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2017年04月07日

Technology to the Future

スター・ウォーズのドロイド「BB-8」を“実現”したロボットベンチャーが描く、ロボットと僕たちの「これから」

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に登場したドロイド「BB-8」

 スター・ウォーズのドロイドと生活をともにできるような未来は、もう“はるか彼方の銀河系”の出来事ではなくなるのかもしれない。

 2015年に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に登場したドロイド「BB-8」は、スター・ウォーズの世界観を演出する名脇役であり、往年のドロイド「R2-D2」に並ぶ人気者だ。

 そしてBB-8は、文字通りSFの世界から飛び出し、世界中を“転げまわって”みせたドロイドになった。

 最先端のロボット工学技術を搭載するBB-8のオモチャをウォルト・ディズニーとともに開発したのはアメリカのロボティクス・スタートアップ「スフィロ(Sphero)社」。2015年、スフィロ社はBB-8を含む、自社開発のロボットを世界中で100万台動かすことに成功した。

 今回は海の向こう、アメリカ合衆国コロラド州ボルダーに本社を置くスフィロ社を訪ね、CEOポール・ベルベリアンに、まさにスタートアップとしてのアメリカン・ドリームを実現したBB-8誕生のストーリーを聞いた。そのストーリーからは、未来の家庭用ロボット像も見えてきた。

ディズニーとのコラボが生んだ、アメリカン・ドリーム

 BB-8の生みの親は、イアン・バーンスティン(Ian Bernstein)とアダム・ウィルソン(Adam Wilson)というふたりの起業家だ。イアンはロボット製作、アダムはソフトウェア開発に没頭した10代を生きたふたりは、コロラドのシードアクセラレータ(創業間もないスタートアップに投資を含めた起業支援を行う組織)「テックスターズ(TechStars)」を通じて出会う。

ポール:
 僕が彼らと出会った時、彼らが持っていたのはアイデアだけだった。でも、そのアイデアはスマートフォンでモノをコントロールするという点においては、まぎれもなく最先端のものだった。僕は彼らのアイデアに恋をしたんだよ。

 ポールは、彼らが起業した「オルボティクス(Orbotix)社」(スフィロ社の前身)のCEOとなる。IoTとロボティクスにおける先駆的なアイデアを持っていた彼らは、後に会社名となる、スマートフォンによって自由に操作できるボール型のロボット「スフィロ」を開発、数年で数十万台を売り上げるビジネスに成長させた。

ポール:
 僕らは本当にすごいテクノロジーを持った“ボール”を生み出したんだ。テクノロジーを愛する多くの人々に、スフィロは受け入れられた。でも、スフィロはその形の通り、真っ白のボールだった。より多くの人々に愛されるロボットになるためには、ハイテクのボールというだけではだめなんだ。人間の感性に訴えかけるストーリーが必要だった。

 彼らは、スフィロの新しいストーリーを求めて、2014年の7月から実施されたテックスターズへ再び参加する。これがスフィロ社の大きな転機を生んだ。

 このテックスターズでは、「ディズニーアクセラレータプログラム」を実施しており、ディズニー作品におけるさまざまなストーリーテリングを学ぶ機会が設けられていた。そして、参加者はウォルト・ディズニーのCEOボブ・アイガーと15分間話すことができる。

 イアンとアダムがボール型のロボット、スフィロをプレゼンテーションしたところ、ボブは彼らに1つの写真を見せたという。それは製作中の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に登場する、BB-8の姿だった。ボブからのトップシークレットである映画スチールの提示は、スフィロがBB-8として、新しいストーリーを生きるきっかけを掴んだ瞬間だった。

 テックスターズが終わるのは10月。そしてBB-8が店頭に並ぶのは、翌2015年9月。純粋にBB-8の開発のために使える時間は、僅か10ヶ月程度。ポールはこの開発スピードを「僕らは膨大なオーバーワークに叫び声を上げ、大量のレッドブルとコーヒーを飲みながら、働き続けた」と振り返る。

ポール:
 クリスマス商戦になんとしても間に合わせなければならなかったからね。非常に難しかったが、それが僕たちスタートアップのビジネスの本質だと思う。僕たちのビジネスチャンスは常に突発的に生じ、短いタイムラインで行うことが求められる。僕たちが幸運だったのは、BB-8の技術の80パーセントはスフィロによって生み出されていたことだった。数時間以内にプロトタイプをつくり、ボブに見せることができたのは本当に幸運だったよ。

スフィロ社CEO ポール・ベルベリアン氏
ハイテク企業において、12年以上にわたる豊かな経営・企業経験を持つ、経営者であり連続起業家。2006年にWest Corporationによって買収された、Webと電話の会議サービスを提供する「Raindance Communications」の前CEO、共同創業者などを務める。

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