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業界横断で生成AIによる業務改革を考える
~放送業界ラウンドテーブル開催レポート~

 2024年6月、NECが初めて放送業界に特化した「NEC BluStellarラウンドテーブル(※)~生成AIで加速させる放送関連業務の改革~」を開催。本イベントは、参加企業同士やNECの戦略コンサルタント・テクノロジストとのディスカッションを通じ、自社の課題解決の糸口を掴んでもらうことを目指した取り組みのひとつだ。

 「各社のDX推進状況や抱えている課題を知りたい。話し合いたい」というお客様からのご要望を多く受け、企業の垣根を越えて話し合える場として実施。

 今回のテーマは、放送関連業務×生成AI。インターネットの普及や急速な技術変化の影響を大きく受ける中、様々な取り組みで日々イノベーションを模索するテレビ局13局が集結し、直面する業界共通の課題と生成AIの活用法を検討した。

  • NEC DXラウンドテーブルは、「 NEC BluStellarラウンドテーブル」に名称変更いたしました。​

オープニング講演
誰もがデジタル変革の担い手になれる生成AIの現在地

【講演者】
NEC コンサルティングサービス事業部門 部門長
エグゼクティブコンサルタント
井出 昌浩
製造業(生産技術の研究開発職)、コンサルティングファームを経て、NEC参画。様々な業界のデジタル活用支援、デジタル人材育成に従事。デジタル活用に関して、セミナーの講演、雑誌寄稿、国際会議・海外大学での講演などを行う。コンサルティングサービス事業部門のリードを担当。

 冒頭はNECコンサルティングサービス事業部門の井出より、DXにおけるビジネスの変化を共有するオープニング講演が行われた。

 大規模なデータ分析によって課題の根本的な原因を発見し、新たなサービスへ昇華させた製造業・音楽業界の成功事例や、生成AI活用に関する動向を紹介。

 井出は、近年の生成AIがより簡単なインプットで質の高いアウトプットを出せるようになったとして、生成AIの現在地について「企業DXが業務のデジタル化の枠を超え、アイデアさえあれば誰でも変革を実現できる段階にきている。生成AIを単発のものとして扱うのではなく、人との連携を前提として取り扱うことが重要。」と語った。

日本テレビが進める生成AIプロジェクト
「FACTly-Mate」による変革

【講演者】
日本テレビ放送網株式会社 DX推進局 データ戦略部 リードスペシャリスト
川越 五郎氏
大学を卒業後、インターネットサービス企業でプログラム開発・設計・要件定義に携わったあと、ネット企業での売上・KPI管理などを経て、2013年に日本テレビへ入社。技術担当として「日テレ無料」や「TVer」の立ち上げ、動画配信プラットフォームシステム開発などを経て、現在はDX推進局データ戦略部で全社のデータ活用を推進中。

 オープニング講演後は会場を移してワークショップを開始。放送業界における先進的な生成AI事例の紹介として、日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビ)のDX推進局データ戦略部 リードスペシャリストである川越五郎氏がご登壇。川越氏は、国内最大級の無料配信動画サービス「TVer」の立ち上げにも関わり、テレビ業界が横断で取組める改革を第一線で進めているおひとり。

 今回、日本テレビが開発した社内向けチャットボット「Mate-Chat」の事例をあげつつ、生成AIプロジェクト「FACTly-Mate」の構想の経緯や、実現を目指す活用ビジョンを惜しみなく紹介。講演では、準備段階から10以上の部門との連携・150人を超える規模の勉強会などを行い、個社で変革する厳しさを実感した、というお話もあった。

 最後は各社に向けて、改めて業界全体で継続的に連携していきたい思いを伝えた。

NEC開発の生成AI 「cotomi」の持つ可能性

【講演者】
NEC 生成AI事業開発統括部  クリエイティブリード
世良 拓也
データサイエンティストとして自然言語処理を用いた仮説検証、システム構築支援等に従事。
ANDCHESTRA等のAI応用事例の創出にも注力。 2023年より生成AIを専門としたクリエイティブリードとしてNEC全体の事業を推進。

 続いて、生成AI事業開発統括部の世良より、企業内の生成AI基盤構築に関してNEC開発の生成AI「cotomi」の実演と、ユースケースを紹介。

 NEC開発の生成AI「cotomi」は、世界トップクラスの生成AIと比べても非常に高速に挙動し、かつ高精度なLLM(大規模言語モデル)であり、機微なデータの使用や、チューニングによる更なる業務特化も可能であることを説明。具体的な業務への適用に関心を集めた。

 生成AIの可能性を示し、メディア業界ではどのような業務効率化・活用が考えられるか参加者に問いかけインプットセッションを締めくくった。

同業界の本音ディスカッション!
個社の課題からの発見と共感

【全体ファシリテーター】
NEC 戦略・デザインコンサルティング統括部 フューチャークリエイションデザイングループ グループ長
町田 正史
NEC以前に事業責任者として北米にてベビーブーマー向けサービスを立ち上げる。Human-Centered Designをコアケイパビリティとし、アジャイル検証のリードを得意とする。現在はデザインシンキング・リーンスタートアップ・アジャイル開発を得意とするデザインチームを率いている。

 生成AIに関して、取り組み事例、最新動向から具体まで幅広いインプットが行われた後は、いよいよディスカッションを実施。4つのグループに分かれ、生成AI活用のアイデアと、活用に向けての課題をグループ内で出しあっていく。

 同じ放送業界だからこそ、前置き無しに率直かつ高度なレベルで会話が進む。制作や事務、営業など様々な担当領域のメンバーによって異なる視点で意見が交わされ、1枚の付箋に書かれた意見から議論のテーマや知見の幅が広がっていった。

 専門用語が飛び交い、意見が広がり続ける中、NECコンサルタント・テクノロジストがファシリテーターとして意見をまとめたり、つながりを整理したりして、少しずつ議論のフェーズを高めていく。

 ディスカッション時間が半ばを過ぎるころには、系列局の垣根を超え、多くの参加者が立ち上がりながら議論を白熱させていた。

最終発表!見えてきた業界共通の課題と改革への機運

【ファシリテーター/トークセッションアドバイザー】
NEC アナリティクスコンサルティング統括部 統括部長
孝忠 大輔
流通・サービス業を中心に分析コンサルティングを提供。NECグループのAI人材育成を統括するAI人材育成センターのセンター長、お客様向けAI人材育成「NECアカデミー for AI」の学長を務め、2024年よりアナリティクスコンサルティングを統括。

 ディスカッション後は、各グループでまとめた内容を全体へ発表。多くの参加者がうなずくような本質的な課題から、歓声がこぼれる実用性の高い活用案まで多くのアイデアが取り上げられた。

 その後、発表内容からより重要な課題・意見を集約し、各グループの代表者4名によるトークセッションを実施。

 「”本業”であるコンテンツ制作に集中するため、まずはバックオフィス業務の効率化を進めたい」という共通的な意見から、「いずれは効率化のみではなく、驚くような制作物を簡単に作れるなど、生成AIをもっと夢のあることに使いたい。」といった、生成AIの発展へ期待する意見もあった。

 イベント終了後は、他社同士で今回出た話について具体的な打ち合わせの約束を取り付け合うなど、各社は次のステップへとすでに動き始めていた。

振り返り ~ご参加者様コメント~

日本テレビ放送網株式会社 DX推進局データ戦略部
リードスペシャリスト 川越 五郎氏
主任 辻 理奈氏

川越氏:「生成AI」をテーマに放送業界で集まったのはおそらく初めてのことでした。情シス関連や共同プロジェクトの進捗に関して集まることはありますが、ブレスト形式で話し合える場は貴重でありがたかったです。また今回出た課題やテーマについて、他社と改めて打ち合わせしてやっていく話もできて、現実的に一歩進むことができるきっかけになりました。

辻氏:同業者だけで集まれたことで、ドメインに特化した深い話ができ、より実用的な発見を得られました。また各社の生成AIの推進状況に関わらず、参加者が誰も取り残されない活発な議論の場になっていました。このイベントが業界全体のイノベーション推進のきっかけになるとよいなと思います。

  • 日本テレビのお二人には、昨年度の「DXラウンドテーブル データドリブン経営編」へご参加いただいた際に「メディア業界だけで深い議論をしたい」というリクエストを頂戴し、当日のご講演ならびに企画検討など今回の開催実現に多くのご支援をいただきました。

<その他 参加者からのアンケートコメント>

  • 元々感じていた課題をみんなで確認できたことで、業界横断で解決できることが見えました。
  • 少しずつジャンルが違うメンバーで課題を出して、みんなの共通解になりそうなAIの筋が見えた気がします。
  • 事業会社として技術を自ら実践&様々な業界と共創しているNECだからこそのコメントもあり、気付きを得られました。

振り返り ~NEC登壇者コメント~

世良:本イベントのように業界共通の課題や新しい技術に対して思うところを、ディスカッションできる場というのは、課題解決を提案する立場のNECにも貴重な機会でした。今回、技術の探求をすごく熱心にされていて自分の中の取り組みや悩みをシェアすることに前向きな方が多く、技術についても熱く語り合うことができていち技術者としても楽しかったです。

 もっとお客様とラフに対話できる機会を増やして、本音で悩みや課題を吐露し合える関係性を構築しながら、一緒にソリューションやサービスを創っていきたいと感じました。

町田:全体を通して、「横のつながりづくり」と「DXという言葉が独り歩きしている現状の改善」という二つの大きな課題感があり、業務の効率化とコンテンツのクオリティUPの両側面からいかに貢献できるかを考えるきっかけになりました。

 今回のイベントで改めて、ティーチング的に最適解を提示することは一時的なコンサルティングにすぎず、コーチング的に「問い」を設定して、共感が生まれるような課題解決をお客様と共に考えることが重要だと感じました。従来のコンサルティングの枠を超えて、業界と個社の触媒となるような、コンサルティングとテクノロジー両軸を持つNECにしか担えない存在を目指していきたいです。

孝忠:様々な業種の人たちが集まり、技術的な話だけでなく業務に落とし込むところまで議論できたからこそ、実現性のある意見が多く出たと思います。データを分析するだけなく、ドメイン知識があり業界に精通した人たちと連携してデータを業務に組み込んでいく。そこまでいけないと価値に繋がらないことを改めて実感しました。

 複数の分野の専門家たちがそれぞれの強みを掛け算し、有機的に連続させて価値を生み出すのは、NECの強みでもあります。今後も技術と業務の両面からお客様を支えていきたいです。

井出:今回のイベントは直接的な答えを提案するのではなく、「ハラオチ感」と「対話感」が重要となる場でした。そこでNECが「触媒」的な立ち位置で問いを投げかけられたことがありがたかったです。

 どの業界においても事業拡大は難しくなっていく中で、今回のイベントは業界の共通項をみんなで分かり合えるひとつのきっかけになるかもしれません。こういった取り組みを通して、「言われたことをやる企業」ではなく「パートナーとして提案する企業」としてNECの立ち位置を確立させていきたいと強く感じました。

 2024年5月、NECは従来から進めてきたDXの取り組みを強化し、125年の歴史で培った先端テクノロジーを集約した新ブランド「BluStellar(ブルーステラ)」※を発表。

 その構成要素として重要な役割を果たすのが、今回のファシリテータを務めたメンバーが提供する戦略コンサルティング。それぞれのお客様と向き合い、伴走しながら、共にDXの成功を目指す。

 お客様が、未来を描くためのきっかけや気付きを得られる場として、「BluStellarラウンドテーブル」は進化し続けていく。

  • BluStellar:実績に裏打ちされた業種横断の先進的な知見と長年の開発・運用で研ぎ澄まされたNECの最先端テクノロジーにより、ビジネスモデルの変革を実現し、社会課題とお客様の経営課題を解決に導く価値創造モデル。