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先進AIで過去の健診データから、社員の将来の健康状態を予測
~企業の健康経営に役立つ「将来検査値予測システム」とは~

2018年03月15日

 いま、日本の企業の間で、「健康経営」という意識が広がりつつある。企業が社員の健康をマネジメントして健康維持や増進を図ることで、医療費の削減や生産性アップ、企業価値の向上などを図る。これが、「健康経営」の大きな目的だ。経済産業省でも、企業における健康維持や増進への取り組みにおける費用は、「コスト」ではなく、将来的に収益を高める「投資」だと位置づけている。

 こうした「健康経営」にいち早く着目したNECソリューションイノベータでは、社員の健康管理に役立つ「将来検査値予測システム」を開発した。このシステムは、蓄積された定期健診データからAIを活用して健診結果の予測モデルを導き出し、将来の健康状態を可視化するというものだ。

NECの将来検査値予測システム概要
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現状生活を維持した場合、生活改善した場合の2パターンを予測

 シミュレーションは、現状の生活を継続した場合と、生活を見直した場合の2種類のパターンで、3年先まで1年単位での予測を行うことができる。この新たなシステムの開発は、社員自身に生活習慣改善や健康維持に対する自覚を促し、不調予防や健康増進に向けた「行動変容」を支援するのが狙いだ。

 「将来検査値予測システム」は、メタボリックシンドローム、高血糖、高血圧、脂質異常などの判定項目として使われる9項目の定期健診データと生活習慣などの問診データ、性別・年齢などの基本データをもとに予測を行う。過去に蓄積された大量データから、社員一人一人の健康状態に対する高精度な予測を実現するカギとなるのが、先進のAI技術群「NEC the WISE」のひとつである『異種混合学習技術』だ。

 「異種混合学習技術」は、膨大なデータの中から関連性による特定の規則性を発見し、予測式を自動で作成。さまざまな種類のデータが混在するビッグデータから、すばやく高精度な予測を可能にする。また、「予測の結果が、なぜそうなったのか」という理由や根拠も可視化できるため、社員に対する生活改善などのアドバイスもわかりやすく的確に行うことができる。

NECソリューションイノベータ株式会社
イノベーション推進本部
兼 NEC 未来都市づくり推進本部
主任 田中 博典

 「AIを活用して、NECグループ社員の健康増進にために何かできることはないか。それがシステムの開発研究のきっかけでした。2014年からスタートした研究では、データの整形や加工、予測精度を高めるためのデータチューニングなど苦労したことも多く、最初の頃は分析と検証の繰り返しでした。NEC健康管理センターの産業医や保健師、スタッフさんと何度もディスカッションも重ねて、多くのアドバイスもいただきました。
また、研究結果は学会発表やさまざまなイベントを通じて、専門家と積極的な意見交換を行いながら、ブラッシュアップを図りました。」

現在、NECの健康管理センターで実際に活用

 「将来検査値予測システム」は、2017年度からNECの本社を含む3地区の健康管理センターで、社員の健康維持や増進を目的として実際に活用。社内のイントラネットクラウド上にある「将来検査値予測システム」のWebアプリを利用し、保健師と社員が予測画面を見ながら、保健指導を行われる。こうした「将来検査値予測システム」などを活用した健康経営は、企業や社員にどんなメリットを生み出すのか。

リスクシミュレーションの画面
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 いま企業では、欠勤や休職、遅刻早退などによって業務に就けないアブセンティズムや、出勤していても心身の健康上の理由から十分な能力を発揮できないプレゼンティズムが大きな課題となっている。企業における健康に関する総コストのうち、こうした間接費用による労働生産性の損失が、4分の3以上を占めるという報告がある。また、不眠症などの睡眠障害は、出勤してもアクシデントやミスの発生率が1.4倍に高まるともいわれている。

 「将来検査値予測システム」を活用した食や生活習慣の改善指導は、こうした労働生産性の低下防止や、技術者や専門職など健全な人的リソースの有効活用につながる。また、社会における医療費削減への貢献によって企業価値の向上も期待できる。

 一方で、社員にも利点がある。「将来検査値予測システム」の予測データによって、生活習慣改善前と改善後の状態を可視化して比較できるため、自身の将来像を見据えた生活習慣改善への自覚が生まれる。これによって、高血圧や脂質異常症、糖尿病などにならないようにプロアクティブな自己管理なども可能になる。

 企業の保健スタッフにとっても「将来検査値予測システム」が果たす役割は大きい。従来専門的な知見や経験で行ってきた保健指導に客観的データがプラスされることで、説得力が高まるとともに、AIから導き出されるその人にとって効果的な生活改善項目を参考に指導を行うことができる。さらに、将来の健康状態をモニター表示して行う保健指導は、社員の関心度も高く、生活改善に対するインパクトも大きいという。

生活改善シミュレーション画面
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地域住民への保健サービス向上など、活用領域の拡大に期待

 NECでは、2018年中に「将来検査値予測システム」の活用を、さらに複数拠点の健康管理センターへ拡大する予定だ。また、NECは、このシステムの一部機能を製品化して、2018年から多くの企業、健保、自治体が利用できるサービスとして提供していく。今後は、職種、業務、地域などの特性を学習して各組織にマッチした予測モデルや、社員自らが予測結果を確認するセルフケア機能の提供、バイタルデータとの連携による週単位や月単位など短いサイクルでの予測の実現なども検討していく。

「システム開発の当初の目的は、働く人の健康維持・増進でしたが、これからは自治体における地域住民への保健サービス向上など、対象者を拡大して社会に広く役立つことができたらと期待しています。また今後労働人口の減少が予測される中、健康な人が長期にわたって働ける社会づくりにも貢献したいと考えています。」と、NECの田中は期待を込めて語る。

 生活習慣病の抑制や医療費の低減は、大きな社会課題となっている。また、健康寿命を延ばすことは、医療費の適正化だけでなく、個人のQOL向上にもつながる。自分自身の現在と将来の健康状態に向き合い、生活を見つめ直すきっかけとなる「将来検査値予測システム」は個人、企業、そして社会にもさまざまなメリットをもたらしてくれる。

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