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2016年07月28日

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

沖縄発、「星の島」で動き出す新観光施策とは

八重山全体の利益に

 すべての展示物は多言語対応で英語、韓国語、中国語(北京語と広東語)のタブレット端末と音声ガイダンスを準備して外国人観光客に貸し出す。併せて美ら星ゲートのサービス内容を配信する観光アプリも強化するといった事も検討中だ。

八重山諸島への玄関口・石垣島離島ターミナルビル
ターミナルビル内には離島への高速船のチケット売り場も

 同市の中山義隆市長は「石垣島から、例えば竹富島などに船で渡る人に前情報として見てもらう他、渡らない人にも八重山の星空を知ってもらいたいと考えている。いまはまだ構想段階。これから調査を行い、その結果をみて基本設計をしていく予定です」と話す。

 石垣市と武富島や西表島を有する竹富町、そして与那国町はそれぞれ単独の自治体だが、美ら星ゲートの整備費は石垣市の地方創生事業として賄う方針だ。中山市長は「ほかの島とは弟妹みたいなものだから。観光で離島に渡ったお客さんはほとんど石垣に帰ってくるし、美ら星ゲートは八重山地域全体の利益につながるはずです」と懐が深い。

ICTが埋める地域差

 美ら星ゲート構想整備の背景には光ファイバーケーブルのループ化がある。沖縄県の離島地区情報通信基盤整備推進事業で今年10月までに新たな海底光ケーブル(赤色)が沖縄本島~波照間島まで施設される。これにより多良間島や与那国島が新たにブロードバンド環境を得られるだけではなく、既設の沖縄本島~波照間島までの海底ケーブル(緑色)と接続すれば伝送路がループ化され、自然災害による断線や機器の故障などで経路の一部に障害が発生しても、超高速ブロードバンドが安心して利用できるようになる。結果、美ら星ゲートからの充実した観光情報発信に加え、八重山の医療や教育、防災などの質の向上にも繋がるだろう。

八重山諸島一帯の海底光ケーブル敷設イメージ

 ICTは観光情報を発信するだけでなく地域差を埋めて人の移動を促す可能性もある。中山市長は「ループ化が完成して情報インフラが整えば、東京や大阪でやっているのと同じ事業が石垣でできるようになる。子供たちは高校を卒業すると島を出たがりますが、外で学んだことをここでも活かせる状況になれば、また島に戻ってきて起業してくれるようになるのでは」と期待をかける。そのうえで「ここは開放的な土地柄で、よそから来た人を仲間外れにするようなことがない。地元の商工会にはソーセージ屋さんとかチーズ工房とか新しい人がどんどん入ってきています」とPRにも力を込める。

 石垣生まれの石垣育ちで2期目の任期も半ばを過ぎた49歳の市長はおしまいにこう締めくくった。「観光は平和産業とよく言われる。平和じゃないと観光ができないと言われれば確かにそうだ。だけど観光地で交流することによって相互の理解が深まって平和につながることもあるのではないか。平和だから観光ができるのではなく、観光することによって平和をつくっていく。石垣はこの考え方でいきたい。いろんな国の人たちに来てほしいんです」

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