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次世代中国 一歩先の大市場を読む

中国物流「無人飛行機三段階戦略」の衝撃
「大きさ」を前提に進化する中国社会の論理

2017年12月21日

 中国の物流業界で急速な技術革新が進んでいる。減速気味とはいえ年率6%超で成長する社会を支えるのは巨大な物流網だ。輸送手段は急速に高度化しており、大量の自社貨物機による航空輸送をはじめ、自社専用のハブ空港建設、大型無人輸送機の開発、さらには高速鉄道(中国版新幹線)を活用した都市間即日配送サービスなどスケールの大きな独自の手法が次々と登場している。

 その根底にあるのは、日本の25倍の国土に10倍以上の人口という中国の抱える「宿命」である。巨大な社会が発展するためには、その身体の大きさに見合った仕組みが必要だ。国が持って生まれたこの条件に、どのように向き合い、いかにして解決するか。中国の企業家たちは、すべてこの前提から出発する。そして、当然ながらそこには大きな商売のチャンスがある。

 物流に限らず中国では近年、ITを活用した独自のシステムや商品、サービスが世界に先駆けて続々と生まれている。その大胆な発想を生む土壌は、中国のこの「宿命」にあると私は思う。中国の物流ネットワークの進化を題材に、そんなことを考えてみた。

湖北省の小都市を「中国のメンフィスにする」

 中国の宅配便業界で圧倒的なNo.1の位置を占める順豊速運(SHUN FENG Express、略称SF、本社・広東省深圳市)は今年12月初め、湖北省鄂州(がくしゅう)市に中国国内輸送のハブとなる自社専用貨物空港の建設を発表した。計画では17年中に着工し、20年に完成の予定だ。「鄂州を中国のメンフィスにする」と記者会見で述べている。メンフィスは米国テネシー州の都市で、世界最大の物流会社フェデックス・コーポレーション(FedEx Corporation)の本拠地である。

 鄂州という街を知っている日本人は少ないだろう。中国の地図を広げればわかるが、鄂州の位置する湖北省は、北京と広州や香港を結ぶ南北の線と、上海と成都や重慶を結ぶ東西の線の交差する位置にある。同社によれば、新設する空港から飛行機で1時間半の圏内で中国の総人口の90%がカバーできる。ここをハブに全土を大量の専用貨物機で結ぶ構想だ。

 現在、SFは自社の専用貨物ジェット機を40機保有している。3年以内に100機の体制にする計画だ。今年11月には、アリババグループのEコマースサイト「タオバオ(淘宝網)」のオークションサイトで、深圳市の裁判所が競売にかけたボーイング747貨物機2着を落札して大きな話題となった。14年に経営破綻した中国の貨物専用航空会社「翡翠航空」の債務整理のために裁判所が出品したもので、落札価格は2機合計で3億2000万元(1元は約17円)。中国の宅配企業としては初のボーイング747貨物機の所有企業となった。

 SFはこの湖北省鄂州空港を拠点に全国数十ヵ所の主要都市との間を貨物専用ジェット機で結び、主要都市近辺なら翌日配達、中小都市や農村部でも全国で翌々日の配達が可能な体制を構築しようとしている。

大型無人輸送機で地方都市をつなぐ

 さらに今年10月、「世界初」と銘打った同社の無人輸送機のデモンストレーションが関係者に公開され、世間の度肝を抜いた。無人機での輸送ではドローンなど小型のものは先例がある。しかし今回、SFが公開したのは中国科学院工程熱物理研究所、航空機メーカーなどと共同開発した大型の無人プロペラ機「AT200」。全長約12m、一度に10m3、1.5トンの荷物を積み、最高時速313kmで8時間の飛行が可能という。

 中国科学院工程熱物理研究所ホームページに試験飛行当日の画像があるので、興味のある方はご参照いただきたい(文章は中国語)。
http://www.iet.cas.cn/xwdt/zhxw/201711/t20171101_4882537.html

 1.5トンあれば宅配便ならかなりの量が積める。しかも最高時速300km超といえば新幹線クラスだ。8時間の飛行が可能なら理論上では往復2000km、片道1000km以上離れた場所まで無人で荷物を運べる。

 上述した全国各地の主要空港から、この無人大型プロペラ機でさらに先の中小都市、町村などの簡易空港や農道空港まで荷物を運ぶ。そしてその先はドローンなどの小型無人機で小さな村落や工場、学校といった目的地まで輸送する。これが同社の描く「三段階航空輸送戦略」である。

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