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AIネイティブ時代の価値創出モデル ~NEC BluStellar×Miroが描く戦略共創の新境地~

 AIが当たり前の時代ほど、競争力を決めるのはテクノロジーそのものではなく、意思決定の速さと質だ。NECは価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」を中核に、人とAIが協働しながら思考と合意形成を加速するDXアプローチ「Human AI Collaboration」を推進している。2025年5月、グローバルにイノベーションワークスペースを提供するMiro社との戦略的協業により、人とAIが共に構想し、戦略を描き、チームで合意形成する次世代の共創モデルが姿を現した。本稿では、その核心に迫る。

「AIを使う時代」から「AIと共に働く時代」へ

 社会課題の解決は、もはや行政や一企業だけでは成し得ない。多様な企業や組織がつながり、それぞれの強みを掛け合わせてこそ新しい価値が生まれる。しかし、その道筋は決して平坦ではない。

 こうした複雑な課題に挑み、新たな成長の機会を創出するため、NECが掲げるのが価値創造モデル「BluStellar」だ。生成AIをはじめとする先進技術やメソドロジーを企業活動のあらゆる領域に組み込み、「戦略構想」から「実装」、「成果創出」まで伴走する。

 「いま私たちは、『AIを使う』のではなく、『AIと共に働く』時代に突入しています」とNECの吉崎 敏文は語る。Agentic AIが自ら判断・行動し、ほかのAIと連携して成果を最大化する。AIが人間を置き換えるのではなく、人が思考を深め、創造性を発揮するための「新しい余白」だ。

NEC
執行役 副社長 CDO
吉崎 敏文

 NECはこの変化を、単なる「技術の進化」としてではなく、ビジネスそのものを再設計するための「戦略的な転換点」ととらえている。

 「私たちは、業界の深い知見と豊富なデータベースを活用し、マーケティング、製造、営業、開発といったあらゆる領域にAgentic AIを組み込みながら、お客様の全社的な変革を支援しています」と吉崎は言う。

AIがBluStellarの価値をさらに進化させている。NECが開発した生成AI「cotomi」をはじめとした多様なAI技術を、幅広い業務領域へ統合することで、アクション、プロセス、そしてビジネス全体の変革を加速。人とAIが自然に協働する、AIネイティブ時代の新しい働き方を提案している

「Human AI Collaboration」によるコンサルを強化

 AIネイティブ時代のビジネスの再設計に向け、特に注力しているのがコンサルティング領域である。NECのコンサルティングの大きな特徴――それは、社内での実証実験や改革に挑む中で得た「成功と失敗の蓄積」を体系化し、そのエッセンスを顧客へ還元できる点にある。

 NECは、取り組むべき経営課題を特定し、経営戦略をデジタル戦略へ落とし込む「戦略立案力」、解決策をシステムとして実装する「技術・ノウハウ」、そして全社DXによる成果創出と現場の自走力向上を支える「組織・人材」の3つを兼ね備えている点が大きな強みだ。

 戦略立案を担うコンサルタントも含め、自社DX人材は1.2万人を擁する。課題解決のためのオファリング(製品・サービス・ノウハウを組み合わせたパッケージ)も約150セット整備しており、これらの資産を組み合わせ、顧客の課題に「再現性のある変革」をもたらすのがNECのスタイルだ。

 こうした強みを土台に、NECはコンサルティング領域で「Human AI Collaboration」を加速させている。これは、人とAIが相互補完しながら「思考の質」と「組織の創造力」を最大化する取り組みだ。

 「私たちは、人や組織が本来持つ潜在能力を引き上げるために、AIの力を戦略的に組み込んでいます。AIを道具として使うのではなく、共創のパートナーとして活用することで、より深い課題解決とお客様のイノベーションを支援しています」と吉崎は語る。

 このHuman AI Collaborationのさらなる高度化を図るため、2025年5月にMiro社と戦略的協業を締結した。Miro社はSaaS型のイノベーションワークスペース「Miro」を提供する世界的ベンダーだ。このサービスは、オンラインホワイトボードを介してチームの共同作業を支援するものであり、企画・マーケティング、製品設計・デザインなどの場面で情報やイメージを気軽に共有できる。また実装されたAI機能によって深いインサイトを得られるため、議論の深化や課題探索、アイデアのブラッシュアップを促進する。

 NECはなぜMiro社と共創モデルの構築に踏み切ったのか。以下ではNECにおけるAI活用のコンサルティング業務の可能性と、そこで生じた課題への解決寄与に対してMiro連携による貢献を説明する。

NECの変革ノウハウやコンサルティングナレッジを学習した「NEC Design AI」とMiroのイノベーションワークスペースを連携。チームメンバーのコラボレーション、人とAIの協働を促進し、戦略立案力を大幅に強化する

NEC Design AI×Miroでチームの合意形成を促進

 NECのコンサルティングを支える強力な武器の1つに「NEC Design AI」がある。これはデザイン思考のフレームワークをベースに、NECの変革ノウハウを注入したAIサービスである。フレームワークに含まれるプロセスやナレッジを活用することで、AIとの対話を通じた圧倒的な「スピード」と、元来相反していた「アウトプットの質」担保を両立させる。

 「例えば、カスタマージャーニーの『As Is』を分析し、市場性や顧客インパクトを加味した『To Be』を描く。さらに現状とのギャップを分析し、本質課題を導出した上でビジネスプランや高解像のMVP(Minimum Viable Product)を短期間で作成することができる」とNECの町田 正史は述べる。

NEC
コンサルティングサービス事業部門 ディレクター
町田 正史

 通常こうしたプロセスには何カ月もかかるが、NEC Design AIならMVP作成まで含めたプロセスをわずか数時間で行える。その反面、AIのインテリジェンスが高すぎて、人間が理解し難い側面があった。

 またNEC Design AIはAIと人による1:1の対話が基本であり、ディスカッションに参加しているメンバーの意見やアイデアはNECのコンサルタントが集約し咀嚼してAIと対話してもらう形になる。そのため、参加者が議論のテーマを自分ゴト化しにくく、意見やアイデアがあっても積極的に発言しにくいという状況を生み出していた。「AI自体はスピーディにアウトカムを出してくれますが、結果的に複数メンバーによる合意形成に時間がかかる、といった事態が生じることがありました」と町田は振り返る。

 この課題を解決するため、NECはMiroとの連携に踏み切った。NEC Design AIが生み出すアウトカムをMiroのオンラインホワイトボード上に展開することで、「全員が同じ画面で見て、触れて、議論に参加できる」環境が整い、真の意味での全員参加型の共創が実現した。

 具体的には、NEC Design AIにて作成したインサイトや各種アイデアなどをワンクリックでMiro上のボードに「付箋」として生成する。そのため、AIからの出力に対してシームレスにMiro上にて参加メンバーによる対話を可能とし、意見や価値観を追加することができる。

1:1での対話が中心だったAIと人間とのやり取りを、Miro連携によりスピードを損なうことなく全員参加型の議論を可能とする。言い換えればAIとの対話のデメリットであったが参加メンバーの自分事化を補い、チームの合意形成も取りやすくなる

 対話は、人の創造的なアクションの源泉である。「思考のプロセスが可視化されることで、参加者は議論のテーマを自分事化してとらえられるようになります。自分だけでなく、チーム全員の存在を実感しながら議論を深めることができる。人とAIの協働による価値創出の可能性は大きく広がります」と町田は語る。

人の創造力を引き出し、未来を描くスピードを加速

 参加者の発言を自然と引き出し、議論をより建設的に導いてくれる存在が、Miroに実装された対話型AIエージェント「Sidekick(サイドキック)」だ。

 例えば、ふと誰かの頭に浮かんだアイデア。サイドキックはその付箋の文脈を瞬時に読み取り、テーマに合った視点や価値観を付加しながら、さらに深い示唆を返してくれる。複数のアイデアが出揃ったら、それらをサイドキックに投げかけ、新しい組み合わせや発想を引き出すこともできる。

 「建設的な意見やアイデアを重ねていくプロセスの中で、疑問点や不安が着実に解消されていく。結果として、メンバー間の合意形成も非常にスピーディになります」と町田は説明する。

 もちろん、オンラインホワイトボード上の結果はNEC Design AIに簡単に戻すことができる。合意形成したアイデアの具現化をNEC Design AIに指示すれば、すぐにMVPが作成される。「課題解決や価値創出の取り組みにスピーディにチャレンジできるため、理想的なアジャイル開発が可能になります」と町田は話す。新たな課題が見つかれば、Miroを活用したディスカッションに戻り、再び合意形成を図る。こうして新たな価値創造サイクルが体現されることになる。

コンサルティングのあらゆるプロセスで合意形成が促進され、アウトカム創出のスピードも向上するため、理想的なアジャイル開発が可能となり、複数メンバーの多角的な視点を取り入れることで、施策の成功確度や品質も向上する

 「NEC Design AIは非常にスピーディにアウトカムを生み出せます。しかし、合意形成に向けた“自分事化”の意識がやや希薄になりやすいという課題がありました。Miroとの共創によってその壁を乗り越え、Human AI Collaborationが持つ価値を本質的に引き上げることができています」と町田は力を込める。

 経営課題を発見し、解決へのシナリオを描き出す――この一連のHuman AI CollaborationプロセスにMiroを組み込んだことで、課題の核心に到達するまでの時間は大幅に短縮され、アイデアの具現化スピードは劇的に加速した。

 「Miroは、AIと人間、さらには組織全体の知をつなぐ『ハブ』として機能しています。課題解決の道筋を鮮明に可視化し、未来を描くスピードを飛躍的に高めている。しかも、直感・経験・構想力といった『人間らしさ』が、AIによってむしろ強く引き出されているのです」と吉崎は語る。

 NEC Design AIとMiroの共創モデルは、既に多数の企業と検証が進んでいる。「中期経営計画を合意形成しながらつくれるのではないか」「人の意思決定を反映させたAI活用ができる」「自社データを取り入れた、より解像度の高い戦略策定が可能になる」――こうした前向きな声が数多く寄せられている。

 しかし、Human AI Collaborationは「思考の高度化」だけでは完成しない。真の企業変革には、構想された戦略が現場で確実に実行され、再現性を持って定着していくことが不可欠である。NECはこの「最後の一歩」にまで踏み込む。

 戦略共創を支えるNEC Design AIとMiroの連携が、組織の合意形成と構想力を飛躍的に高める一方で、NEC独自のAIエージェント技術「cotomi Act」は、その成果を実行フェーズへと確実につなぐ。

 cotomi Actは、デジタル業務の起点となるWebブラウザ上の行動を観察し、ベテラン社員の暗黙知や業務ノウハウを自動的に抽出・蓄積する。個社固有の業務プロセスや判断基準を学習し、企業の既存ガバナンスやIT資産を尊重しながら、自律的に業務を遂行できる点が大きな特長だ。

AIネイティブ時代における人間価値と共創の再定義

 構想はAIと人が共に描き、
実行はAIエージェントが担う。

 Human AI Collaborationは、思考支援の枠を超え、「構想・合意・実行」を一気通貫でつなぐ経営モデルへ――。

 AIネイティブ時代の本格到来とともに、複数のAIエージェントが協働し、業務が自動化・最適化されていく世界はすぐそこまで来ている。その未来において問われるのは、「人間はAIとどう向き合うのか」「AIが圧倒的な知性を持つ時代において、人間の価値とは何か」ということだ。

 「その答えの1つが、Miroとのコラボレーションの中にある。可視化と思考の共創を通じて、人間が『AIと共に創造する力』を取り戻す。これこそが、AI時代における『人間のインテリジェンス』の再定義であり、私たちが切り拓くべき次のフロンティアです」と吉崎は展望を語る。

 NECは、Miroとの共創、そしてcotomi Actによる実行自動化を融合させることで、BluStellarの進化を一層加速させ、AIネイティブ時代における企業変革の新たなスタンダードを提示していく。

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