ここから本文です。

2017年03月31日

IoTは、おもてなしをどう変えるのか。―訪日外国人を対象にした実証実験を実施

 観光やショッピングなどを目的として、日本を訪れる外国人が急増している。2017年1月、日本政府観光局(JNTO)では、2016年の訪日外国人は過去最高の2,403万9,000人だと発表した。

 政府はこうした訪日外国人の増加を、国内消費拡大につながる日本の成長戦略の大きな柱のひとつとして位置づけている。日本は長い間にわたり、『工業立国』として成長を続けてきた。人口減少による労働力の低下などが予測される将来を見据え、新たに『観光立国』としての成長が期待されている。

 『観光立国』を目指すためには、日本を訪れる外国人が、滞在やショッピングなどをストレスなく快適に過ごすための、おもてなしの向上が求められてくる。訪日外国人に対するサービスの充実や質の向上を図るために、いま注目されているのがIoTなどのICT活用だ。

パーソナルデータを活用し、個人に最適なおもてなし

 今年2月、総務省が推進する「2020年に向けた社会全体のICTアクションプラン(第1版)」の取り組みの一環として、「IoTおもてなしクラウド」の実証実験が、六本木・虎ノ門エリアで行われた。この実証実験は、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会が統括し、株式会社J&J事業創造、東京空港交通株式会社、NEC、株式会社ホテルオークラ東京が参加して行われたものだ。

地域実証への参画体制/港区地区 六本木・虎ノ門エリア

 「IoTおもてなしクラウド」の実証実験は、スマートフォンと専用アプリ、交通系ICカードを活用して、日本を訪れる旅行者などにより良いサービスを提供することが目的だ。

 実証実験の概要は、次の通りである。外国人の旅行者はまず、スマートフォンにインストールした専用アプリを使って自身のパーソナルデータを登録する。専用アプリの選択メニューに従って入力されたパスポート情報や言語(母国語)、アレルギーや宗教上の食の禁忌、車椅子の利用や障害などのアクセシビリティなど、個人の属性情報をクラウド上に登録し、さらに、利用したいサービスを一覧から選択する。空港やホテル、レストラン、免税店などのサービス事業者は、許可された属性情報を利用して、キメ細かなサービスに役立てる。その属性情報を取り出すツールとして利用されるのが、パーソナルデータと紐づけられた交通系ICカードである。

サービス向上に向けた、IoTの可能性に期待。

 ここで、六本木・虎ノ門エリアの実証実験を統括した、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会の、吉川氏に話を聞いた。

──まず初めに、今回の六本木・虎ノ門エリアの実証実験で統括という役割を果たしたジャパンショッピングツーリズム協会について、簡単にご紹介ください。

吉川氏:
 ジャパンショッピングツーリズム協会をひと言で表すなら、訪日外国人の方々の日本国内でのショッピング消費拡大を目的として活動している団体です。近年、訪日外国人の増加に伴い、買い物や食事など、旅行者による直接消費の拡大が、大きな期待を集めています。

一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会
企画本部長
吉川 廣司氏

 こうした訪日外国人の消費をさらに促すためには、2つの大切なポイントが考えられます。1つは、「リピート」です。例えば日本ならではの伝統工芸品などは、次々と購入して集めたくなります。また、いろいろな地域での食べ歩きなど、消費のリピートがインバウンド拡大のカギを握ります。

 2つ目は、「拡散」です。大都市だけでなく、日本には魅力あふれる地域がたくさんあります。こうした日本中のさまざまな地域での旅行者の消費拡大がこれから重要になってきます。協会ではこの2つの視点を重視しながら、日本のショッピングの魅力や地域特有の産品を広く世界にPRしているほか、海外の旅行者に向けて地域のお店や事業者がどう対応したらいいのかなど、提案やアドバイスを行っているのです。

──次に、ジャパンショッピングツーリズム協会が実証実験に参画した理由や目的にについて、お聞かせください。

吉川氏:
 IoTの活用が各分野に広がりつつある中で、訪日外国人に対する商品販売やサービス提供のインバウンド対応の現場では、まだまだ普及していないというのが現状です。クラウドは、多大なコストをかけることなく、新たなサービスや仕組みを構築できるという特長があります。クラウド上のデータとIoTを上手く使ったら、今後どんなおもてなしやサービスが実現できるのか。日本を訪れた外国人が喜び、地域の小売業や飲食店の人たちも喜ぶ環境づくりに向けて、IoTの可能性に対する期待感が参加の大きな理由です。

──実証実験において、参加企業はどんな役割を担当したのでしょうか。

吉川氏:
 東京空港交通は、旅行者が購入した交通系ICカードを使って、パーソナルデータとともに、バスの到達時刻などをホテルに伝達する実証を担当しました。ホテルオークラ東京では、スムーズなチェックインやレストランにおけるキメ細かなメニュー案内の対応などの実証を行いました。J&J事業創造が担当したのは、ショッピングの際の免税手続きの効率化の検証。そしてICTのとりまとめとして、パーソナルデータの登録やIoTおもてなしクラウドと各種サービスとの連携支援を担当したのがNECでした。ジャパンショッピングツーリズム協会では、実験に参加していただくモニターの募集や個人の属性登録のほか、実証実験の統括を行いました。

関連キーワードで検索

さらに読む

本文ここまで。
ページトップ