2017年03月09日
AI対談:料理家×データアナリスト
”おもてなし”の心が、料理のベース 「AI」との協調は、おいしさの隠し味
一見遠い存在に思えるが、料理とAIは相性がいい
──今後、料理の世界でAIはどのように活用されていくのでしょうか。
栗原氏:
体調管理や食材管理にもAIが使えるかもしれませんね。例えば「今は体力が落ちているから、この食材でこういう味付けがいい」「免疫が低いし、風邪をひきやすいので、塩分量を少し抑え目にして、この食材を足した方が回復早い」とAIがレシピを教えてくれたらいい。レストランなら、お客様へのサービスの一環としても使えます。おいしいと感じる感覚は、お客様の体調によって大きく変わってくるので、それに合わせて最高の食材と味付けを提供することができますからね。

山本:
ただし「おいしい」は主観的な要素が大きく、味のセンシングと「おいしい」の間には個人差が生じることもありますね。それに誰に作ってもらったか、どういうシチュエーションで食べるか、それだけでも感じる味は変わってくるでしょう。
栗原氏:
作り方によっても味は変わります。例えば、同じ分量の塩でもそれを入れるタイミングだけで味は変わってきます。レシピは1つでも、100人いれば、100通りの味になる。火入れするタイミングや焼き加減でも同じこと。粉の付け方、下味の付け方、どのタイミングで水気をふき取るのか、スライサーを使うのか包丁で細かくきるのか。すべての料理のプロセスで味が変わるからこそ、その人の味になっている。それをどこに標準化するかが難しいかもしれませんね。
山本:
だからこそ「あの店の味」「あのシェフの味」といったこだわりが生まれるのだと思います。AIは「特定のファン」が支持するお店というよりも、多くの人が「おいしい」と感じる味を追求していくかたちになるでしょう。

──他にはAIにどのような可能性がありますか。
山本:
最近、レシピを考えるAI、AIを搭載した料理ロボット、そして味覚センサーや食感センサーの開発が進んできています。これら、考える、作る、味を確かめる、が発展していけば、AIが人では試せない量の試行錯誤により、人が思いつかなかった料理を提供できるのではないか。そんな期待を持っています。実はこのような試行錯誤は、医薬品や化粧品の開発でも必要なプロセスで、AIの活用としてNECにも引き合いの多いニーズです。こうして見ると、料理とAIは一見遠い存在に思えますが、実は相性がいいですね。
栗原氏:
私の方法論から言えば、断片を結合させることができれば、AIはレシピ作りのいいアシスタントになりそうです。例えば、〇〇系の料理という断片に対して、食材や味の傾向まで結合してくれたらいいですね。
