2016年10月03日
AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く
欧州に学ぶ、地域と共に歩み地域に貢献する再生可能エネルギー事業
ドイツ・バイエルン地方の小さな最先端の村


話を遠い沖合から陸へ戻そう。それも、住民が集う近所の教会やビヤホールと同じような顔をして、あたりまえのように風力タービンが並んでいる村の話である。ビルトポルズリートという耳慣れない名前の村はドイツ・バイエルン地方にある。人口2600人の小さな村だが、「再生可能エネルギーの村」の異名を持つ最先端の村でもある。今年3月には20年前に村が再生可能エネルギーへのシフトを決めた改革の立役者でもあるアルノ・ツェンゲルレ村長が来日し、東京・横浜・八戸など各地で講演や自治体の長との面談を行った。世界各国から訪れる視察団もさぞかし絶えないであろう。
『更なる再生可能エネルギーの導入拡大に向けた 政策の方向性について』(平成27年4月27日資源エネルギー庁)では、「問題意識」として「長期安定で低コストな自立電源となるための基盤整備」とともに「地域に根ざした再生可能エネルギーの導入」を掲げ、「地域の産業創出や雇用確保等、 地域活性化につながる形での導入を普及させていくこと」「地域住民の理解を得ることや地域 の自然環境との調和を図ること等、各地域の実情に即した円滑かつ着実な導入を進めていくこと」の必要性を述べている。
「村民の参加が最も重要なことだ」「村民が再生可能エネルギーから利益を得られなければならない」というツェンゲルレ村長の言葉には実感が込められている。村全体を巻き込み、利益を住民みんなで分け合うという発想はいたってシンプルに見えるが、風力・太陽光・バイオマス・小水力など再生可能エネルギーだけで村の電力消費量の5倍の電力を創出し、余剰分は国の電力網に売却して利益も上げているというビルトポルズリート村の事例からは、自治体のみならず民間企業も襟を正して学び直す価値がありそうである。
市民ファンドを活用して再生可能エネルギーと地域の持続可能な発展を結びつけた国内の事例としては、「市民風車のパイオニア」北海道グリーンファンド、会津ソーラー市民ファンド、富山県に全国初の市民出資による小水力発電所、大分県では地域金融機関や地方公共団体と協働で温泉熱発電事業等への投資をするファンドなどがあった。認定NPO法人きょうとグリーンファンドは、市民出資による太陽光発電設備の設置に、次世代を担う子どもたちの環境学習の拠点としての役割を絡めているのが興味深い。