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2016年11月11日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

新たな市民参加型社会への切り札としてのクラウドファンディング

ニュージーランドの秘境ビーチを守れ!ネット預金で購入のビーチが国立公園に

ニュージーランド南島の先端にあるアワロアの入り江と浜辺(撮影日不明、2016年2月26日提供)。©AFP/BAYLEYS REAL ESTATE−—ニュージーランド南島のビーチを購入して公共の自然公園にするために、インターネット上で資金提供を募るクラウドファンディングを行い、数百万ドル(数億円)の資金を集めたニュージーランド人の男性、夢が実現。

 「ロード・オブ・ザ・リング」三部作や「ホビット」など映画のロケ地に使われ、観光先として大人気のニュージーランド。その魅力は何といっても「ありのまま」の大自然…だと思っている日本人は少なくないであろう。しかし、実際のところ「ありのまま」では残念ながら自然資源は恒久的なものにはなり得ない。ニュージーランドには包括的な政策と徹底した法律によって維持されてきた自然資源管理制度、そしてそれ以前に伝統的な「市民参加」の意識があったことを忘れてはならない。

 この夏、自ら「ごく普通の人物」と語る一人のニュージーランド男性の夢が、インターネット上で資金提供を募るクラウドファンディングにより実現した。(3)クラウドファンディングサイト「ギブアリトル(Givealittle)」を利用して、4万人からニュージーランド史上最高額となった計230万NZドル(約1億7500万円)を集め、ニュージーランド南島のアワロアビーチを買い取って、アベル・タスマン国立公園の一部としたのである。

 歴史的名所や自然的景勝地を守っていくのは市民の務めであるという意識が欧米には根づいている。ニュージーランドをはじめ英連邦の諸国には「ナショナルトラスト」活動がある。ピーター・ラビットの原作者で今年は生誕150周年のイベントが日本でも催されたビアトリクス・ポターは、イギリス湖水地方の土地を買い取ってナショナルトラストに託したことが知られている。

ピーター・ラビットが誕生した100年以上前の面影を宿す湖水地方ニアソーリー村の風景(2016年8月30日撮影)。©Roundtable Com, Inc./Active IP Media Labo*

 日本のクラウドファンディングサイトで「自然保護」のタグを覗いてみると、たとえば「飛騨の新しい木材ブランドを作りたい」「危機に瀕した里山を再生する『竹パウダー』を広めたい」「貴重な自然の保護・調査のためにドローンを購入したい」など3000円から支援OKの身近なプロジェクトがたくさんある。学生のうちに身近なプロジェクトから始めてクラウドファンディングに親しんでおくことが、やがて市民による技術革新や社会変革へとつながるかもしれない。

(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News(*を除く))

*(1)AFPBB News 関連記事(2016年9月18日)「ロンドンの地下鉄駅を「ネコ」たちが占拠、英国」

*(2)AFPBB News 関連記事(2014年9月24日)「ビールを地下パイプラインで輸送、ベルギー世界遺産の街」

*(3)AFPBB News 関連記事(2016年7月12日)「ネット募金で購入のビーチが国立公園に、ニュージーランド」

AFP通信(Agence France-Presse)
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