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2017年03月14日

未来企業共創プログラム 開催レポート

破壊的イノベーションはどのようにして起こるのか?

※未来企業共創プログラムは、一般社団法人企業間フューチャーセンターの主催、株式会社岡村製作所・大成建設株式会社・日本電気株式会社の共催イベントです。

過去の経験が通用しない、不確実で未知の変化が起きる時代に

 経営環境が激動する今、どのようなマインドを持つべきなのでしょうか。「経営マインド」「イノベーション」「新しい関係性」という3つの切り口で新しいリーダーシップのあり方を「未来企業共創プログラム」では模索します。

 その第2回を2017年1月24日に開催しました。テーマは「破壊的イノベーション」。ゲストスピーカーには、写真フィルムメーカーから化粧品という未知の領域にドラスティックに進出し成功を収めた富士フイルム株式会社から中村善貞氏、今やグローバル企業として次々と新しいコンセプト・技術の自動車を投入し続けている日産自動車株式会社から齋藤裕氏をお迎えし、インスピレーショントーク。その後、モデレーターに慶應義塾大学特任教授 岩本隆氏を据えてのパネルディスカッションとテーブルダイアログを行いました。

富士フイルム第二の創業 化粧品事業の立ち上げ

 化粧品事業の立ち上げに携わり、大きな社会的インパクトを与えることに貢献した富士フイルム株式会社R&D統括本部先端コア技術研究所副所長であり、経営企画本部イノベーション戦略企画部技術マネジャーの中村善貞氏。同社の化粧品は、一見まったく新しいもののように見えて、その実、技術の展開やコンセプトを入念に踏まえたうえで成立しており、その背景を紹介してくださいました。

富士フイルム株式会社 R&D統括本部先端コア技術研究所 副所長
経営企画本部 イノベーション戦略企画部 技術マネジャー
中村 善貞氏

中村氏:
 写真フィルムの売上は、デジタル化により2000年をピークに減少し、年率最大30%減という急激な勢いでシュリンクしていました。これは会社存亡の危機。そこで「第二の創業」へと進んでいくことになります。第二の創業は「構造改革」「連結経営の強化」「新たな成長戦略」を三本柱にしており、イノベーションは「新たな成長戦略」のカギでした。富士フイルムでは「既存技術・新規技術×既存市場・新規市場」の4象限マトリクスで技術の棚卸しをして、新規事業の開発に取り組みました。また、新規事業領域は、「やるべきこと」(顧客のニーズ)、「できること」(技術)、「やりたいこと」(モチベーション)の3つが重なりあったところと定義しています。そして、個人的にもうひとつの要件だと思うのが「なるほど」です。「なるほど、富士フイルムだ」と納得されるものでないと顧客に支援していただけない。このようにして定義した新規事業領域がヘルスケアでした。経営理念に「健康増進」という言葉が入っており、目指すべき会社の姿を「トータルヘルスケアカンパニー」と決めて「ヘルスケアやるぞ!」と言い出したのが戸田雄三副社長でした。まず「俺がやりたい」と言い出したうえに、この人が“曲げない”タイプだったので、それに引っ張られたというか、騙されて(笑)、そのおかげで新しい事業を展開できました。

 しかし、いきなり化粧品事業を単独で立ち上げるのは無理です。経営陣に、期待を大きく抱いてもらうと同時にリスクも共有し、コミットメントしてもらわないといけない。大切なのは、大きな絵を描くということ。共感の得られる、大きな事業戦略を描き、ロードマップをしっかりと描く。そして、その最初のステップは確実性の高いものを設定する。化粧品も大きな目標の第一歩としてスタートさせたから許容してもらえました。ポイントは近接(技術)領域で始めること。化粧品の場合、写真フィルムで培った共通の乳化分散技術があって、そこからスタートしています。そして、初期投資を最小限に抑えること。そのために自社にこだわることなく、外部の力も活用しました。つまり、顧客との価値共創、提携相手との価値協創です。

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