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次世代中国 一歩先の大市場を読む

アプリが変えた中国人の行動パターン
情報共有が進み、効率化し始めた中国社会

2017年09月19日

 この夏、黒龍江省と内蒙古自治区に10日間ほどの旅をしてきた。その間、強い印象を受けたのは中国国内の移動が驚くほど便利になったことだった。最大の理由は社会のデジタル時代の進展にある。スマートフォン(以下スマホ)を事実上、社会人のほぼ全員が持つようになり、社会の情報共有が進んで、経済活動の効率が急速に高まっている。旅行という観点を切り口に、中国人の動き方はどのように変わったのか、それは社会にどのような影響を及ぼすのか、そんなことを考えてみた。

アプリで全国すべての航空券と鉄道が予約可能

Ctripの航空券予約購入画面。すべての航空会社のすべての割引航空券がオンラインで買える。変更やキャンセルもできる。アリペイなどのオンライン決済なら払い戻しもほぼ瞬時に処理されるので便利。

 中国で出張や旅行をしようとすれば、パッケージツアーは別として、個人なら大半はスマホアプリのお世話になるだろう。今回、私が使ったのは中国の代表的な旅行アプリ「携程旅行網Ctrip(シートリップ)」である。これが実に進化していて、旅がとてもスムーズできるようになっている。

 まずは上海~ハルビンの飛行機を予約する。アプリで出発地や目的地、日程などを入れると、見合う便がズラリと表示される。中国の旅行アプリは航空会社のネットワークと完全に連結しており、スマホアプリ一つで全ての航空会社の全ての便の選択、エコノミー、ファーストクラスなどの選定、座席の指定、購入、キャンセルの払い戻しなどが全てできる。これは基本的に鉄道も同じ。全国の高速鉄道や在来線のチケットがすべて予約購入できる。支払いはもちろんアリペイ(支付宝)やウィチャットペイ(微信支付)で、スマホ一つで済む。

 チケットは航空券の場合、すべて電子化されているので中国人なら国家統一の身分証、外国人ならパスポートがあれば乗れる。高速鉄道の場合、外国人は現時点では予約は可能だが、乗車には事前に駅などで紙の乗車券に変えておく必要がある(まもなく電子化されるとのニュースを聞いた)が、中国国民は身分証をスキャンするだけでそのまま乗れる。

航空券の予約と出迎えの車が連動

 航空機や鉄道と現地の移動手段、宿泊先の予約なども直接連動している。アプリで航空券を購入すると、画面に「空港から街までの移動はどうしますか?」という案内が出てくる。そこではハイヤー風の高級車から通常のセダン、乗り合いのワゴン車、一般のタクシー、路線バスなどさまざまな選択肢があり、その場で予約・チケット購入ができる。アプリは私の到着便を知っているし、アプリでホテルを予約してある場合は、私の行き先も知っているので何も書き込む必要がない。アプリが自動的に私の到着時間に合わせてドライバーを手配、乗り合いの車なら空席の有無を確認したうえでほぼ瞬時に回答してくる。

 こうしておけば、当日、目的地の空港に着陸した途端、運転手さんから電話か、アプリの通信機能でメッセージが来る。私の乗る飛行機が出発地を離陸した時点、そして現地の空港に着陸した時点、それぞれCtripの運転者側のアプリに即座に通知が行くシステムになっている。ドライバーはアプリの決めたフォーマット通りに私のところに連絡すればよい。だから仮に飛行機が遅れても私は何も心配がない。

空港の白タクは壊滅状態

 以前、中国の国内移動は大変だった。中でも空港~市内の移動は頭痛のタネで、到着ロビーを出れば外は白タクの運転手が雲霞の如く待ち受けていて、客の奪い合いを演じる。しかたなく中の1人と値段交渉し車に乗ると、広東省の某空港で実際に経験した話だが、客を奪われた他の運転手が腹いせに仲間と徒党を組んで私が乗った車の前後をふさいで空港から出させないという「事件」もあった。いい迷惑である。

アプリ経由で予約し、空港に迎えに来てくれた運転手さん。搭乗便が着陸したらすぐに電話がかかってきた。

 それが今では着陸と同時に「田中先生、到着ロビーを出て正面の横断歩道をわたって、〇番の柱のところに行きます」と連絡が入るのだから、まさに隔世の感である。迎えに来る車の車名や色、ナンバー、運転者の氏名、携帯番号は事前に通知されるので安心だ。たまに情報と違うドライバーがやってきて「弟なんだけど、用事ができちゃってさ。ごめんね」とかいうこともあるのはご愛嬌だが、だいたいは大丈夫である。

 そんなことで空港の白タクは壊滅状態だ。以前、空港といえばタクシー待ちの長い列ができるのが当たり前だったが、最近は多くの人が出迎えの車を予約していて、経済的に行きたい人はさっさとバスや地下鉄に乗るので、空港の混乱状態はめっきり減り、静かになった。

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