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2020年03月23日

AI人材とは?
~世界的に不足する企業競争力の源

 金融や製造業、物流、小売、医療、そして農業まで……。人工知能(AI)の活用分野が急激に広がっています。こうした応用面の広がりに呼応して、「AI人材」の不足が、指摘されるようになりました。

 この記事では、AI人材が必要とされている背景と、AI人材に求められる知識やスキル、その育成を支援する仕組みなどについて解説します。

日本政府は、AI人材を年間25万人育成へ

 経済産業省の2016年度調査「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、ビッグデータ、IoT、AIを担う先端IT人材が、2020年には約4万8000人不足するといいます。なかでも、AIを産業応用できる人材の不足は深刻です。政府は2019年6月21日に閣議決定した「総合イノベーション戦略」のなかで、AIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てる目標を掲げました。

企業競争力の源泉、AI人材は需要先行

 AI人材を求め、育成する動きは日本に限ったことではありません。米国や中国の政府や企業は、AI活用の巧拙が、強いビジネスや豊かな生活、継続的な社会を実現するうえで鍵になると考えています。

 米国企業の間では、熾烈なAI人材の獲得競争が繰り広げられています。例えば、あるIT企業では、データサイエンティストに、日本円で4500万円もの年俸を提示していますが、それでも採用に苦労する状態のようです。ビックデータ分析にAIが欠かせなくなってきていることからも、データサイエンティストがAI人材として認識されるようになりました。さらに、AIのアルゴリズムの提案や標準化を進める研究者となるとその獲得競争は一層激しくなります。特に米中の企業間での競争は激化しており、中国企業が米国で開催されるAI関連学会に通って優秀な学生を獲得する一方で、米国企業が中国にAI技術の研究所を開設してAI研究者を引き入れるといった綱引きが行われています。

いまAI人材が求められる理由

 なぜいまこれほどAI人材が求められているのでしょうか。大きく二つの理由があります。

 一つは、AIによって現在ある多くの仕事が代替、省力化できるようになると予測されているからです。仕事が機械化されれば、仕事の効率を高め、より創造性の高い仕事にリソースを割くことができます。

サステナブルな社会の実現にはAI活用は不可欠

 もう一つは、少子高齢化や地球温暖化、資源の枯渇など、社会問題の解決に、AIが大いに貢献する可能性があるからです。

 例えば、少子高齢化社会で社会活動を維持するためには、高齢者の足となる自動運転車や、社会インフラの状態に常に目配りする自動監視システムなどが欠かせません。これらの実現の鍵を握っているのが、AIです。また、地球温暖化のように、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じる社会問題の全容を把握し、適切な対処法を探し出すためには、AIを活用した膨大なデータ解析が不可欠になります。

求められているAI人材と既存のIT人材の違い

 AI人材は、従来の「IT人材」と何が違うのでしょうか。

 現在のAIは、機械学習やディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術を基にしています。これらの技術の特徴は、膨大なデータを学習することで、AIが自発的に問題の解き方や判断基準を獲得する点にあります。人間は学習の手伝いをするだけで、問題の解き方や判断する際のルールを教え込むことはしません。これに対し、従来のITシステムでは、人間が問題の解き方や判断のルールをプログラムして「情報処理マニュアル」をつくり、システムはそれを粛々と実行するだけです。

活用する側にも、AIリテラシーが求められる

 AIで実現する機能や性能は、学習データ次第で決まるといえます。このため、AIシステムを構築・運用する際には、学習データの質を理解して適切に教え込む、データサイエンスの知識やスキルが欠かせません。

 従来の機械とは適性のある分野が随分違うため、AIを活用する側にも、使いどころを見極めるリテラシーが求められます。こうした状況を反映して、先に挙げた年間25万人のAI人材を育成するという政府目標では、その実現に向けた具体策として、文系や理系を問わずすべての大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に求め、さらに社会人向けの専門課程も設置する方針を掲げています。

AI人材のスキルと能力とは

 AI人材は、それぞれで求められる知識やスキルによって大きく3つに類型化できます。「AI自体を進歩させる人材」「AIを具現化する人材」「AIを活用する人材」です。AI自体を進歩させる人材には、知能情報学、機械学習、自然言語処理、知能ロボティクスなどの知識が、AIを具現化する人材には、現行業務の整理やアイデアを出しAIによって生み出される価値を定義するビジネス力とそれを検証、導入するためにコンピュータ・サイエンスやデータベース、ネットワークなどの知識やスキルが必要です。

AIを活用する人材、まず現場の理解が大前提

 おそらく、最も多くの人が該当するのが、AIを活用する人材だと思います。デジタル社会において基礎的なITリテラシーは誰もが身に付けるべきものとなっています。

 そして、AIシステムを有効活用するためには、AIの処理対象となるデータが生まれる現場を理解していることが大前提になります。例えば、医療現場で活用するためには、検査や診察のデータがどのように扱われているのか、その質と量を知っていないとAIを効果的に活用することはできません。AIそのものの技術に関しては、専門家クラスの深い知識は不要です。

AI人材をどのように育てればよいのか

 AIの活用分野が広がる一方、AI人材を育成できる知識とスキルを持つ講師が少ないのが現状です。特に、ビジネスや現場の知識を持ち、なおかつAI技術についても詳しい講師が不足しています。

 現在、徐々にですが、IT企業によるAI活用講座や大学でのデータサイエンスやAI専門の学科などを開設する動きが出てきている段階です。こうした講座を活用して、知識やスキルを磨くのは、時代の先頭を生きるうえで効果的かもしれません。

まとめ

 AI人材は、従来のIT人材とは、求められる知識やスキルが異なります。ただし、AIだけで構成されているシステムは少なく、ほとんどはAIと従来IT、それぞれの要素を複合的に組み合わせた構成になっています。このため、従来ITの技術に通じている人は、時代の要請に応えるためAI関連の知識とスキルの取得に努めることをお勧めします。

 新規ビジネスの企画や製造業の生産技術の開発などに携わる方は、AI人材へと進化することで、よりよい成果を得る可能性が高まります。質の高いAI人材は、業界・業種を問わず、これからの企業競争力の源泉となることは確実です。

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