2016年06月23日
働く大人の学びと成長
岸見一郎氏(前編)~上司が知っておくべき「ゆとり世代」との付き合い方とは~
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」はアドラーの言葉ですが、ビジネスパーソンにとって、上司や部下との関係づくりや取引先との関係づくりは切実なテーマとも言えます。私たちは、どうすれば良好な人間関係を築くことができるのでしょうか。アドラー心理学の第一人者で、ベストセラー『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(どちらもダイヤモンド社刊)の著者・岸見 一郎氏に、そのヒントについてお聞きしました。
「やらない」という目的のために「できない」原因を探していないか
──『嫌われる勇気』は私も読ませていただきましたが、組織の中で対人関係の悩みを抱えている人が多いということもあって、これだけのベストセラーになったのかなと感じました。先生ご自身は、なぜこれほど多くの人に読まれることになったとお考えでしょうか。
岸見氏:
『嫌われる勇気』や続編の『幸せになる勇気』には、ある意味当たり前のことが書いてあります。特別なことが書かれているわけではありませんが、読まれた多くの方が「今までのような生き方ではダメなんだ」と感じられたのだと思います。
特に若い読者は、「今までのように、上から言われたことをやっているだけでは大変なことになる」という危機感を持った人が多いのではないでしょうか。言っていることが当たり前だからこそ、多くの方々に新鮮に響いたところがあったのではないかと考えています。
──本の中に「目的論」と「原因論」という言い方が出てきますが、私を含めビジネスパーソンは、原因論的な発想で物事を考える人が多いように感じています。例えば、新しいことをやる時に「競合が強いからやめておこう」と、やらない原因を見つけて挑戦をやめようとします。ビジネスパーソンは、原因を分析するのは得意ですが、目的論的な発想は浮かびづらいように思います。
岸見氏:
原因論から離れられないのは、そこに「目的」があるからです。新しいことをしないという「目的」を達成するために、過去の「原因」を分析しているということです。
新しいことを考えて提案した人がいても、組織として積極的なゴーサインが出にくいのは個人も組織も同じで、そこに「できればやりたくない」という目的があるのです。その結果、やりたくないことを正当化するために「できない理由を探す」という原因論的アプローチにつながっていると考えるのが、目的論的な発想です。
反対に「新しいことをやりたい」という明確な目的があれば、「できない理由」よりも「どうすれはできるか」を探すことができるのです。