AI対談:NECレッドロケッツ監督・データアナリスト
チームの「絆」が勝利の源泉
AIがNECレッドロケッツをサポートへ
V・プレミアリーグ2016/17で過去最多となる6度目の栄冠を手にしたNECレッドロケッツ。そのチームを指揮したのが、山田 晃豊監督です。バレーボール界ではプレーや戦術にデータを活用する専用ソフト「データバレー」が一般化し、各チームがデータ分析にしのぎを削っています。そうした中、NECレッドロケッツではデータバレーをさらに推し進めた「AIバレー」の実証実験にも取り組んでいます。AIの活用によって、選手やチームにどんな“化学反応”が起きるのか。チームの「伸びしろ」を強化することができるのか。山田監督とチームのAI活用を支援するNECの本橋 洋介が「AIバレー」の可能性について語り合いました。
SUMMARY サマリー
SPEAKER 話し手
NECレッドロケッツ
山田 晃豊
監督
NECレッドロケッツのコーチ、全日本コーチ、イタリアバレー留学を経て、2008年に監督に就任。V・プレミアリーグ2014/2015および2016/17でチームを優勝に導き、ともに優秀監督賞を受賞。監督としては2度目、コーチ時代も含めると5度目の優勝経験となる。
NEC
本橋 洋介
AI・アナリティクス事業開発本部
シニアデータアナリスト
データサイエンティストと研究者という2つの顔を持つデータのエキスパート。AIを活用したデータ分析の仕事に従事する一方、実際にお客さまと接することでわかる現場からの課題や要望などを基に、新しいAI技術の研究開発を行っている。
すでに普及しているバレー界でのデータ分析。AIバレーでその先を目指す
──スポーツ界ではチーム力の強化や選手の技術力向上に向けて、データを活用する取り組みが盛んに行われるようになりました。バレーボール界では、いかがですか。
山田:バレーボールにおいても分析のための専用ソフト「データバレー」を使った取り組みは15年ほど前から急速に普及してきました。今では、どの強豪も「データバレー」を使って、傾向分析などを行っています。相手の攻撃パターンの傾向がどうなっているのか、それを基にどういう対応策を講じるか。初期の頃はデータを使いこなせる人材が少なかったのですが、徐々にアナリストという職域が確立され、専門性も上がってきました。今ではデータ活用は戦略上の必須要素。優秀なアナリストをいかに確保するかというコート外での争奪戦も激しくなっています。
本橋:Vリーグが始まった頃から、分析の強化に力を入れるチームが急速に増えたようですね。リーグとしての取り組みも素晴らしく、各チームのアナリストでデータを共有しようというルールがある。つまり、データはそれぞれ持っているので、どう使うかが差別化のポイント。15年前はまだそうした職種がなかったのですが、もしあったとしたら私もそこを目指していたかもしれません(笑)。
──NECレッドロケッツではさらに、新たにAIを使った実証実験を開始されました。そのきっかけや狙いを教えてください。
本橋:実証実験ではAI技術の1つであるRAPID機械学習(ディープラーニング)を使い、セッターがトスをする直前やトスをする瞬間の画像を解析して癖や傾向を見抜くことに取り組んでいます。
山田:セッターがトスを上げて、誰がアタックを打つか。それを瞬時に判断してブロックするのがブロッカーの仕事です。選手の経験に頼っていた部分も大きいのですが、AI活用により、それを科学すれば、より正確にトスを読むことができるのではないか、と考えています。
本橋:NECでは企業の経営やビジネス支援のためのAI活用を支援していますが、もっと広い視野に立って、世の中をより良く豊かなものにしていくためのAI活用も推進しています。それがNECレッドロケッツのニーズとマッチしたことから、今回の実証実験へとつながりました。
データアナリストとして、新しい活躍の場を与えてもらったことは非常に光栄です。
山田:バレーボール界でのAIによる画像データの分析・活用は初めての試みではないかと思います。新しいチャレンジに、こちらとしてもワクワクしています。