データマネジメントの課題と解決策は?
戦略コンサルタントと共に考える
BluStellar ラウンドテーブル~データマネジメント編~ 開催レポート
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データドリブン経営を企業文化として根付かせる方法とは?SMBCとNECの社内でデータ利活用を推進している部署の視点から、実際の取り組み事例を基に深堀します。
DXは各社がさまざまな戦略・施策で取り組んでいるものの、その実態はトライ&エラーの繰り返しで、なかなか一筋縄にはいかない。中でも、各所に点在する大量のデータを適切に収集・蓄積し、経営判断を高度化する「データドリブン経営」「データマネジメント」は、データに対するリテラシーや管理方法が事業部や部署によってまちまちであることが多く、自社でのベストプラクティスを見出すのが困難になっている。
NECは2024年8月28日、最適なデータマネジメント推進の足掛かりとしてもらうための企業向けイベント「BluStellar ラウンドテーブル~データマネジメント編~」を開催。参加者によるデータマネジメントに関するディスカッションでは、自社の現状や課題、解決策などを話し合った。イベント内では、自社を「ゼロ番目」のクライアントと捉え、データを用いた変革にNEC自身が先んじて実践する「クライアントゼロ」の取り組みや、NECのコンサルタントが成功・失敗談も含めた社内外のDX事例も共有。参加者は今後のデータマネジメントに対する取り組みのヒントを見出していった。
SUMMARY サマリー
オープニング講演 ~データマネジメントの要諦は“5つの変革”~
NEC コンサルティングサービス事業部門でデータマネジメントグループのディレクターを務める下條が、冒頭のオープニング講演に登壇。データ戦略経営を推進するには「組織/統制」「文化醸成」「人材育成」「分析/活用」「基盤」の5つの変革が重要と述べた。
下條は、この5つの変革を果たしていくために大切なのは「データ統制機能を持つ経営幹部直轄のDMO(Data Management Office:データマネジメント専門組織)を置くこと」と指摘。DMOがデータ活用を統制することで、事業部門ごとにデータを活用している状態を指す「部分最適」から、全社横断でデータを活用する「全体最適」を目指すことができる、とした。
ただし、5つの変革を一気に実行するのではなく、小さなPoC(Proof of Concept:概念実証)を繰り返すことで実績を積み上げることが大事だと下條は訴える。
「スモールスタートが肝心」で、「いきなり大きなテーマを掲げてデータマネジメントしようとすると失敗しがちだし、必ずしも全員が賛成するとは限らない。まずは半年から1年ほどで効果が実感できる、小さなテーマから着手してはどうか。例えば、会社の各種データを可視化する経営ダッシュボードの構築や、データカタログの作成あたりから始めるといい」とアドバイスした。
NECのデータドリブン経営実践の場を見学 ~Workstyle Innovation「リファレンスオフィス」~
オープニング講演後に、参加者はNEC本社内の「リファレンスオフィス」を見学した。
ここは、「クライアントゼロ」戦略にもとづき、デジタルIDや経営コックピット・ダッシュボードなど、社員の働き方を変革する様々な取り組みの実践をリアルに体感することが出来る場だ。例えば、社内混雑具合や会議室利用状況などを全社員がリアルタイムで共有できるダッシュボードが設置されているが、これは、従業員としてはその時々に最適な働く場所の選択に使われるだけでなく、全社目線では継続的なデータの蓄積により今後の社内フロア編成などの参考にするといったものだ。
参加者は、データを経営判断・社員の行動変容に活かす、NECのデータドリブン経営の一端を体感した。
NECの社内外事例を共有 データマネジメント実践の知見を得る絶好の機会に
社内事例紹介:社内の各領域を支える「データマネジメント組織」を発足 その役割とは?
続いて、本イベントのメインプログラム「ワークション」が行われた。ワークションとは、「ワークショップ」と「ディスカッション」を掛け合わせたNEC発案の造語だ。参加者はその趣旨通り、2つのグループに分かれ、それぞれ自社で今後データマネジメントを推し進めるために取り組みたいことなどを紙に書き、共有した。
本格的なワークションの前に、NEC コーポレートIT・デジタル部門データ&アナリティクス統括部に所属する渡邉が、NEC社内におけるデータドリブン経営の取り組み事例を紹介した。
渡邉は「NECがデータ利活用を本格的にスタートした当時は、事業体が縦割りだったこともあり、データのサイロ化が課題だった」と話し、誰もが必要に応じて最適なデータを扱える“データの民主化”のために、「One Data, One Place, One Fact」をキーワードにデータドリブン経営の取り組みを始めたと振り返った。
渡邉は、下條が説明したデータ戦略経営に重要な5つの変革の中の「組織/統制」と「人材育成」の2点にフォーカスして解説した。
「組織/統制」はDMBOK(Data Management Body of Knowledge:データマネジメント知識体系ガイド)を参考にしつつ「集中型」を目指し、データマネジメントを担当するコア人材を集中して、データ&アナリティクス(DA)組織を設立。経営課題を解くためのデータ活用を掲げ、CDOやCHROなど各CxOをオーナーとした。
CxOを支援する担当もDA組織からアサインした。DA組織で作成したガイドラインや規定でデータガバナンスを効かせると同時に、DA組織の担当者が支援することで、標準データを元に全社でファクトに基づく意思決定を行うための、経営ダッシュボードを構築していった。これにより、経営課題解決のためのデータマネジメントを実施している。
データ活用人材は各部門から選抜し、DA組織で研修を実施。実務課題を解決しながらスキルを向上させている。データマネジメント人材はDMBOKを参考に、29種から約10種に絞り込み、現在は育成計画を検討している段階だ。
他社事例紹介:一方的な情報発信はNG? カギは現場とのコラボレーション
次に再度登壇した下條が、NECによるコンサルティング事例2件を紹介した。
1つ目の事例では、データマネジメントに着手はしていたものの「兼務者のみの体制で、実態としてはデータマネジメントにまったく手が回っていない状態だった」(下條)。そこで、まずは5つの変革の中の「組織/統制」のために、データマネジメント機能設計を実施。その後、「分析/活用」に向けてデータ分析支援機能の設計を実行し、同時にデータ人材育成にも取り組んだ。
この企業では文化醸成が肝になったと下條は指摘する。「社内におけるデータマネジメントの浸透・拡大のハードルが高かった。そのために情報提供に力を入れた」
一方、下條は「一方的な情報提供は無意味」と指摘。続く2つ目の事例として挙げられた企業では「文化醸成」に悩んでいた、と明かす。ポータルサイトやコミュニティの存在をそもそも知らず、関心がない人がほとんどという状態だった。
そこでこの企業ではトップダウンによる周知を徹底し、さらにオン/オフラインの問い合わせ窓口を設置。ワークショップも開催し、課題解決策やユースケースを創出した。
下條は「現場の社員が参加して情報を取り込める、“現場とコラボレーション”した仕組みが効果的だった」と振り返る。ただし、それでも「文化醸成までには1年以上かかった」とし、長期的な目線で取り組むことの重要性を語った。
データマネジメントを成功に導くには?課題解決策をNECメンバーと共に検討
下條と渡邉からのケーススタディをインプットした後は、いよいよ本格的なワークションへ。各参加者が抱えるデータマネジメントにおける課題と解決策を紙に書き出し、各グループで話し合った。
課題では主に「データ基盤は構築したが“全社最適”できていない」「データ品質を向上したいが、投資対効果を経営層に説明できない」「経営層にまでデータ活用文化を醸成できない」「データ活用指針はあるが、具体的に何に取り組んだらいいかわからない」などが挙がった。
ディスカッションには下條と渡邉だけでなく、NECのコンサルタントがファシリテーター・アドバイザーとしてグループに入り、これらの課題に対して解決策のヒントを提示。データ施策に対する投資対効果を経営層に説明できないという課題に対しては「他社の事例で、“利益を回収しない投資”と経営層が割り切る企業があった。定性的なものでも評価できるようにしてあげるのも大事」などとアドバイスした。
最も取り組んでみたいと思えるアイデアに投票!選ばれたのは…
ワークションの最後に、参加者が書き出した課題に対する解決策について、自社で今後参考にしたいと思えるアイデアを全員が投票で選んだ。その結果として得票が多かった3案について、下條がアプローチ方法を提示した。
最も得票があったのは「経営層が見たいデータを整理し、そのために必要なデータマネジメント施策を実行する」というもの。それに対し下條は、「経営層に見たいデータを決めさせて責任を持たせるといい」と助言した。同様に票の多かった「データ基盤のCxOを活用ケースごとに決め、維持・管理する」というアイデアは、先の渡邉の社内事例紹介を踏まえて生まれたものだ。これら2案に次いで票を集めた「経営企画のROI(Return On Investment :投資利益率)に連携した経営ダッシュボード構築」という解決策には、「思い切ってROIを定めず成功したケースもある」と事例を紹介した。
そのほか、「DMO体制の再考」や「相談窓口やコミュニティを設置し、データ活用文化を醸成」といったアイデアにも投票があった。
今回のワークションで、参加者はNECのコンサルタントからデータマネジメント実践のノウハウを得ただけでなく、同じ課題を抱える仲間を得る貴重な機会となった。イベント終了後の交流会でも和気あいあいと意見交換がなされ、各社がデータマネジメントを次のステップに進めようとする強い意志が感じられた。
参加者からのコメント
・私たちの困りごとを解決したいというNECさんの意気込みが伝わってきました。多くの新しい知見を得ることができ、有意義な時間を過ごせました。
・実際にNECのコンサルタントや参加者の皆さんと対面で話をすると、オンラインよりも理解が深まります。NECさんにこのようなオープンな機会があるとは知りませんでした。
・データ利活用を推進する人材の育成に、参加者の皆さんが共通した課題感を持っていることがわかりました。データマネジメントに関する相談窓口を設けるアイデアなどは今後、社内で進めてみたいと思いました。
・ボトムアップだけでなくCxOが責任を持ったトップダウンもある程度必要なのだと感じました。共感できる部分が非常に多かったです。
NECのコンサルタントから
下條:前回は「データドリブン経営」をテーマに同じイベントを開催しました。今回、テーマを「データマネジメント」に絞ったのは、参加者の皆さまにより明確な課題解決イメージを持ち帰っていただきたかったからです。NECの社内事例をインプットし「自社ではこうやってみようかな」という気持ちになっていただけたのであれば、よかったと思います。
渡邉:「同じ気持ちの仲間がいてうれしい」と感じました。ディスカッションを進めていくと、皆さまがお持ちの課題がNECを含めてほぼ共通していました。だからこそ私たちの経験やソリューションが役に立つのではないかと感じました。
下條:「皆さんが同じような課題を抱えていて安心しました」というお声は、私も聞きました。DX推進は組織変革を伴い、時に風当たりも強くなるため、孤立無援のように感じてしまうこともあるかと思います。今回のBluStellar ラウンドテーブルの意義は、同じ立場で奮闘する仲間と交流できるという点にもあるのかもしれません。
NECのデータマネジメントに関するコンサルティングの特徴は、成功だけでなく失敗経験を持ち、それをベースに「NECはこれで失敗したので、御社はこうしましょう」という提案ができること。今回、さまざまな課題を持たれたお客さまに、NECの経験・ノウハウや他社事例の一端を共有できたのではないでしょうか。
渡邉:そうですね。社外へコンサルティングサービスを提供している下條と、社内のデータ利活用を進めている私が共に参加したことで、より具体的なディスカッション機会にすることができたのかもしれません。
下條:データマネジメントを推進するポイントは渡邉さんから見て何だと思いますか。
渡邉:やはり「スモールスタート」ではないでしょうか。価値の創出は一足飛びでは進みません。小さな積み重ねが成果となるはずです。
下條:まさに、私たちもコンサルティング経験を通じ実感しています。これからもその意識を持って、お客さまのデータドリブン経営推進の一助になるよう伴走していきます。
NECでは、NEC自身が、数万人規模の組織横断で進めた「データドリブン経営」で得た知見を活かし、「戦略・構想策定」から「基盤、分析/AI」「組織/統制、人材、文化」まで、お客さまの幅広い課題領域に柔軟に対応可能です。また、戦略策定から定着・改善まで、一気通貫で継続的にお客さまのデータドリブン経営を伴走支援します。
参考:自社事例から得たデータマネジメントのポイント NEC-DataManagement-point.pdf