動パターンの違いを発見・検出する「振動相関解析アルゴリズム」を組み合わせることで、目視で発見できない構造物内部の劣化状態を高精度に推定することができる。これらの様々な技術を活用することで、道路や橋、トンネルなどをよりスマートに点検することが可能になる。

「点」ではなく「線」に着目し“いつもと違う”をいち早く検知

 一方、プラントや工場、発電所などの重要インフラは、老朽化とともに新たな課題にも直面している。施設内の物理システムは高度な分業によるコンポーネント化が進んでいるからだ。複雑・大規模な連係動作によって、専門家でもシステム全体の挙動を把握することが難しい。そこで有効なのが「インバリアント分析」である。これは、データから新たな規則性を発見するNECのAI技術の一つである。

 具体的には多数配置されたセンサーから大量の時系列データを収集・分析し、関係性を自動的に抽出することで“いつもの状態”をモデル化する。つまり個々のセンサーの値という「点」ではなく、センサーの値同士の関係性という「線」に着目しているのである。このモデルを基に大量のセンサーデータをリアルタイム分析し、“いつもと違う”をいち早く発見する。

 関係式が高速演算できるように単純化されているため、収集される大量のセンサーデータとのリアルタイムな比較ができる。専門家でも気づきにくいわずかな変化や過去に経験のない未知の異常なども発見できるので、プラント施設・設備が故障する前の早い段階で、その予兆を検知し対処する予防保全が可能になる。

インバリアント分析技術を動画でご紹介

 多くのプラントでは法令等で定められた周期に基づき、定期的に点検を行うTBM(時間基準保全)が一般的だが、健全な設備や機器に対しても一様に点検、部品交換を行う必要があり、負担が大きい。しかし、この技術を適用すれば、劣化傾向や故障予兆など、プラント状態を的確に捉えることが可能となり、最適な時期に最善の保全を行うCBM(状態基準保全)やRCM(信頼性重視保全)の実現につながる。作業、コストの負担を削減しつつ、より高い安全レベルを確保する保全の高度化に貢献する。

 先進国を中心に老朽化が進む重要インフラ。財源や人的リソースが限られる中で、その安全性を高め“サステナビリティ”を確保することは喫緊の課題である。NECは先進のICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きるスマートな社会の実現に向け、グループの総力を挙げて取り組んでいる。

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