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新無線通信技術「LPWA」とIoTで、配送業務を効率化
―LPガス業界の課題解決に向けた新たな取り組み

ポイントは、「IoT」と「LPWA」の融合

──この新しい取り組みで、NECは具体的にどんな役割を果たしたのでしょうか。

羽部:LPガスの配送効率化という明確な課題提示をいただき、NECでは課題解決を図るための技術や方法を、ミツウロコクリエイティブソリューションズと意見交換を重ねながら検討しました。IoTや新たな通信技術を活用した最適なシステム構築に向けて、さまざまなアイデア提案も行いました。

 またNECは、このプロジェクトのまとめ役として、通信を含めたシステムの全体設計を担っています。さらに、収集した指針データをサーバに送信するための装置として「LPWA対応IoT無線化ユニット」を開発、加えて、指針データをクラウド上に収集して活用するプラットフォームの構築も行っています。

 無線通信によるネットワークづくりでは、装置の構成や通信回線をいかに安価に抑えるかが大きなポイントでした。そこで、新たな無線通信技術「LPWA」に着目して、ネットワーク構築における新たなパートナー探しを行いました。

 通信環境の検証などを行った結果、コストや運用の使いやすさからLPWAに対応するネットワーク規格のひとつである「Sigfox」を国内で展開する京セラコミュニケーションシステムに協業のパートナーをお願いしました。低消費電力で長距離伝送を特徴とするLPWAの中でも、「Sigfox」は、広域に設置されたLPガスメーターからデータを収集するのに最適と考えました。

──京セラコミュニケーションシステムが行ったことは何ですか。

日比氏:今回、通信ネットワークに求められたのは、広域エリア全体を漏れなくカバーして少ないデータをやりとりするという、シンプルな仕組みでした。

 エネルギー業界における「Sigfox」を活用した新たなビジネスモデルへの参画は、当社にとって初めての取り組みで、大きなやりがいを感じました。そこで、アンテナ基地局の設置など初期コストは当社がサポートして、ご利用の企業には通信料をお支払いいただくという提案をしました。

 今回のプロジェクトは、IoTがさらに普及する将来を見据え、さまざまな分野へ「Sigfox」活用を拡大させていくための価値のある挑戦だと考えています。

LPガス業界全体の課題解決に貢献

──プロジェクトの現在の進捗状況はどうなっているのでしょうか。

永沼氏:お客様宅のLPガスメーターに無線化ユニットを設置させていただき、実機レベルでデータ収集の検証を行うなどの実証試験を行うべく、準備を進めているところです。

 今後は、取得する日次の指針データをクラウド上に集約して活用するためのシステム構築など、実用化に向けた取り組みにも着手していく予定です。

──この取り組みが実用化した時、どんな具体的な成果を期待していますか。

永沼氏:最初に、ガス配送効率化の最大の狙いは、配送回数を減らすことだとお話ししました。この取り組みが実用化されれば、お客様の実際のガス使用量を日次データとしてきめ細かく把握することができます。これにより、容器にガスが残った状態での交換を解消。更にムダのないタイムリーな配送を実現することで、人手や配送コストの低減が可能になります。

 LPガスの長年の課題解決を図るとともに、競争力強化や顧客サービスの向上にもつながると考えています。

──ガス配送効率化の今後の展望についてお聞かせください。

永沼氏:今回のプロジェクトの目的は、お客様のガス使用の指針データを詳細に把握して、ガスの配送回数や作業を低減することです。今後は日々の指針データに加え、お客様の暖房機器使用開始日や気温などの気象データといった、さまざまな情報を組み合わせて分析することで、半年先や一年先を見据えた需要予測なども、頭に描いています。そうした先進の需要予測の実現には、AIの果たす役割がますます重要になってくると思います。

 また、次の段階で実現を目指している、最適な配送日や配送ルートの策定、配送車両に積載するボンベ本数の自動指示の実現など、将来的な展望においてもAI活用に対する期待は大きいですね。

──最後に、LPガス業界に対するこの取り組みの影響について聞かせてください。

永沼氏:先程もお話したように、ガス配送業務の効率化は、業界全体にとって長年にわたる共通課題でした。1本で約100kgのガスボンベを毎日何件も運ぶ配送業務は、作業員にとっても大きな負担となります。近年の作業員の高齢化や将来の人材不足なども、業界全体が共通して抱えている深刻な課題です。

 今回のガス配送業務効率化の成果は、我々ミツウロコグループだけでなく、LPガス業界全体の課題解決にも貢献できると期待しています。

 今回は、LPガスというエネルギー業界における取り組みだが、「IoT」や「LPWA」を活用した先進の仕組みづくりは、水道や物流など社会の幅広い分野における新たな価値創造にも貢献していきそうだ。