SPORTEC 2018 フィジカルチェックシステム出展レポート
3Dセンサで、スポーツによるケガを「自分で」防ぐ!
「SPORTEC2018」(2018年7月25日~27日・東京ビッグサイト)に出展したNECの新事業「フィジカルチェックシステム」について、当日の会場内での様子とともに、開発担当者二人の本システムにかける熱い想いを紹介する。
フィジカルチェックとは、一人ひとりのフィジカルコンディション(柔軟性や筋力)を計測・評価し、ケガの予防・パフォーマンスの向上を促す活動。フィジカルコンディションの悪化はパフォーマンスの低下やケガのリスク上昇要因となるため、フィジカルチェックは欠かせない。その一方で、計測・評価にはアスレティックトレーナーや理学療法士が必要、かつ時間もかかるため、気軽に行うことができない。
そういった現状と、何よりも開発者自身の経験や想いもあり、3Dセンサなどを活用し、誰でも簡単にフィジカルコンディショニングを行うことができる「フィジカルチェックシステム」の開発に至った。
SUMMARY サマリー
誰でも、早く、簡単に
フィジカルチェックシステムは、3Dセンサカメラの前に立ち、測りたい姿勢を取るだけで、関節可動域・距離を簡単に計測できる仕組み。画面で自身の姿勢を確認しながら計測することができるほか、計測後には、画面に計測結果が表示され、自身の可動域の最大値とリアルタイムの計測値を一目で把握することもできる。
そして、計測データはスマートフォンアプリと連動し、すぐにアプリ上に計測結果が反映される。実際に計測した可動域を数値で把握できるほか、その可動域がどのような状態なのか3段階評価で分かりやすく表示。自分の「今」のフィジカルコンディションを知ることができるのだ。
状態の3段階評価とは、ピンク色の笑顔マーク(良い状態)、黄色の普通マーク(許容範囲の状態)、青色の残念マーク(改善を要する状態)である。状態表示が黄色もしくは青色マークの場合には、改善のためのトレーニング動画が紹介される。黄色の場合は、トレーニングでより良い状態にするため、そして青色の場合は、いつ痛みが発生してもおかしくない状態であり、少しでも改善を促すためである。それも、自宅などどこでも簡単に実施できるトレーニング動画を紹介することで、動画を手本に自分で状態改善に取り組めるようにしている。
たとえば野球の右利き投手であれば、左肩と比べて投球する右肩の関節の可動域が悪いなど、左右のずれが生じているとその分、ケガをするリスクが高まる。そこで、誰でも・早く・簡単に関節の可動域を計測し、状態の悪い関節を把握。そして早めにトレーニングなどで対処し、可動域の左右差を少なくすることで、自分自身で痛みやケガから守ることができるようになるのだ。
フィジカルチェックを多くの人に広めたい―開発者たちの想い
会場ブースにて、フィジカルチェックシステムの共同研究を行う法政大学大学院の佐藤 祐輔氏と、NECの織戸 英佑にインタビュー。当システムの開発を共に手掛けることに至ったきっかけや、今後の意気込みについて聞いた。
二人が出会ったのは、スポーツ専門整形外科。佐藤氏は理学療法士として、野球による肩の痛みで通院する織戸のリハビリを担当していたという。
「リハビリに励む織戸さんには、本当はケガをする前が大切だとお話ししました。そのことを織戸さんに共感していただいたのと、ケガをしない身体について興味を持っている織戸さんの姿に感心したのもあり、ケガをしない身体づくりについてお互いに情報交換をするようになりました。私が、とある少年野球チームでフィジカルチェックを行っているという話をしたとき、織戸さんから、自身がコーチを務める少年野球チームでも子どもたちのケガ予防が課題だと聞き、織戸さんの依頼もあってそのチームでも子どもたちのフィジカルチェックを行いました」
しかし佐藤氏は、既存のフィジカルチェックを継続していくには限界があると感じていた。そんな時、織戸から「IT技術を使えば誰でも簡単にフィジカルチェックができるようになるかもしれない」と提案を受け、佐藤氏は次のような想いでフィジカルチェックシステムの共同開発に参画したと語る。
「フィジカルチェックは、スポーツをする者にとっては必要な、良い取り組みです。しかし、既存のフィジカルチェックでは、複数の専門家による計測・分析が必要で時間も非常にかかります。また、ボランティアとして取り組むにも、フィジカルチェックを多くの人に広めたいと思う反面、理学療法士という本職との両立に時間的にも体力的にも限界がありました。この取り組みを継続するためには、ビジネス化しなくてはいけない。ビジネス化すれば、持続的にフィジカルチェックを広められるのではないか。そんな想いもあり、織戸さんからフィジカルチェックシステムの開発の話を受けた時、とても前向きな気持ちでした」
そして、佐藤氏が理学療法士のかたわら、法政大学大学院に進学したこともあり、法政大学スポーツ健康学研究科/スポーツ健康学部 泉教授の支援のもと、彼らは当システムの開発を始めた。
織戸はSPORTEC2018での出展を通じ、フィジカルチェックシステムへのさらなる想いを語る。
「フィジカルチェックシステムは、世の中に、そして何よりもスポーツに関わる人々にとって必要な仕組みだと信じています。今回、初めて当システムを参考出展しましたが、実際にブースに立ち寄られた多くの方々に、当システムの必要性に共感していただき、われわれとしても自信につながっています。このフィジカルチェックシステムを、価値あるものにしていきたい。そう思っています」
開発担当者の一人・NEC織戸が語る、フィジカルチェックシステム開発に込めた想いや背景について、別記事にて詳しくご紹介しております。