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2018年09月27日

よりスマートへ、より高いカスタマー・エクスペリエンス提供へ。空港の飽くなき挑戦

 過去10年間で、航空旅客数は大幅に増えた。International Air Traffic Association (国際航空運送協会)によると、2018 年には世界の航空旅客数は44億人に到達すると言われており、2008年の25億人から76%増加すると予想されている。LCC の急増、新興国における中流階級の増加、そして多くの国で実施されたビザ緩和政策が、航空旅客数増の主な要因として挙げられる。特に日本は海外からの航空旅客数が急激に増えた国の一つ。7年前の2011年時点では600万人だった訪日客数が、2017年には2900万人にまで上昇している。日本政府は2020年までに4900万人までその数を増やすという目標を掲げているが、その目標は、「前倒しで達成可能」と言われている。

 一方、旅客数の急増に、対応が追い付いていない空港も多い。

旅客満足度が低下

 増え続ける旅客数に対応できず、一部の空港では満足度が低下している。実際、空港や航空会社に対してのクレーム数は世界中で増えており、航空旅客を巻き込んだ大きな事件はマスコミにも多く取りあげられている。例えば、Canadian Transportation Agency(カナダ旅客輸送機関)によると、カナダの空港で発生した旅客からのクレームの件数は、2013年から2014年の間、1,019件であったのに対し、2017年から2018年の間には5,500件まで上昇している。クレームの主な内容は、フライトの遅延や、荷物の受け取りに関するものであった。

 日本を含め多くの国で、安全で、より良いカスタマー・エクスペリエンスを提供するために、IoT(Internet of Things)や生体認証など導入により、「スマート」な空港になる取り組みがなされている。現在、満足度の高い空港が導入している最新技術やサービスを6つ紹介しよう。

1.チェックイン

 多くの航空会社はスマートフォンを用いたチケットシステムを提供しているが、満足度の高い航空会社のそれははるかに早く、安全で便利だ。例えば、Delta Airlines(デルタ航空)は、Hartsfield-Jackson Atlanta International Airport(ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港)で生体確認チェックインターミナルを使用している。国際線を利用している旅客は、顔面認証システムでチェックインができ、セキュリティゲートを通って航空機まで搭乗できる。

2.スタッフスケジューリングソフトウェア(従業員のスケジュール管理システム)

 空港スタッフのスケジューリングがうまくいかず、飛行機が遅れるケースは意外と多い。目まぐるしく状況が変わる中、乗組員とグランドスタッフが最新の情報を入手できない、空港スタッフの配置が最適化されていない結果、遅延が発生する。この問題を解決するために、一部の最先端の航空会社は常にスタッフが最新の情報をスマートデバイスで追えるようにしている。最近であれば、Singapore Airlines(シンガポール航空)やeasyJet(イージージェット)などがこの技術を導入している。

3.スタッフ向けウェアラブルデバイス

 ウェアラブルデバイスも導入されている。Cincinnati/Northern Kentucky International Airport(シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港)では、トイレにセンサーを付け、人の出入りを感知するシステムを導入。清掃員のウェアラブルデバイス(スマートウォッチ)に人の出入りが多いトイレの情報が届き、優先的に清掃するのだ。

4.IoT キューイングシステム(待ち行列管理)

 待ち行列管理やオペレーションの最適化のため、IoTが導入されている。イギリスの Birmingham Airport(バーミンガム空港)などは、人の動きを感知するセンサーを取り付け(匿名)、チェックインやセキュリティゲートでのおおよその待ち時間を表示する。このデータを利用し、混雑が予想される窓口に、いち早くスタッフを増員することができる。

5.IoT バゲージトラッキング(手荷物の追跡)

 バゲージロストは旅客の大きな不満の一つ。ここでもIoTが活用されている。Wi-FiやBluetooth、RFID(Radio Frequency Identifier) やLPWA(Low Power, Wide Area) などの技術で荷物を追跡し、紛失した荷物を素早く見つけることができる。Gatwick Airport(ロンドン・ガトウィック空港)のバゲージロスト追跡技術は、業界最高レベルだ。

6.生体認証による高いセキュリティチェック

 生体認証スキャナは空港の入国審査などで利用されており、すでに高い成果を出しているが、Dulles International Airport(ワシントン・ダレス国際空港)は顔認証システムを入国審査に導入したアメリカで最初の空港のひとつ。システム導入後、3日目には偽造のパスポートを使っていた旅客がシステムにより発見、拘束されるなど、スマートな入出国だけでなく、犯罪捜査にも有効だ。

1 電波をエネルギー源として動作するタグ(RFタグ)のデータを読み書きするシステム

2 消費電力を抑えて遠距離通信のできる通信方式

 一方、最新技術導入では他空港に引けを取らないHeathrow Airport(ロンドン・ヒースロー空港)は、45分の待ち時間が目標として掲げられていたにも関わらず、2018年7月時点で一部の旅客の待ち時間が2時間30分に及んでいた。最新技術だけが空港をスマートにする訳ではない。

 旅客数増加の速度は想像以上に早い。対応するスピードや、様々なトラブルを未然に防ぐ、旅行客の潜在ニーズを把握し高いカスタマー・エクスペリエンスにつなげるための予測技術も重要だ。AI、ビッグデータはますます重要な役割を果たすようになるだろう。より高いカスタマー・エクスペリエンス提供のために、空港は絶え間ないスマート化への変革が求められている。

参考文献

https://www.iata.org/pressroom/facts_figures/fact_sheets/Documents/fact-sheet-industry-facts.pdf

https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph--inbound--travelers--transition

https://www.cbc.ca/news/canada/edmonton/airline-complaints-up-1.4761798

https://www.pymnts.com/news/international/2018/delta-airline-biometric-terminal-atlanta-kiosk-technology-tsa/

https://www.ft.com/content/7e27651e-a6f0-11e8-926a-7342fe5e173f

https://internetofbusiness.com/gatwick-airport-ploughs-15-million-into-new-it-network/

https://www.digitaltrends.com/business/biometrics-flags0man-with-fake-passport-dulles/

https://www.bbc.com/news/uk-45165222

https://mainichi.jp/english/articles/20180818/p2a/00m/0na/002000c

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