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東大博士が「就職経験ゼロ」からの起業で挑む「持続可能な発展」とは?

2017年06月13日

アジア人の遺伝子データを集めて新しい市場の創出を目指す

──実際に起業をしてみて、企業であることのメリットは感じていらっしゃいますか。

高橋氏:
 人数などは公開していませんが、一大学では到底集めきれない量のデータを集めることができています。これは企業ゆえのメリットと言えるかもしれません。ただそれでもまだまだです。欧米の集団とアジアの集団はまったく違っていて、アジアの方は人口が多いし、増えています。それなのに、アジアではゲノムに関わる企業でまだ大きいところがありません。そこにチャンスがあると考えています。

──情報がたくさん集まったらそこにどんな可能性があるのでしょうか。

高橋氏:
 データを集めると法則性が分かります。「この遺伝子をターゲットにしたらこの病気の治療ができる」といったことが分かります。それがデータを集める意義です。

 データを集めて法則性が分かるとソリューションが分かります。アジア人のデータが集まれば、欧米人とは違うアジア人のデータに基づいたソリューションが提案できます。たとえば、糖尿病でも欧米人だと関係のある遺伝子が日本人だと関係ないこともあるし、その逆もあります。

──新しい市場をつくるかどうかの最初のところに取り組んでいらっしゃるということですね。

高橋氏:
 そうですね。

できなかった2を責めるのではなく、できた8を大切に働き続けるということ

──2013年にジーンクエストを設立されてから4年になりますが、これまでどんなターニングポイントがあったのでしょうか。

高橋氏:
 ターニングポイントはありすぎて、1つだけ挙げるのは難しいですね。会社とは何かを知らずに始めたので、設立当初がやはり一番大変でした。いろいろ経験して人には優しくなったかなと思っています。

 研究や勉強は自分の努力で何とかなりますが、会社はそうではありません。10の目標に対して8しか達成できないと、それまでの私は残りの2を責めていました。私はもともと完璧主義者なのですが、会社経営でそれをやると心が折れます。持続できなくなります。8できるというのはすごいことです。それを認識して働き続けていくことが本当に重要です。

──メンターやアドバイザーはいますか。

高橋氏:
 何人かいます。とはいえ、はじめは経営に関して、誰が何を知っているのかも分かりませんでした。立ち上げの時は、ある経営者に朝7時半頃から1時間くらいもらって話を聞いていましたし、組織のつくり方や、交渉の仕方などで行き詰ったときに連絡する人もいます。そういう人が何人かいます。

──人脈を構築するうえで心がけていることはありますか。

高橋氏:
 人脈に関しては費用対効果を考えたら負けだと思います。損得勘定で付き合っていると本当に困ったときに助けてもらえません。業務については常に費用対効果を考えますが、人と会うときは考えないようにしています。

葛藤がある時には一歩引いて見る、立場を変えてみる

──高橋さんは研究者と経営者という2つの顔をお持ちですが、2つのアイデンティティがぶつかることはありませんか。

高橋氏:
 しょっちゅうあります。たとえば、こっちを選択したら利益は出るけれども、あっちを選択したら利益は出ないが学術的、将来的な価値がある、なんてこともよくあります。研究者と経営者の2人の自分がいたとき、一歩引いて見ると、相反しているものが共存することで価値が出ることもあります。葛藤がある時には、一歩引いて見るとか、違う立場になってみると、新しいことが発見できることに気づきました。

──これからの挑戦について教えていただけますか。

高橋氏:
 ジーンクエストは持続可能な資本の流れをつくることに挑戦しています。個人向けのサービスでデータも集まったので共同研究をたくさん始めています。

 医療費の削減にも挑戦していきます。遺伝子解析をすることで病気になってから治療するのではなく、病気になる前の予防に貢献していきたいと思っています。自分の医療情報を自分で知ることへの抵抗の声がありますが、やはり自分の健康は自分で守りたいですよね。遺伝子検査という言葉を知っている人は増えてきましたので、遺伝子解析のコストと、社会の関心度が合ったときに、遺伝子解析は爆発的に一般化していくのではないでしょうか。

──最後に読者に向けて何かメッセージをお願いします。

高橋氏:
 新しいことをしたいという人とそうではない人がいますが、ダーウィンは「生き残るのは『最も強い者』ではなく、『変化に対応できる者』だ」と言っています。どちらを選ぶかは自分なので、新しいことに挑戦する人がどんどん増えたらいいなと思います。

──貴重なお話をありがとうございました。

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