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2017年03月17日

「Massive MIMO」技術の検証実験。5G実現に向けたNTTドコモと取り組み

 次世代無線通信網「5G」技術によって、これまで無線ネットワークとは必ずしも関係が深くなかった自動運転や物流最適化、インフラ監視、エネルギー配分の最適化、遠隔医療など、様々な専門サービス分野においても無線ネットワークを介した新たなサービスの創出が期待されています。

 NECは、5Gの実用化を目指して、要素技術の研究開発を行っており、その取り組みについては先日紹介しました

 今回は、その中でも5Gのより大容量・高品質なサービスを実現する「Massive MIMO」技術の検証実験を先日NTTドコモと共同で行いましたので、その内容をご紹介します。

 Massive MIMOとは、5G要素技術の1つです。それは広い帯域幅を確保できる高い周波数帯(マイクロ波)を活用し、多数のアンテナを用いて複数の特定方向に向けて別々に電波を飛ばすBeam Forming(ビームフォーミング技術)により、同じ周波数資源を複数のユーザで同時に使用しながら通信を行うことができます。例えば、このMassive MIMOを大規模スタジアムなどに配備すると、大勢の人で混雑していたとしても、それぞれの人に別々の無線ビームを届けられ、混雑を気にせず快適な映像配信などを楽しむことができるようになります。

障害物が多い環境で実験を実施

 実験は、2016年11~12月に神奈川県横須賀市、2017年1月に東京都渋谷区において、特にビルや電柱・車や人が混在する屋外環境や、柱や壁など障害物の多い屋内環境を中心に実施されました。

 実験では、NECが開発した低SHF帯超多素子アクティブアンテナシステム(AAS)を使用して、Massive MIMO技術の検証を行いました。

 NECが開発した低SHF帯超多素子AASとは、低SHF帯に対応した64個のアンテナをマトリクス状に並べたユニットを2つ連結させることで、128個ものアンテナによるビームフォーミングが可能な送受信装置です。アンテナ数が多いほど、ビームフォーミング性能が向上します。また、NECの高集積化・放熱技術により、ユニット当たりの大きさはコンパクトなA4サイズを実現しています。

横須賀市での実験風景
低SHF帯超多素子アクティブアンテナシステム(AAS)
実験に用いた基地局(右上)と端末(右下)

 低SHF帯とは、3~30GHzのSuper High Frequency Bandと呼ばれる周波数帯の中で、3~6GHzの周波数帯を指します。高速大容量通信が求められる5Gでは、広い帯域を確保できる高い周波数の活用が見込まれています。高い周波数帯の中でも、特に低SHF帯は2020年頃の商用化が見込まれているため、NECでは早期実用化に向けて低SHF帯の活用に積極的に取り組んでいます。

 なぜ、わざわざ障害物の多い環境で実験を行ったのでしょうか?

 実験が行われた障害物の多い環境では通常、近接する端末それぞれに対してビームフォーミングを行うと、互いのビームが干渉しあい通信品質が低下します。また、ビルや柱などの障害物によって発生する電波の反射、回り込みなど、直接波以外の信号(マルチパス)を活用して大容量化することは困難でした。

 しかし、商用化を目指すのであれば、その課題を克服しなくてはいけません。そのような環境でも、NECの開発した低SHF帯超多素子AASが5Gに求められる通信品質を実現できるのか、を検証しました。

渋谷区の実験風景

 NECが開発した低SHF帯超多素子AASは、ビーム形成の精度向上を実現するフルデジタルビームフォーミング制御を採用しています。それにより、対象端末に対してのビームを形成するとともに、マルチパスを利用して干渉する信号を打ち消すビームを形成することができます。また、自信号のマルチパスを効率よく直接波と合成することで通信品質を向上させるビームを形成することもできます。

周波数の利用効率向上と大容量化、通信品質の向上を実現

 実験では、先ほどご紹介したNECの低SHF帯超多素子AASの特長により、複数の端末が近接している場合でも、それぞれの端末に対して適切なビームを形成し、高い通信品質を維持したまま同時に複数の端末との通信を可能とし、大容量化や通信品質の向上が可能であることを確認しました。また、屋内では、LTEと比較して約8倍(注1)の周波数利用効率を安定して実現出来ることも確認しました。

 今回の実験では、Massive MIMO技術による周波数の利用効率の向上、大容量化、通信品質の向上といった効果が確認できました。実用化に向けて、今後も技術開発及び検証実験を継続していきたいと考えています。

 本検証実験の様子を動画で紹介します。ぜひご覧ください。

5Gの実現に向けた低SHF帯超多素子アンテナ技術の検証実験

注1 LTEの2並列伝送との比較。2017年2月20日、NEC調べ

※本記事には、総務省の委託研究「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~高周波数帯・広帯域超多素子アンテナによる高速・低消費電力無線アクセス技術の研究開発~」プロジェクトの成果の一部が含まれています。

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