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2017年01月24日

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

深刻化する食品ロス問題と、食にまつわる社会的ニーズの変化

 日本は「廃棄大国」と言われる。消費者庁「平成28年度消費者白書」によれば、わが国の年間の食品由来廃棄物等の発生量は推計2,801万トン、そのうち食品ロス(本来はまだ食べられるのにもかかわらず捨てられる食品)の量は642万トンである。この量は世界全体の食料援助量約320万トン(2014年国連世界食糧計画(WFP))の約2倍に相当する。世界各国の食品廃棄物の処理方策、そして日本での食品ロス削減に向けた取り組みを見てみよう。

先進国における食品廃棄量の高止まり

フランスのモルスバックでメタンガスとバイオ燃料を作るために集められた食品廃棄物(2012年10月23日撮影、資料写真)。©AFP/JEAN-CHRISTOPHE VERHAEGEN--【2016年11月11日】世界の飢餓人口を賄えるほどの膨大な量の食品が廃棄されている。国連食糧農業機関(FAO)が10日、明らかにした。(1)

 FAOの発表によると、世界では年間13億トン近くもの食品が廃棄されており、これは世界の飢餓人口10億人を十分に養えるほどの量に当たるという。

 また、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する報告書によれば、最終的に廃棄される食品の生産に使用されるエネルギーは、温室効果ガス排出の大きな要因にもなっている。

 食品ロス問題に拍車をかけているのが、全世界のスーパーマーケットチェーンの販売規格であると、食品ロス問題に取り組む英環境保護団体「フィードバック・グローバル(Feedback Global)」のサラ・オッペンハイマー氏は指摘する。一つは、食品の外見上の見栄えを良くするために捨てられてしまう部分、もう一つは、「販売期限」「消費期限」「賞味期限」などのラベルの使用により、実際には安全な食品が捨てられてしまうということである。

各国に見る食品廃棄物の処理方策

スペイン・バスク自治州のガルダカオで、貧困者への食糧援助と廃棄物削減の目的で設置された「連帯冷蔵庫」に食品を入れるレストランのオーナー(2016年5月30日撮影)。©AFP/ANDER GILLENEA--【2016年6月3日】屋外に設置した「連帯冷蔵庫」に近隣住民やレストランが残り物や賞味期限切れ間近の食品を提供することで、無駄な食品廃棄を減らしつつ困窮者へ余った食事を届ける。(2)

 「連帯冷蔵庫」を立ち上げ、運営しているのは地域のボランティア団体。中身のチェックもボランティアがやっている。欧州らしい助け合い精神の表れである。

【2016年5月9日】鶏を飼うことで、野菜の皮などの生ごみを餌に再利用しようという動きが今、フランスで広まりを見せている。©AFP(3)

 助け合いの相手は人ばかりではない。動物の力も借りる。

 スーパーマーケットが売れ残った食品を廃棄処分することを禁止する法律を制定、食品の無駄を減らす努力が国際的に知られるようになったフランス。しかし、一般家庭で出る生ごみの量も無視できない。そこで、各家庭で鶏を飼い、野菜の皮などの生ごみを鶏の餌に再利用するプロジェクトがフランスで普及している。参加者には採卵鶏が提供されるので、産みたて卵も手に入り、一石二鳥である。

 アメリカではコーヒーチェーン大手スターバックスが、全米で活動する食料援助ネットワーク「フィーディング・アメリカ(Feeding America)」への参加を、昨年3月の株主総会で発表した。(4) スターバックス・フードシェア(Starbucks FoodShare)というプロジェクトで、全米7600店舗で以降5年間にわたり、毎日閉店後に売れ残った調理済み食品のうちまだ食べられるものを、困窮する人々のために寄付する。同社によれば、初年度だけで500万食、2021年度までには年間5000万食を寄付できる見込みであるという。

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