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2022年02月28日

Forbes JAPAN BrandVoice 2022年1月27日掲載記事より転載

UXの本質を見極め、“未来の共感”を得よう
~Forbes100「Excellence For Experience UX Innovation」

 Forbes Japanが2021年に取り上げてきた「今年の100人」にフォーカスし、2021年12月20日から12月23日まで4日間連続で配信されたバーチャルカンファレンス「Forbes Japan100」。

 ここでは、未来に向けたビジネスの成長に必須なデジタル活用と、その実装におけるUX、CXの重要性についてセッションを展開した「Excellence For Experience. UX Innovation Talk」の内容を紹介する。

 登壇したのは、経営共創基盤の共同経営者で北欧・バルトのスタートアップ投資に携わってきた塩野 誠、ギフトプラットフォーム「TANP」を運営するGracia代表取締役/CEOの斎藤拓泰、「愛される会社」のデザインを手がけているKESIKIパートナーの石川俊祐、NECでデジタル技術を活用した新規事業開発や社会課題解決に取り組んでいる NEC デジタルインテグレーション本部 本部長の岩田太地の4名。

 「なぜいま、UXが重要視されているのか」「UXの本質とは何か」との根源的なテーマへ意欲的に向き合っていった。

UXの重要性を高めたのは加速するデジタル化

 ビジネスシーンでDX(デジタルトランスフォーメーション)がバズワード化する中で、UX(ユーザーエクスペリエンス)やCX(カスタマーエクスペリエンス)、つまり顧客の体験価値をいかに高めていくかが問われるようになってきている。

 「“三方よし”がずっと謳われてきた日本において、UXやCXはある種当たり前のコンセプトだと思います。なのに、なぜいま重要視されるようになってきたのでしょう。DX時代になって何が変わったのでしょうか」

 MC/モデレーターを務めるForbes JAPAN WEB編集長の谷本有香による問題提起に、まず反応したのはKESIKIの石川だった。

 「いままでの顧客体験は、それこそレストランや旅館といった空間で、自然に他者への共感が育まれる中で生まれていたのだと思います。ところが、事業者の規模が大きくなることで、客観的な評価を軸に意思決定がなされることになり、共感が薄れてきたのではないでしょうか。そのうえで、デジタル時代になると、さらに人が不在になりがちですので、体験をきちんと描くことの重要性が着目されるようになってきたのでしょう」

KESIKI Inc.Partner Design Innovation / 多摩美術大学TCL 特任准教授・プログラムディレクター 石川俊祐

 この意見を受けてGraciaの斎藤は、BtoCのプラットフォーム運営者として、エンドユーザーの目線からUXの価値の変遷に言及する。

 「従来、モノを買うにはリアル店舗に足を運ぶ必要がありました。しかも選択肢が限られていたのです。しかしいまは、どこにいてもさまざまなモノが買えるようになって、それが良い体験ではなく当たり前になってしまいました。そうなると、お客様にとって最高の体験とは何かを考えざるを得なくなりますし、この課題を解決しないと日本はいま以上に進化できないのではないかと思います」

株式会社Gracia 代表取締役/CEO 斎藤拓泰

 トランスフォーメーションという切り口から、UXが重要視される理由を読み解いたのはNECの岩田だ。

 「DXという言葉を聞かない日はないくらいですが、トランスフォーメーションをしなければならない理由を問うことが重要だと思います。では、なぜ変わらなくてはならないのか。やはり、社会が複雑多様化してきた中で、『これをどれだけ作れば売れる』という従来の体験不在型の方程式が通用しなくなってきているからではないでしょうか」

NEC デジタルインテグレーション本部 本部長 岩田太地

 そう指摘しながら、岩田はNECがビジネスの成長と未来にむけて大切にしている3つのポイントを説明した。

 「だからこそ、NECはまず体験を重視したいと思っています。より良い顧客体験をお届けすると同時に、社員の働きがいにつながる体験も追及することが、未来創りの起点になると思っています。また、こういった体験を通じた共感を軸に、デジタル技術を活用して組織知を拡張したり、1社だけで解決できない社会課題に対して積極的な企業間連携を図っていくことが、課題解決・社会的価値創造に結びついていくのではないかと思うのです」

 「この未来が、お金で測れる豊かさだけでなく、いわゆるESGやSDGs のような非財務的指標で測る必要がでてきたことも、UXが重要視されるようになった理由だと思います」と岩田は続けた。「体験を通して、“未来の共感”が得られるからこそ、UXの本質を見極め、重視していく必要がでてきたのでしょう」

 そう岩田が述べるように、時代の変化とともに変わる価値観。そこにアジャストしていくには、まず取り組む側も経験するべきだと経営共創基盤の塩野は話す。

 「ITベンダーの経営者がリモート会議を自らセットして『ウチの製品は全然使えないじゃないか』と言った話もあるように、やはり自分で経験しないとわかりません。私自身、フィンランドにいたとき、スタッフが全員6時にいなくなってしまうことに戸惑いましたが、『なぜこんなに早く帰るのか』とその背景に着目すると納得できます。そのあたりを経営トップが理解し、言葉は悪いですがいわば“独裁的な憲法”をつくって現場でチューニングしていくほうが勝ち筋なのではないでしょうか」

株式会社経営共創基盤 共同経営者 塩野 誠

“出島戦略”がUX向上に有効な理由

 では、実際にUXやCXといった顧客体験を向上するにはどうすればいいのか。「今まで良い体験を提供できていたと思っていたものが、新たな時代になれば違ってくるかもしれない。新たにUX、CXを変えていく際に何からはじめればいいのか」というForbes JAPANの谷本の問いに対し、Graciaの斎藤は次のように話した。

 「デジタルとリアルは対極に見られがちですが、実は顔が見えるか見えないかだけの違いです。日本の“おもてなし”がなぜ世界でも評価されるか。それは、経営者が現場でお客様の顔を一人ひとり見て、より良いサービスや製品を生み出してきたからだと思うのです。デジタルでも、ネットの向こう側にお客様の顔を想像して良い体験を提供していくと考えるだけで違うのではないでしょうか」

 岩田はNECの取り組みを紹介しつつ、「数字と“パワーポイント”の企画書だけで意思決定すると、UXは向上しにくい」と説明した。

 「NECは、ホテルに顔認証を用いて非接触(タッチレス)でチェックインできるソリューションをご提供しています。この価値をパワーポイントに数字や図式だけで表現すると、『従業員が24時間365日常駐しなくてもいい』ということになりますが、実はそれ以外のUXのほうが重要なのです。従業員は常にフロントに立って待ち続ける必要がなくなりますし、お客様はチェックイン待ちの列に並ぶ苦痛から解放されます。しかもデジタルでパーソナライズされたおもてなしを受けることができるわけです。数字や図式で表現しきれない価値が実現しているわけです」

 その価値を理解するには、提供側が自ら経験しなくてはならない。今後、デジタルとリアルが融合していくからこそ、そのプロセスの重要度が増してくるとの岩田の指摘を受け、Forbes JAPANの谷本は旧来型の組織で対応可能なのかと疑問を呈した。確かに、リーンスタートアップやアジャイルな取り組み、あるいは事業のピポットを可能にしていくことは重要だが、とりわけ規模の大きな企業はそう簡単に変われない。

 「私は“出島”をつくるのが効果的だと思います。そこに自社の人材も外部人材も入れて、新たなものを高速でつくっていく。そうやって意思決定のリードタイムを短くしていくべきです」

 そう反応した経営共創基盤の塩野に、KESIKIの石川も同調する。

 「説得力のあるパワーポイントの企画書を提示したら、なんとなく通ってしまうというやり方が王道になっている中で、“出島戦略”は会社のカルチャーを変えるきっかけになると思います。走り方も意思決定の仕組みも、評価の軸も変えて行く中で、UXを本当に知る現場の人の声を生かすことができます」

 ただ、“出島戦略”で本体と異なるカルチャーができるのはデメリットにも転化しかねない。本体と融和させて社内カルチャー全体を変えるにはどうすればいいか。石川は「全員が創造的になる好機」と受け止め、教育と新規事業創出を担う場所だと位置づけることで、「意思決定のお作法」も変えられるため、多くの企業がチャレンジしているところだと明かした。

「創造力」がUXとEX、企業成長のカギを握る

 これらの議論を受け、NECの岩田は、UX(顧客体験)の追求によって従業員体験(EX、エンプロイーエクスペリエンス)をどう高めていくべきかとテーマを提示した。

 「より良い顧客体験を希求しようとしても、ややもすると『売れればいい』『利益が出ればいい』という発想になりかねません。そうなると、同じように、働きがいも『効率的に働きなさい』という生産性向上に飲み込まれてしまうと感じます」

 岩田がそう発言したのは、NECが従業員体験の向上に力を入れているというのが背景にある。新たな働き方改革として、DX推進とハイブリッドワークへの移行で自律的な働き方を促し、働きがいを向上させる「Smart Work 2.0」を2021年11月から本格展開。2021年5月に発表した「2025中期経営計画」では、戦略と文化の2軸を据え、特に「文化」では2025年度までにエンゲージメントスコア50%を目指している。まさに、KESIKIの石川が提唱する「愛される会社づくり」を全社あげて目指しているのだ。

 「みなさんのお話を聞いて改めて感じたのは、『創造力』がキーとなるということです。創造力を駆使し、て、働くメンバーとお客様、社会という3つのステークホルダーを意識するのは、これからの企業のExcellence(エクセレンス)の1つになると確信しました。いかに最終的に届けたいお客様の顔を想像し、そこへつなげていく仕組みを構築していくかが重要な取り組みになってくると思います」

 この岩田の言葉に、経営共創基盤の塩野は、デジタルの力でそうしたエクセレンスが磨ける時代になってきたと話す。

 「フィンランドに、ありとあらゆる企業の善悪を判断する企業があります。データアルゴリズムの企業ですが、そういうことがデジタル技術でできるようになってきているのです。また、ユーザーの行動をすべて解析し、『どこでこのサービスから離脱したのか』『いつこちらのサービスに乗り換えたのか』をマシンラーニングで見るのも、想像力で補うことが求められます。デジタルデータと想像力の組み合わせは、これから非常に重要になってくると感じますね」

 KESIKIの石川は、そのための具体的な方法として「インサイトを取る」ことの重要性を挙げた。

 「そもそも、共感は非常に難しくて、好き嫌いの感度を開かなくてはなりません。ではなぜ好きなのか、嫌いなのかを言語化し、どうすればその状況を変えられるかを追求していくと、自分なりにイノベーティブな答えがようやく生まれます。データのみに頼ると、逆にニーズやペインは陳腐化したものになりがちですから、愚直にインサイトを追い求めて人を見つめ直したり、世の中を感じたりするべきかもしれません」

 これに対してGraciaの斎藤は、「データからわからないことのほうが多い」と述べる。

 「グローバルのトレンドでもあるニーズの複雑多様化が最大の理由です。一方で、SNSの普及などで、エンドユーザーがいろいろなインサイトを持つようになってきています。そうなると、やはりターゲットを誰にするかが重要で、そこがズレてしまうと誰にも使われないサービスになってしまいます。だからこそ、お客様が何を考えてどういうニーズがあるかを徹底的に考えることが非常に重要だと思います」

 また、財務から非財務のバランスについても触れる。「非財務が重視されるような時代となっても、とはいえ財務を伸ばさなくてはいけません。正しいことを10年スパンでやっていけば、おのずと業績が伸びていく、それが私の考える理想な形です。資本主義でありながら、ロングスパンで考えていきます」

 NEC岩田も「長期的に目指す未来と、短期的な成果として今を繋げるストーリー作りが大切だと考えています」と述べる。

 「NECはPurposeを具現化した「NEC 2030VISION」を掲げています。その未来像には、まだまだ余白が多いので、それをパートナー様と一緒に書き換えていきたいと考えています。共感を広げながら、短期ビジネスにも繋げていく。そのストーリー作りを長期的目線で行っていくというのが、“未来の共感”に込めた想いです。」

 さまざまなステークホルダーに価値を提供し、UXを向上していくために創造力を磨く。デジタルの力がさまざまな分野に効率化をもたらすのは間違いないが、UXの向上という文脈では、そうした近道の選択はともすると創造力の欠如につながりかねない。その意味で、デジタルの進展がもたらした時代の変化は、ポイントによって従来以上に丁寧なアプローチが求められるようになったといえるのかもしれない。裏を返すと、共感の先にある未来を目指し、創造力という思考をとめない者だけが、セクションとしてだけではない、真の意味でのセンターオブエクセレンスを掴めるのではないだろうか。

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