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「AI 時代に変化する消費者意識調査」を
デジタルエシックス視点で読み解く 01

AI/パーソナライズがもたらす消費者の期待と不安

 NECは、SNS、買い物・予約・支払い系サービス、エンタメ・コンテンツ視聴系サービスなど、日常的にデジタルサービスを使用している15歳から74歳の一般消費者1,597人を対象にデジタルサービスへの期待や疑念についてアンケート調査を実施し、その結果を「AI時代に変化する消費者意識調査」としてまとめ、2025年11月27日(木)に公開しました。

 近年、企業活動においてその重要性が増している「デジタルエシックス」をより深く理解するために、本記事では、公開済みの調査結果に加え、その背後にある多くのデータや追加分析を踏まえて、消費者の「リアル」を多角的に探っていきます。本調査から得られた多くの示唆をもとに、全5回にわたりご紹介していきます。

 第1回は、調査結果「1.AI利便性の光と影」の詳細を探っていきます。

■調査概要
 対象地域:日本全国
 対象者:デジタルを活用したサービス(※)を使用している15歳~74歳の一般消費者

  • デジタルを活用したサービス:SNS、買い物・予約・支払い系サービス、エンタメ・コンテンツ視聴系サービス、学習・自己啓発・知的サービス、ヘルスケア・生活支援系サービス、データ・デバイス活用系サービス、その他のオンライン/デジタル活用サービス

 調査結果:AI時代に変化する消費者意識調査2025

1.はじめに(市場変化と背景)

 はじめに、本調査結果を読み解くにあたっておさえておきたい市場変化や背景を整理しておきましょう。

 インターネット・スマートフォンの普及やSNS社会の到来により、企業と消費者の関係は「発信する側から受け取る側へ」という一方通行の関係から、対等に相互作用し合うインタラクションの関係性1に変化しました。

 さらに、ブランド選択肢が格段に増えたことで、伝統的な「ブランドロイヤルティが高い=好きなブランドを買い続ける」という単純な図式では解釈できない消費者も増加しています。新たにブランドスイッチャー(愛着のあるブランドを持ちながらも、新しい選択肢を積極的に取り入れる層)が世界全体で58%を占めるというデータ2もあり、主要な消費者セグメントとして台頭してきました。

 また、推し活に代表されるように、消費者は企業が発信する情報をそのまま受け取るだけではなく、企業の本質や本音を自ら確かめようとする行動を強めています。それは「オタクの内的な萌えが外的な“推し”に転化」したように、「新たな消費活動」として定着しています。3

 一方、エデルマン・トラスト・バロメーター2025によると、企業リーダーが「嘘や誇張を用いて意図的に人々を欺いている」と答えた日本人が2025年には49%にまで増加(2021年は28%)しています。日常に不安を持つ人々が増えている現状だからこそ、今まで以上に企業の信頼が求められてくることも背景としておさえておく必要があります。4

 このように消費者と企業・ブランドの関係性が大きく変化している点を踏まえて、AI時代を本格的に迎えていくデジタルサービスに対し、変化する消費者の心理を理解するための参考データの一つになれば幸いです。

2.AI/パーソナライズ体験は、すでに身近な存在に

 それでは、すでに公開済みの調査結果から興味深い箇所をピックアップしていきましょう。 まずは図表1のように、「AIによるパーソナライズ提案を75%が体験。さらに高頻度での体験も過半数の55%」という結果になっています。

 具体的にどのようなAI/パーソナライズを体験したかを詳しく伺った結果が図表2です。

 みなさんにとって身近な体験が多く並んでいるのではないでしょうか。

 「令和7年版 情報通信白書(総務省)5によると、YouTubeなどのオンデマンド型の動画共有サービスの利用率が92.3%、Netflixなどのオンデマンド型の動画配信サービスの利用率が61.2%です。動画配信サービスの「おすすめ表示」を38%が体験しているという今回の調査結果は、AIを活用した機能が日常的なライフシーンにまで浸透していることを示しています。

 また、今回の調査が2025年8月時点での回答ということを考慮すると、今後はChatGPTやGeminiに代表される生成AIサービスも、より加速度的に増えていくものと推測できます。

3.AIに対する世代別の印象

 次は、図表3でご紹介したAI/パーソナライズの普及に対して「良い印象」「悪い印象」と答えた消費者心理を追いかけてみます。

 まずは世代別にどのような傾向があるかを見てみます。

 図表4のように、10代~20代は好意的、30代~40代からは中立・様子見が増えていきながら50代以降はゆるやかに好意的な印象が減っていく姿が見えてきます。デジタル活用は世代によってそもそもの捉え方も異なる可能性がありますが、傾向のアウトラインが明らかになってきました。

4.AIに対する期待と不安

 さて、続いて図表5の「AIやデータを活用したサービス」は約3人に2人(66%)が「便利だが不安」と回答している結果について見ていきましょう。

 「AIやデータを活用したサービス」に対して具体的に良いと感じる点・期待する点を聞いた内容が図表6です。

 タイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果)・コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)に代表される効率性の享受が上位にあがってきているのがわかります。一方で、利点や期待を見いだせていないとの回答も12%いるのは、期待一辺倒ではない消費者の心理状況を示唆しています。

 次に、具体的に不安・不快・気になる点を聞いた内容が図表7です。

 勝手にデータを使われているように感じていたり、個人に最適化するアルゴリズムの不透明さを感じていたりする傾向が確認できました。「AIが人間の感覚とズレていると感じることがある(18%)」などはAIと共存していくこれからのデジタル社会においては重要な視点になっていきます。また、「見たい情報が逆に見えにくくなることがある(20%)」や「提案される内容が一方的で偏っていると感じる(20%)」はネット空間における行き過ぎたフィルターバブル現象*に対する違和感や拒絶、あるいは揺り戻しの可能性もあるため、いま一度注目すべきでしょう。

  • フィルターバブル現象:インターネット検索やSNSで、個人の閲覧履歴や行動データに基づき好みに合った情報ばかりが表示されることで、あたかも「泡(バブル)」の中に閉じ込められたようになり、異なる視点や意見に触れる機会が失われる現象

5.まとめ

■好印象につながる「体験の質向上」とは

 下記の図表8、図表9は今までの項目をそれぞれクロス分析した結果です。

横軸:AI/パーソナライズの「利点・期待」【全回答者】
縦軸:AI/パーソナライズの「利点・期待」【AI/パーソナライズの普及に「良い印象」を持っている方の回答】

 図表8はAI/パーソナライズの利点・期待に関するクロス分析です。

 グラフ右下は全体として広く普及している基本的な利点であり、「効率化向上(機能的便益)」に関する回答が集まっています。

 グラフ左上に位置している要素は、AI/パーソナライズに好印象の人ほど感じている利点であり、好感度が高まる要素と考えることができます。ここにはデジタルサービスにおける「体験の質向上(情緒的便益)」に関する回答が集まっている傾向が見えています。

 図表8で示した体験の質向上に関しては、ここ数年のデジタル進化の特徴はタイパ・コスパの追求でしたが、それらがAIによる前向きな印象形成において絶対条件とは限らないという示唆となり、着目に値します。また昨今、語られ始めているプロパ(プロセスパフォーマンス:商品やサービスを選ぶプロセス自体に体験価値を見いだす考え方)やチョイパ(チョイスパフォーマンス:流行に流されず、自分にとって最適なものを主体的に選択する価値観)6という価値観が、体験の質向上とも相性がよく、かつよい印象形成に高く影響を与える可能性が見て取れます。

 さらに、この結果が興味深い点は、AIが効率性を追求した先にある「人間らしさ」はどこにあるのか。その一端を示唆しているようにも見受けられます。一見すると非効率で無駄に見える過程や、一人ひとりの感性に基づく判断、無用の用や道草のような価値観、手間で面倒なものとして煙たがられていた作業プロセスの中にこそ、逆説的で根源的な価値を見出す-今後の消費者向けのサービス開発やUX/UI開発においては、こうした点を気に留めておく必要があります。

■不信感を強める「ズレ」の存在

横軸:AI/パーソナライズの「不安・不快と感じる点」【全回答者】
縦軸:AI/パーソナライズの「不安・不快と感じる点」【AI/パーソナライズの普及に「悪い印象」を持っている方の回答】

 図表9はAI/パーソナライズの不安・不快に関するクロス分析です。

 グラフ右は全体として多くの人が感じるAIの印象を損なう顕在的な課題です。不適切なデータ利用やその透明性への不安は、全般的に広く感じられていることが見て取れます。

 一方、グラフ左上に位置している要素は、AI/パーソナライズに悪い印象の人ほど感じている課題であり、ネガティブな印象形成に強く影響を与えている可能性を示しています。この中で一つ特筆すべき点が「AIが人間の感覚とズレていると感じることがある」が挙がっていることです。この回答はChatGPTやGeminiなどの生成AIでアウトプットされる文章や画像の違和感や気持ち悪さ7なども含まれるものと推測ができます。

■AI 時代の消費者を理解するための5つの示唆

 ここまでの結果から見えてきたのは以下の5点です。

  • AI/パーソナライズは、すでに多くの人にとって身近な存在となっている
    ―全体の75%が何らかの機能を体験済みであり、さらにその過半数(55%)は「よく・時々・たまに」と高頻度で接しており、日常の一部となっている
  • AIに対する印象は世代によって明確な違いが見られ、若年層ほど好意的
    ―20代以下は好意的な一方、30代以上では中立意見が多数。例えば、10代では約4割が好印象だが、50代以上では6割超が「どちらとも言えない」と回答している
  • AIに求める価値には「実用性」と「体験の質」という2つの側面がある
    ―多くの生活者が求めるのは「効率化」=機能的便益だが、AIへの好印象を醸成するのは「生活の質向上」や「最適化された体験」といった、よりパーソナルな充足感である
  • ユーザーが抱く不安にも、広く浅い懸念と、根深い不信感の2種類が存在する
    ―最も広く持たれている不安は「勝手なデータ利用」などプライバシー懸念だが、根深い不信感に繋がるのは「AIの感覚がズレている」と感じる質の低い体験への失望
  • 期待と不安が交錯した結果、多くの人はAIやデジタル活用に両価的な感情を抱いている
    ―ユーザーの約3人に2人(66%)がAIを「便利だが不安」と捉えており、「不安はない」と断言できる人はわずか8%に留まり、大半が手放しの信頼を置いていない

 次回は、企業やブランドとのかかわりの中で変化する消費者の意識と行動を、何が企業に求められているのかの視点も含めてさらに掘り下げていきます。

調査・企画・執筆:
NEC BluStellarブランドマーケティンググループ(吉見大輔、鈴木章太郎、若山拓巳、権田麻実)