2016年04月27日
地方創生現場を徹底取材「IT風土記」
愛媛発、ICTで水産業活性化、現場で使えるものこそ最新
リスク情報をタイムリーに発信
水域情報は、水産課と愛南漁業協同組合の協力で毎朝ネット上に情報をアップする。海水温や酸素・塩分濃度のほか、赤潮のチェックも重要だ。プランクトンの異常発生で海水が着色する現象だが、きれいな愛南町の海でもほぼ毎年発生する。発生した場合は生簀を避難させ、餌やりを止めるしかない。餌をやった場合、生け簀の魚が死んでしまいやすいからだ。

「海に色がついているとなれば現場に出て採水し、大学と連携して顕微鏡で有害なプランクトンがいるか確認します。いろんな種類のプランクトンがいて専門家でないと区別がつきにくいし、種類も多くて細かい区別や判断が必要になる。大学ではプランクトンの遺伝子で種類を確認するのでまず間違えることはない。有害な場合は町内の漁業従事者に携帯メールで知らせます」と水産課の吉原勇作主事。
昨年夏は愛南町海域のほぼ全域で赤潮が発生した。愛媛県全体で4億円弱の被害が出たのに対し、町の被害額は非常に少なかった。システム導入以来、被害額は減少している。

システムは魚病対策でも威力を発揮している。病気で死んだ魚が出ると漁業者から町の水産課の魚病診断室へ検体が持ち込まれ、町や漁協の職員が病気の有無をチェックする。魚病は水温が上昇する夏場を中心に年1万匹前後も発生する。内臓に細菌が繁殖するエドワジエラ症などは早期に抑えないとどんどん広がってしまう。病気が蔓延しないうちに投薬などの対策を講じれば被害はある程度抑えられる。システムは魚病の発生情報とその対策指示に大いに役立っているのだ。

浦崎さんは「システムは漁業者の使い易さに重点を置いて開発しました。携帯メールを見る作業はみんな普通にしているので、今までFAXで流していた情報をメールで流すようにしただけです。海から疲れて戻ってきてパソコンを打つかというと難しい。せっかくシステムを導入しても使ってもらえないと意味がない。現場で使えてこそ"最新のICT"だと思っています」と話す。