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2018年12月20日

若者の心を掴めるか、米大手銀行が提供するミレニアル向けバンキングアプリ PART 2

 皆さんは食費や交通費といった日々の生活費、家賃や携帯電話料金や光熱費といった毎月の支払いなど、どのように管理していますか? 封筒やクリアファイルを使って目的別にお金を分けたり、家計簿アプリ等を利用して管理している方もいるかもしれません。特に一人暮らし・就職や結婚などでライフスタイルが大きく変化する人も多いミレニアル世代は、お金の管理に適したモバイルアプリを1度は探したこともあるのではないでしょうか。

 ここ数年、米銀行はミレニアル世代の顧客獲得に熱心です。その1例として前回の記事では、ミレニアル世代をターゲットとしたJP Morgan Chaseの新たなモバイルアプリ「finn by CHASE(以下、finn)」について紹介しました。今回は米大手銀行のWells Fargoが提供する「greenhouse by Wells Fargo(以下、greenhouse)」の体験レポートです。

greenhouseとは?

画像引用元:greenhouse

 greenhouseはWells Fargoが2017年11月からユーザを限定して試行しているモバイルバンキングアプリです。口座を開設するとデビットカードや送金・ATM利用といった標準的なサービスが利用できる点はfinnと同じで、ATM利用手数料や口座維持手数料も無料です。一方、消費の傾向分析や小額貯金などの機能を有するfinnとはアプローチが異なり、本アプリは日々の買い物や毎月の必要経費等の支払い管理に重点を置いたサービスといえます。

図版作成:筆者
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 greenhouseの開発責任者Peggy Mangotはメディアのインタビューで、”ミレニアル顧客の行動を理解しようと実施した大規模な調査で、多くの人々が独自の工夫でお金を管理していることが分かった”、 ” 彼らは大事な支払いを忘れないようにノートやカレンダーのアプリを使っていた。中には、プリペイドカードや複数の銀行口座を使って日常使いのお金と分けて管理する人もいた。”と述べています。つまり、自分の支出を1箇所で管理(期日管理や支払い処理)する方法を顧客は求めているのではないか、とWells Fargoは考えたのです。

 またBusiness Insiderによると、アメリカでのローンや家賃、公共料金など毎月の請求支払い「Bill Pay Market」は年々増加しており、2017年は3.9兆ドルに上る(1)と見積もられています。人々はこれまで小切手や現金で支払っていましたが、最近では銀行や請求者、金融系スタートアップ(FinTech企業)が提供するアプリを使いオンラインで支払うケースが増えてきています。Bill Pay Marketにおいて、すでに全体の半分ほどがデジタルで支払われておりますが、その割合は2022年までに75%まで増加すると考えられています。ほとんどの銀行はすでに請求支払いの機能を提供しており、こうした支払いのデジタル化の流れは銀行にとって顧客を呼び込むチャンスと考えられます。が、現実には請求者やFinTech企業の攻勢を許してしまっているようです。

 こうした顧客ニーズや時代の変化に応えるようにgreenhouseが作られたと考えられます。

(1) https://www.businessinsider.com/bill-pay-report-2018-5

主な機能

 greenhouseの特徴はすでに述べたとおり、「日々の買い物用のお金」と「家賃や光熱費など毎月の支払い用のお金」を別々に管理する機能です。

画像引用元:greenhouse

 具体的には、サービス利用時にそれぞれの用途に応じて「Spending」と「Set Aside」という2つの口座が作られます。

  • Spending:デビットカードと連携しており、日常の生活費(食費・交通費・交際費など)を支払うための口座
  • Set Aside:ローンや家賃など、各種請求の期日管理・支払いを行う口座

 2つの口座間の資金移動はいつでも簡単に出来ます。また、1週間のSpending口座の予算を決めておくことで、毎週初に足りない分だけSet Aside口座からSpending口座に自動的に補充されます。例えば、1週間の生活費予算が100ドルで、週末時点で5ドル残高がある場合、翌週初には95ドルがSet Aside口座からSpending口座に移されている、というわけです。こうした機能によって、ユーザは都度必要なお金を自分で仕分ける必要がなく、毎週の予算・残高をアプリで確認するだけで済みます。

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 一方でローンや家賃など、各種請求支払いを行うSet Aside口座は、期日管理機能を備えています。期日管理を行う場合、請求の種類(家賃・携帯電話・電気/ガスなど)ごとに、金額・頻度・支払い日を指定します。例えば、「携帯電話料金に$80を毎月の月末日」といった具合に入力していきます。ユーザは、支払予定日が近づいているのにお金が足りない場合、支払予定日を過ぎてしまっている場合など、アプリからアドバイスを受けられます。もちろん、請求者の情報を設定しておくことで、greenhouseアプリからの支払いも可能です。(支払いの設定には別途、請求書のコピーを提出する必要があります。)

 このようにgreenhouseは毎週・毎月の支払い管理を自力で行っていた(かつ、それが煩わしいと感じていた)ユーザにとって、1つの解決策となりえます。そしてJP Morgan Chaseのfinnと同様、greenhouseも継続的な機能追加を明言しており、今後どのような顧客を想定し、どんな機能が追加されていくのか、また、FinTechスタートアップはこうした大手の取り組みにどう対抗していくのか、要注目です。

山口 博司

NEC Corporation of America
Business Development Manager

システムエンジニアとして金融機関向け業務アプリケーション開発・システム企画を経て、2016年6月よりシリコンバレーにて米国発の新技術・サービスの調査、活用の企画・推進に従事。

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