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ITでゴミ問題を解決する

AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く

 温暖化(気候変動)の脅威に対する世界全体での対応を強化するため2016年11月に発効したパリ協定。トランプ大統領が離脱を表明したとはいえ、従来の先進国だけでなく、新興国を含めた世界のほとんどの国が、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量削減目標を決め、気候変動抑制に取り組む。温室効果ガス排出量の削減には、再生可能エネルギーの利用や省エネなど様々な方策が必要となる。我々が日常的に使用する紙も気候変動と深く関わっている。紙の原料パルプは森林資源である木材から作られる。すなわち、紙の生産は二酸化炭素を吸収する森林資源の減少につながる。しかし、紙は私たちの日常生活に欠かせない。現在の使用量を維持しつつ、森林資源の減少を抑制するためには、紙のリサイクルを進めることが重要だ。つまり、家庭などから出されるゴミの問題と大きく関連する。

 ゴミ問題は新興国と先進国でどのような違いがあるのか。最新のIT技術でゴミ問題を解決する動きを紹介し、テクノロジーによる社会課題解決の可能性を考える。

SUMMARY サマリー

新興国のゴミ問題

 新興国では、一般的にゴミは分別もされず、そのままの状態で廃棄されるため、人口増加や経済発展に伴いゴミの量は増大し、ゴミの処分が大きな問題になっている。従来は開放投棄(オープンダンプ)されており、周辺の生活環境の悪化などが深刻化している。また、スリランカ(1)、エチオピア(2)では積み上がったゴミ山が崩壊し、現地で死傷者が出る事故が発生している。

スリランカ・コロンボ近郊のゴミ山が崩落した現場を視察する、日本から派遣された国際緊急援助隊(2017年4月21日撮影)。©AFP/Ishara S. KODIKARA

 島嶼(とうしょ)国であるモルディブでは、首都の島、マーレ近くのティラフシ島全体をゴミの島としているが、観光客の増加に伴い廃棄されるゴミの量は増加する一方だ。地球温暖化による海面上昇だけでなく、島嶼国ではゴミの処分が大きな問題となっている。 (3)

モルディブのティラフシ(Thilafushi)島にある同国最大のゴミ処分場から立ち上る煙(2013年9月9日撮影)。©AFP/Roberto SCHMIDT

先進国のゴミ問題

 先進国のひとつの事例としてシンガポールでは、セマカウ島でゴミを埋め立てている。しかし、前述のモルディブのティラフシ島とはかなり異なる状況だ。シンガポール共和国国家環境庁が発表しているデータによれば、シンガポール国内の廃棄物の半分程度が再利用される。実際に埋め立てられる廃棄物の量はここ数年でほとんど変動がなく、セマカウ島で埋め立てる空間がなくなるほどの逼迫した状況ではない。 (4)

 日本が3R(リデュース、リサイクル、リユース)を2000年に導入し、その後世界にも普及した。シンガポールも例外ではなく、現在は政府が主導し3Rを推進している。また、ヨーロッパでも3Rの実践が進んでおり、中でもドイツでは分別が進み、47%がリサイクルされている。しかし同じヨーロッパ内のフランスではリサイクル率が20%台で、とりわけコルシカ島ではゴミ問題が大きな社会問題になっている。 (5)

 一部の地域でゴミ問題が深刻化しているとはいえ、先進国ではゴミ問題の緊急性が高いとは言えず、埋め立てなどでは深刻な環境問題にまで至っていない。しかし、ヒトが経済活動を行う限りゴミは発生するため、永続的な課題とも言える。このゴミ問題を、IT技術を使って改善・解決しようという動きがすでに先進国では始まっている。それが新興国にまで広がれば、環境問題はIT技術によって改善・解決される可能性が高くなる。