データドリブン経営とは?実際の成功事例から実現のメリットまでわかりやすく解説
近年、書籍やWebなどでも目にすることが増えた「データドリブン経営」という言葉。その考え自体はシンプルなものですが、現場レベルに落とし込んで実際に効果を得られるまでのハードルは高いのが実状です。
この記事では、データドリブン経営の概要やメリット、実現までのステップや必要となるポイントなどを解説します。
1.データドリブン経営とは
データドリブン経営とは、組織の意思決定やアクション、戦略立案などの際にさまざまなデータを活用し、客観的な根拠に基づいて判断を行う経営手法です。企業がこれまで蓄積してきた販売実績や顧客情報、市場動向などのデータを用いることで、より確実で効果的な経営を実現することが期待されています。
2.データドリブン経営とDXの関連性
データドリブン経営を進めるためには、企業内のITインフラやデータ管理体制を強化し、さまざまなデータの収集・蓄積・分析が可能となる環境を整える必要があります。具体的には、データ収集が可能な業務システムへの刷新や、ITツールの導入・利活用、データを蓄積・分析する基盤やネットワーク網の構築などが挙げられるでしょう。
データドリブン経営に求められる環境構築は自社のDX推進にもつながっています。データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、ビジネスモデルを変革し、社内業務そのものや、組織、企業文化を変革し、競争上の優位性を確立するなど、企業の新しい価値創造につなげることができるでしょう。
3.データドリブン経営が注目される背景
では、なぜ今データドリブン経営に大きな注目が集まっているのでしょうか。その背景をご紹介します。
3.1.ビジネス環境の急激な変化
近年、急速な社会の変化や技術の進化により、ビジネス環境が複雑化しています。状況に応じたスピーディな意思決定が必要とされる中、単なる勘や経験に頼るのではなく、データに基づいた客観的な判断を下すことが、企業経営において重要な要素となってきています。
3.2.ニーズの多様化
インターネットやSNSの普及、社会的な価値観の変化などによって一人ひとりのニーズが多様化していることから、そのニーズに応じた細やかなアプローチの重要性が高まってきています。企業がデータを活用すれば、一人ひとりの嗜好や行動を深く理解し、最適なサービスを提供できるようになります。
3.3.業務内容の複雑化
一人ひとりの行動が多様化するのに伴い、企業内の業務も複雑化しています。定型的な業務だけでなく、顧客に応じた柔軟な対応が求められるようになったためです。複雑化する業務のなかで柔軟な対応を実現するためには、データを活用して既存のオペレーションコストを下げ、より効率的な業務プロセスを構築することが必要になります。
3.4.テクノロジーの進化
近年、IoTやビッグデータ、AIなどの技術が進化したことで、企業が膨大なデータを収集・分析できるようになってきました。データを収集・蓄積するためのハードルが下がり、各企業でデータドリブン経営を実践する環境が整ってきていることも、データドリブン経営が注目される背景の一つです。
4.データドリブン経営を実現するメリット
では、データドリブン経営を行うと具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは5つのメリットを解説します。
4.1.意思決定のスピードが向上
データドリブン経営ではリアルタイムのデータをもとにアクションプランを立てられるため、迅速かつ客観的な意思決定が可能です。これにより、変化の速い市場環境にも素早く適応できるようになります。
4.2.顧客起点でのサービス改善
データを活用すると、一人ひとりの行動や嗜好をより深く理解できるようになります。結果、一人ひとりの目線に立った製品・サービスの改善が実現し、顧客満足度の向上につながります。
4.3.オペレーションの効率化
データを活用して業務プロセスを見直すと、無駄を削減でき、業務スピードが向上します。また、オペレーションの効率化にもつながり、コストの削減などが図れます。
4.4.新たな経営課題の発見
データの収集・分析を通して企業内のさまざまな活動を可視化できると、従来の経営手法では見つけられなかった新たな経営課題を発見できる可能性があります。新たな経営課題の発見と解決ができれば、企業のさらなる成長につながるでしょう。
4.5.新規事業の創出
収集・分析したデータからは、経営課題だけでなく、これまで見過ごしていたビジネスチャンスを発見できる可能性もあります。データを生かした新規事業を創出できれば、企業の競争力や収益性の向上が期待できるでしょう。
5.データドリブン経営を実現するまでの流れ
続いて、データドリブン経営をどのように進めていけば良いのかを解説します。
5.1.データドリブン経営における目的の設定
データドリブン経営を成功させるためには、まず目的を明確にすることが重要です。単にデータを収集するのではなく、そのデータを活用して何を実現したいのか、どのような経営課題を解決したいのかを具体的に定義します。
目的を明確化できたら、それを実現するためにどのようにデータを活用すべきかを考えていきましょう。
5.2.データ収集基盤の構築
次に、必要なデータを効率良く収集・蓄積するためのプラットフォームやインフラを整えます。データドリブン経営では複数の組織で収集したデータを活用するケースが多いですが、組織ごとに収集したデータの蓄積場所が異なると、円滑なデータドリブン経営が難しくなります。基盤を整備すればデータの一元管理や迅速なアクセスが可能となり、効果的なデータドリブン経営を実現しやすくなるでしょう。
5.3.収集したデータの可視化・分析
収集・蓄積したデータは、ローデータのままではなく、グラフや表など、分析に活用できる形に可視化することが重要です。データの可視化によって経営陣や現場担当者は視覚的にデータを分析できるようになり、意思決定を行いやすくなります。
5.4.分析したデータによる施策立案
データの分析結果をもとに、企業の経営課題を解決するための具体的な施策やプランを立てます。このプロセスでは、KPIの設定や改善のためのアクションを明確にすることが求められます。
5.5.施策の実行と検証
立案した施策を実行し、その結果を検証します。検証結果をふまえて改善を行うPDCAサイクルを回すことで、より良い施策の実行とより高い効果が得られるでしょう。また、社内にデータ利活用の文化が浸透し、データドリブン経営が定着しやすくなる効果も得られます。
6.データドリブン経営に必要なポイント
効果的なデータドリブン経営を実現するために必要となるポイントもぜひ知っておきましょう。
6.1.戦略策定
データドリブン経営を効果的に進める鍵となるのが戦略策定です。企業がデータドリブン経営を行う目的や、解決したい課題、達成したい目標を具体的に定義し、それに基づいて戦略を立てましょう。明確化した目的や課題、目標から逆算し、詳細な計画やロードマップを作成していきましょう。
6.2.基盤
適切なデータ基盤の構築は、データドリブン経営を支える重要な要素です。多種多様なデータを効率的に収集・蓄積・分析するためのプラットフォームが必要となります。
プラットフォームは、さまざまなITツールからの情報収集に対応できるよう、柔軟性が高く将来的なニーズの変化にも対応できるものが望ましいでしょう。データの種類や量が増加してもスムーズに対応できる拡張性も大切な要素となります。
6.3.分析/AI
収集したデータから価値を引き出すためには、適切な分析が欠かせません。ビジネスの目的に沿った分析を行うことが大切です。また、複雑な課題に対しては、人工知能(AI)や大規模言語モデル(LLM)などの先進技術を活用することで、より深い分析や予測が可能になります。また、これらの技術を利用することで、意思決定の質を高めることができます。
6.4.組織/統制
データドリブン経営を全社的に推進するためには、組織の枠を超えた連携が必要となります。それを実現するためには、データマネジメントの専門知識を持つ組織の構築が効果的です。この専門組織が中心となり、組織を横断したデータ活用の調整や全社的なデータ戦略の立案を行うことで、一貫性のあるデータ活用が可能となります。
6.5.人材
データドリブン経営を持続的に行うためには、社内のDX人材や専門人材の育成が必要です。データ分析スキルやAI技術の理解など、必要なスキルセットを明確にし、それに基づいたカリキュラムや育成環境を整備すれば、計画的に人材が育成できるようになります。
6.6.文化
持続的なデータドリブン経営に向けては、人材育成だけでなく、データ活用を企業文化として定着させることが重要です。全社員がデータリテラシーを持ち、日々の業務でデータを活用する習慣が身につけば、データドリブン経営による継続的な改善と革新を実現できるでしょう。
以上のように、効果的なデータドリブン経営の実現には、AIを活用して分析と戦略策定をした上で、組織統制、人材育成、企業文化醸成を目指すことが大切です。
また、NECでは以上の6つのポイントに基づいて、企業のデータドリブン経営の支援を行っています。詳細については下記のページよりご覧ください。
7.データドリブン経営の成功事例
では、実際にデータドリブン経営に取り組み、成果につなげた成功事例をご紹介します。
7.1.現場の課題をデータ活用によって解決し、文化の醸成に成功|大東建託
大東建託では、データの具体的な活用イメージや活用メリットが浸透しておらず、グループ内での横断的なデータ活用が進んでいないことが課題でした。そこで、事業部ごとに分散したデータを集約・活用できる環境や文化を構築することを目的に「スモールスタートで始めるデータドリブン経営ワークショップ」を開催しました。
分散していたデータを集め、分析することで、データ活用の結果として数十億円の売上につながる可能性があること、これまで注視してきた指標においてもまだデータ活用の余地があることを発見しました。これにより、大東建託ではデータドリブン経営への期待がさらに高まるようになり、データ基盤の概要設計や検証、データ分析における人材育成などの取り組みなどについても検討を始めています。
7.2.データ活用の基盤構築をはじめ本格的なデータ活用を達成|日東工業株式会社
日東工業株式会社では、意思決定の迅速化や高度化を図るため、データドリブン経営の実現を目指していたものの、データ加工の手間やデータ取り込みに時間がかかっており、データ活用のスピード感や文化醸成に課題を感じていました。
そこでまずはスモールスタートでのデータ基盤構築やデータ蓄積のためのデータパイプライン開発を行い、データ分析のための環境整備に着手しました。
AWSを用いてクラウド上にデータ活用基盤を構築することで、スピーディなデータ分析を行える環境が整いました。また、データ活用におけるテーマごとの評価・優先度付けを行い、初期対応テーマの絞り込みも実施。結果として、初期対応テーマの一つである、標準品の商品群における売上状況の分析・可視化のリードタイム短縮を実現しています。
8.データドリブン経営で使用される代表的なツール
最後に、データドリブン経営に活用できる代表的なツールをご紹介します。
8.1.DMP(Data Management Platform)
DMPは、さまざまなソースから収集した大量のデータを一元管理し、分析・活用するためのプラットフォームです。顧客データやウェブサイトの行動データなどを統合しセグメント化することで、効果的なマーケティング戦略の立案やパーソナライズされた顧客体験の提供を実現します。
8.2.BI(Business Intelligence)
BIツールは、企業のデータを可視化・分析するためのツールです。複雑なデータを直感的に理解しやすいグラフやチャートに変換することで、リアルタイムでの情報把握や迅速な意思決定につなげます。また、データの傾向や変化を素早く発見し、ビジネスチャンスや潜在的リスクの可視化を実現します。
8.3.SFA(Sales Force Automation)
SFAは、営業活動を効率化して管理するためのツールです。顧客情報や商談進捗状況の一元管理、営業活動の自動記録、売上予測などの機能があり、営業担当者の生産性向上や営業プロセスの標準化に活用できます。また、データに基づいた営業戦略の立案や効果的な顧客アプローチによる売上の向上につながります。
8.4.ERP(Enterprise Resources Planning)
ERPは、企業のリソースを統合的に管理するシステムです。財務、人事、生産、販売など、企業活動のさまざまな側面を一つのシステムで管理することで、リアルタイムでのデータの共有・活用が可能となります。これにより、業務プロセスの効率化や組織間の連携強化が図れます。また、経営全体を俯瞰的に把握できるようになるため、迅速かつ的確な意思決定にも効果的です。
8.5.CRM(Customer Relationship Management)
CRMは、消費者との関係性を管理し最適化するためのツールです。顧客情報の一元管理、消費者とのコミュニケーション履歴の記録、顧客分析などの機能により、個々の顧客ニーズに合わせたサービス提供や効果的なマーケティング活動が可能になります。顧客満足度の向上や長期的な顧客関係の構築に役立ち、企業の収益性向上につながります。
8.6.MA(Marketing Automation)
MAは、マーケティング活動を自動化・効率化するためのツールです。リード獲得からナーチャリング、セールスへの引き渡しまで、一連のプロセスを自動化します。消費者の行動データに基づき最適なタイミングで適切なコンテンツを配信できます。パーソナライズされたマーケティングを実現することで、マーケティング効果の向上やマーケティング部門と営業部門の連携強化などが図れます。
9.ビジネスの成功に結びつくデータドリブン経営
ビジネス環境が急速に変化する現代では、データドリブン経営の重要性が高まっています。今後はより多くの企業で取り入れられていくでしょう。しかし、効果的なデータドリブン経営の実現には、戦略の設定や仕組みの構築、ガバナンスの強化など、勘所をおさえた取り組みが求められ、社内だけで完結させるには難しい場合があります。
NECでは、数万人規模の組織横断で進めたデータドリブン経営から得た知見を生かし、伴走型の支援を提供しています。戦略策定から定着・改善まで、一気通貫で継続的にデータドリブン経営を伴走支援しています。
関連サービス:データドリブン経営を成功に導くために