2016年10月03日
AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く
欧州に学ぶ、地域と共に歩み地域に貢献する再生可能エネルギー事業
風車が並ぶ新しいイギリスの光景

2016年夏——昔ながらの重厚な石造りの建物と斬新なデザインの超高層ビルが入り混じり一種独特の活気と熱気を帯びた21世紀のロンドンから、涼を求めて田園地方へと車を走らせると、おなじみの牛や羊の放牧風景とともに目につくのが、行儀よく佇む風力発電機の列である。
再生可能エネルギーの中でも最大規模の風力発電。先陣を切ったドイツ、スペイン、デンマークに続いてイギリスは2005年頃から急速に追い上げてきた。中でも洋上風力では、島国の利点を生かして世界を牽引する。今年8月、発電容量が最大180万キロワットに達する世界最大の洋上風力発電所をイングランド沖に建設する計画に英政府がゴーサインを出したニュースは記憶に新しい。半年さかのぼる今年2月に「世界最大」と報道された同じくドン・エナジー社(デンマーク)が手がけるイングランド北部ヨークシャー沖合の建設プロジェクトを拡張するもので、完成すればロンドンの超高層ビル「ガーキン」を超える高さ190メートルの風力タービンが最多で300基稼働し、160万世帯の電力を供給する。
さらにさかのぼって昨年11月にも英スコットランド沖合で「世界最大規模」の洋上風力発電所建設計画が承認されたばかり(AFPBB News関連記事はこちら)。「世界最大」記録はまさに風を切る勢いでイギリスを舞台に更新され続ける。ノルウェーのエネルギー大手スタトイル社が手がけるこのプロジェクト、実は規模の大きさ以外にも注目されていることがある。強力な蓄電池システムである(AFPBB News関連記事はこちら)。1メガワット時のリチウム電池の容量が「iPhone200万台以上」に相当する蓄電池システムが、2018年末には、スコットランドの25キロ沖合で浮体建造物上に設置されたタービン5基に接続されるという。
イギリスと同じ島国でありながら、日本で思うように洋上風力発電が普及しない理由はいろいろ考えられるが、一つには浅瀬の狭い日本では設置場所の難しさがある。景観や漁業への影響に配慮して沖合へ遠ざかるほど、海底に基礎を築いて支柱を立てる着床式ではコストが膨らむ。また、地震や台風の多い日本では供給の安定性にも懸念がある。浮体式洋上風力発電は福島などで実証研究が続けられ、長崎県の五島列島では今年4月から営業運転に入って離島1700世帯分の供給が見込まれるが、浮体式の発電所の電力を強力な蓄電池システムに貯蔵して需要のピーク時や天候変動による供給の穴埋め用の電力を担保する技術の進展は、今後の日本がイギリスのような洋上風力発電大国を目指せるかどうかのカギとして目が離せない。