NEC iEXPO KANSAI 2019
「つなぐ」イノベーションが社会を変える
産業の枠を超えたデジタル革新
デジタル活用は、私たちの暮らしに新たな価値をもたらします。その価値を社会課題の解決や安全・安心で快適な街づくりにつなげていくためには、各業界や産業および企業のビジネスプロセスの高度化だけでなく、それらの融合や連携が欠かせません。では、今までつながっていなかった人やモノ・プロセスが産業の枠を超えてつながると、どんなことが実現するのでしょうか。NEC Value Chain Innovation(VCI)のさまざまな事例とともに、それを見ていきます。
デジタル活用で快適になる私たちの暮らし
少し前まではまだまだ未来の話と思っていたモノやコトが、急速なテクノロジーの進化によって現実となり、次々に社会を変え始めていると感じませんか。AIの普及などは、その代表的な例でしょう。もはやAIはSF映画の中のテクノロジーではありません。
このように社会課題の解決やビジネス変革を目指す上で、近年、重要なキーワードとなっているのが「デジタル活用」です。社会やビジネスの中で、さまざまなデジタル活用が行われ、多くの変化が起こっています。
例えば日本では、今年、来年と大きなスポーツイベントが控えていますが、スポーツ観戦旅行を例に取ると、こんな変化が起こっています。
空港では、最初のチェックインの際に、顔情報、パスポート情報、搭乗便情報などをひも付け登録すれば、その後の保安検査場の入り口、搭乗ゲートなどでは、パスポートや搭乗券を何度も提示することなく、顔認証だけでスムーズに通過することができます。
さらに現地に着いてもスタジアムには顔認証で入場。予約席までは手元のスマートフォンのアプリがわかりやすく誘導してくれます。熱戦の模様はスマートフォンで何度も繰り返し見ることができ、ライブの興奮をさらに盛り上げてくれます。飲み物や食べ物も手元のスマートフォンからオーダーすれば、席まで届けてくれます。
スマートな旅はスタジアムの外でも続きます。
せっかくなのでと足を延ばした、その地域のアクティビティ施設への入園、買い物や食事の決済、さらにはホテルへのチェックインなども顔認証で行うことができます。食べる、遊ぶ、寝る。私たちの生活のあらゆるシーンが、デジタルによって高度化されつつあるのです(図1)。
産業の枠を超えたバリューチェーンで新たな価値を生む
このように誰もがデジタルを身近に感じ、その恩恵を受けられる社会づくりを目指す――。NECは、技術の進展とともに新たな価値創出を目指しています。「リアルの世界にあるものや動いているものを見える化し、それをデジタル世界に取り込んで、AIで分析・対処。結果をリアルの世界にフィードバックして、より良い社会づくりに役立てることを目指しています」とNECの吉尾 理は説明します。
そのために事業の柱に据えているのが「NEC Value Chain Innovation(VCI)」です。「人やモノ、プロセスを産業の枠を超えてつなぎ、新しい価値を創出することがVCIのコンセプトです」(吉尾)。
先に紹介した快適でスマートな旅行を実現するキーは、一見、顔認証技術だけのように思えるかもしれません。もちろん顔認証、つまり生体認証は重要な技術ですが、それだけではありません。このような顧客体験の実現に向けては、航空業、スポーツ産業、さらには、ホテル、小売り、外食産業など、これまで個別に存在していた、異なる産業や企業のシステムが有機的に結びつく必要があります。
VCIが目指すのは、まさにこのような融合や連携です。
「NECは、生体認証やAIなど、さまざまな先進技術を開発し、お客様に提供しています。それら先進技術のビジネス実装を進めて、各企業や産業のサプライチェーンの高度化を支援してきました。しかし、個々の企業や産業の効率化や最適化だけではなく、複数の企業や産業をまたがってサプライチェーンがつながれば、さらに大きな可能性が広がるのではないかとも考えました。人々の生活がより快適で便利なものになる。今までにない新しい価値創出につながり、ビジネスチャンスも拡大する。さまざまな業種・業態のお客様のビジネスを支援してきたNECだからこそ、産業の枠を超えたハブになることが可能。そう考えてVCIを推進しています」と吉尾は語ります。
快適なおもてなしが社会課題の解決につながっていく
すでにさまざまな成果も生まれており、和歌山県の南紀白浜地区では、街全体での「IoTおもてなしサービス実証」の実証実験が進んでいます。
これは事前にスマートフォンで顔やクレジットカード情報を登録すると、南紀白浜地区のさまざまなサービスを顔認証だけで利用できるというもの。宿泊先のホテルではカギや財布を持たずに外出し、施設外でもキャッシュレスで食事やショッピングを楽しむ。パンダで全国的にも有名なアドベンチャーワールドも実証に参加しており、チケット購入もキャッシュレス、スムーズに入園できる。まさに先ほど紹介したような新しい旅行体験を実現しています。
また、新しく提供を開始した「Digital KYC」は、NECの顔認証AIエンジン「NeoFace」を活用し、本人確認(KYC)をオンラインで迅速かつ安全に実施できるサービス。さまざまなサービスで必要になる本人確認を代行したり、集約したりすることが可能です。
「スマートフォンアプリに組み込むことで利用でき、生体情報などのデータを端末外部に送信することなく、スマートフォン内でオンライン認証が完結するため、利用者のプライバシーに配慮した安全な本人認証が可能です。金融機関やFinTech事業者をはじめ、さまざまな事業者にご利用いただくことを想定しています」と吉尾は説明します(図2)。
すでにLINE Pay様がこれを採用した「LINE Pay かんたん本人確認」を実現し、セキュアなキャッシュレス決済サービスを提供していますが、今後、Digital KYCサービスが異なるサプライチェーンをつなぐ役割を果たすようになれば、これまでになかった新しいサービス、価値を創出できるはずです。
ほかに省人型店舗の実証実験も推進しています。
「事前登録した顔画像で入店、決済を行えるだけでなく、来店したお客様の年齢や性別にマッチした広告をサイネージに表示します。効率的な店舗運営を実現し、来店したお客様にはストレスフリーで心地よい買い物体験を提供します」(吉尾)
さらに、需要と供給のアンマッチによって発生してしまっている食品廃棄やエネルギーロスを解消するため、生産、流通、小売りなどのサプライチェーンをつなぎ、需給バランスを最適化するといった取り組みも行っています。「深刻化する労働力不足や消費環境の変化など、社会や企業は、今、さまざまな課題に直面しています。VCIを推進することは、私たちの生活を便利にするだけではなく、NECが目指し続けている社会課題の解決にも結びつくものと考えています」と吉尾は主張します。
今後もNECは、最先端のデジタル活用、共創活動を通じて「NEC Value Chain Innovation」による企業や産業の枠を超えた人やモノ、プロセスをつなぎ、持続的な成長と人が豊かに生きる社会を支え、明るい未来づくりに貢献していきます。