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「働き方改革」、まずは正確な勤務記録の把握から
――顔認証を打刻手段に用いる新たなアプローチ

 政府が2017年春に取りまとめた「働き方改革」の実行計画を受けて、企業は早急な対応を迫られている。2019年度には罰則付きの残業上限規制が導入され、2020年からは従業員数301人以上の大企業に対して月あたりの平均残業時間の開示が求められる。

 長時間労働を是正しながら、従業員の生産性をいかにして高めていくか――。各社は知恵を絞り、試行錯誤を重ねる。業界ごと・個別企業ごとに、ワークスタイル改革を阻むさまざまな要因が見られるが、確かなことがひとつある。まず全従業員の勤務時間を正確に把握しないことには、どんな施策も前に進まないということだ。

 この点を踏まえて、ITベンダ各社からは正確性・客観性の高い勤怠データを収集できるソリューションが登場している。中でもNECは、人の「顔」をAIによって認証する高度な技術と、クラウド型の勤怠管理システムを組み合わせた新たな商品を開発し、2017年夏より提供を開始している。

働き方が多様化し、勤怠データの正確な把握が困難に

 従業員の働き方が、ますます多様化している。取引先や現場に直行し会社に戻らず帰宅する「直行直帰」や、顧客企業での常駐勤務、自宅でのテレワークなど、実にさまざまだ。働き方の多様化に伴って、勤怠データの正確な把握が一段と難しくなっている。

 クラウド型の勤怠管理システムは、こうした課題に直面する企業において、活用が広がっている。主要製品の発売が相次いだ2004年~2006年ごろは、PCとインターネット接続環境があれば容易に導入できる点や、各業界固有のシフト管理、複雑な就業規則にも対応できる柔軟性が評価され、主に中堅・中小企業が注目し、普及が進んだ。

 NECが販売するクラウド型勤怠管理システム「勤革時(きんかくじ)※1」は初期導入コストがかからず、既存の給与システムとの連携、勤務実態や残業状況がリアルタイムで確認できる点などが評価され、紙のタイムカードからの移行を図る事業所が相次いだ。2017年6月の時点では8,000社、53万人ものユーザに活用されている。

 一方、大企業の場合はすでにオンプレミス型の勤怠管理システムを運用していることが多く、クラウド型のシステムを新たに導入するケースはあまり見られなかった。しかし近年、従業員数が千人超の大規模事業所にも採用される事例が相次いでいる。採用企業のねらいは、次の3点に集約される。

 (1)サーバ老朽化などを機に、低コストで環境変化にも対応しやすいクラウド型システムに移行したい
 (2)既存システムが使えない事業所や、社外で勤務する従業員の勤怠管理にも着手したい
 (3)既存システムと、「勤革時」の打刻機能を併用し、勤怠データの正確性・客観性を高めたい

 上記(2)および(3)の理由から、従業員の出勤・退勤時の打刻手段として、NECソリューションイノベータでは「勤革時」を活用している。そこで、同社の担当者に、「勤革時」を使った働き方改革の取り組みを聞くとともに、NECが新たに提供を開始した顔認証技術を使った勤怠管理システムを試用した感想について、話を聞いた。

顧客オフィスに常駐する従業員の、正確な労働時間把握が困難だった

 「働き方を改革して長時間労働をなくし、自己研さんやイノベーションの創出に時間を割くためには、勤務時間を客観的に把握できるしくみを整備する必要がありました」。NECソリューションイノベータ 人財企画部 労務グループ 兼 働き方改革推進室 マネージャー 本多 令奈氏はこう話す。

NECソリューションイノベータ株式会社
人財企画部 労務グループ 兼 働き方改革推進室
マネージャー
本多 令奈 氏

 同社では、従業員に配布しているICカード社員証を用いて、全事業所の出退勤時刻を記録するシステムを利用している。しかし、顧客企業のオフィスなど社外に勤務する1,000人超はこのシステムを利用できず、従業員の自己申告によって勤務時間を把握していた。同 主任 神谷 龍氏は「社外勤務者においても客観的な勤務記録を残せるようにしたいと思っていたところ、勤革時の存在を知り、導入を検討することになりました」と語る。

NECソリューションイノベータ株式会社
人財企画部 労務グループ 兼 働き方改革推進室
主任
神谷 龍 氏

 同社は「勤革時」の導入により、設置先の管理者等の許可を得たうえで、現在までに計40数か所の社外の勤務場所にカードリーダーを設置した。その際、元々利用していたICカード社員証を、そのまま共通の打刻手段とした。これによって社外勤務の従業員についても、正確性の高い勤怠データが得られるようになった。各部門の上司は、部下が自己申告した出退勤時刻と、カードリーダーに記録された実際の出退勤時刻との差を確認し、過重労働などを未然に防ぐ適切な指示・声掛けが可能になった。