2016年03月30日
インダストリー4.0最新動向、日本・ドイツ・アメリカが目指す未来とは
ドイツ企業のキーパーソンが集結。インダストリー4.0に日本企業はどう備えるべきか(前編)
日本企業がグローバル化を目指すとき考えるべきこと
――国内市場がシュリンクし、多くの日本企業は海外に売って出なければなりません。そこで日本企業が考えるべきこと、とるべき戦略についてご意見をお聞かせください。
島田氏:
日本、日本と言わないことですね。グローバル化して事業領域を変えていくなら、オープンなイノベーションを取り込まないと不可能です。やはり、自らの強みを知り、足りないところは外から持ってくる。すると、文化の衝突が起きます。しかし、それを避けたらグローバル化できるわけがない。重要なことは、戦略に基づいて自らの戦略領域と違うものは整理し、足りないものは持ってくることです。実際にシーメンスは、ソフトウェアの会社になると宣言してから、約7000億円ものお金を使って、過去15年間で数多くのソフトウェア会社を買収しました。
――インダストリー4.0では、積極的にポートフォリオを組み替えている企業も出てきていますね。
島田氏:
はい。大切なのは、それを儲かっているときにやることです。追い込まれてからやると悲惨なことになる。

代表取締役社長
長島 聡 氏
長島氏:
グローバルに出て行くなら、日本企業の強みである「こだわり」や「顧客志向」を本気でやる必要があると思います。たとえば、現地のお客さんを徹底的に見るとかですね。それはつまり、ローカルを見る、知ることです。本社はそれをしっかりと吸い上げて、真摯に聞くことが大事だと思います。ただし、それをやると、ローカルから雑多なものが集まるので、それをまとめる方法論が必要になります。もう1つは、要素技術を極めることです。たとえば部品であれば、小さく軽くして素性をよくする。すると、組み合わせたときに生み出せるバリエーションが増えて、ローカルな多様なニーズに対応できる。こうした備えも大切だと思います。
馬場氏:
日本のサービス業には、とてつもないおもてなし能力があります。しかし、それは工場のものづくりの現場にはありません。たとえば、iPhoneは箱を空けたときにバッテリーが充電されていて、すぐに使えます。ところが、このあいだ日本製カメラを買ってきて箱から出したら、バッテリーが充電されていない。買ってきたらすぐに使いたいのに、すぐに使えないんですよ。箱を空けてすぐに使えるようにしようとしたら、在庫調整が必要だし、場合によれば回収の可能性も考えなければいけない。しかし、そこまで徹底的にこだわるのが、日本が得意としているおもてなしのはずです。ものづくりがおもてなし能力を身につければ、もっとよくなるはずです。

(インタビュー=フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎、ビジネス+IT 編集部 松尾慎司)