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2017年05月31日

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

長崎発 「FinTech」は離島活性化の起爆剤となるのか 電子化された地域通貨「しまとく通貨」の挑戦

 特定の地域内に限って通常のお金と同じように使うことができる「地域通貨」。地域の経済やコミュニティーの活性化を期待して全国各地で導入されている。長崎県の壱岐島や五島列島といった離島の自治体が連携し、スマートフォンや携帯電話を使った電子地域通貨「しまとく通貨」の運用をスタートさせた。金券での発行よりも管理が楽で、運営コストが大幅に軽減できるほか、地域経済の活性化に向けて電子化ならではの新しい可能性も生まれているという。ITを活用した金融サービス「FinTech」を活用した地方創生の代表例として注目を集めている。

閑散期限定、スマホにスタンプをポンで決済

 福岡市の北西約80キロの玄界灘に浮かぶ壱岐島は、古代から大陸と日本を結ぶ交通の要衝として長い歴史が刻んできた島だ。『古事記』の国生み神話で誕生した島の一つであり、「邪馬台国」の存在を記した中国の歴史書『魏志倭人伝』にも登場する。島内には、そんな歴史を裏付ける数々の神社や遺跡、豊かな自然に魅せられた観光客が年間50万人以上訪れる。

博多港から高速船で壱岐島までは1時間ほどでたどりつく

 壱岐島の玄関口、郷ノ浦港から2キロほどのところにある「あまごころ壱場(いちば)」は観光客に人気の立ち寄りスポットだ。土産物店品揃えは島内で最大級。地元産品の販売コーナーのほか、地元名産のウニ料理などを堪能できるレストランや世界のウニの標本などを展示したウニの博物館もある。この店も昨年10月から壱岐市などが始めた電子地域通貨「しまとく通貨」を導入した。

 電子地域通貨を使った会計はちょっと風変わりだ。買い物をした観光客は会計の際、スマートフォンの画面を店員に提示する。画面には「しまとくウォレット」が表示されている。すると、店員は電子スタンプを取り出して、スマホの画面にスタンプをポンと押す。

 電子スタンプは、スマホや携帯電話に直接タッチするだけでしまとく通貨を個別に照合し、使用済みとして処理する。スタンプには店舗情報が埋め込まれており、スタンプを押すと、スマホが店舗情報を読み取り、「しまとく通貨」を管理するサーバーに情報が送られるという。

「しまとく通貨」は電子スタンプをスマホに押し当てて会計する

 しまとく通貨は10月~3月の期間限定で販売されている。購入できるのは、島外の観光客だけ。1セット5000円を支払うと1枚1000円のしまとく通貨6枚、6000円分が付与される。約20%のプレミアムがついている計算だ。専用ホームページに個人情報を登録し、島内にある販売所で5000円を支払うと、専用ページにチャージされる。1人当たり最大6セットまで購入が可能できる。

あまごころ本舗の船川勝治専務

 「スマホにスタンプを押すだけで簡単に決済ができるので便利です。スマホを使い慣れた30~40代くらいのお客さまが使われています。土産物売り場では2000~3000円するウニの瓶詰め、レストランでは壱岐牛ステーキや生うに丼など比較的単価の高い商品を購入されるときに利用されるケースが多いですね」と同店を運営する「あままごころ本舗」の船川勝治専務は話してくれた。

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