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2021年01月15日

デジタル・ガバメントとは?
日本の社会課題解決と競争力強化に向けた取り組み

 政府や自治体における行政業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)とも言える「デジタル・ガバメント」を実現する動きが本格化してきました。内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室は、「デジタル社会に対応したデジタル・ガバメントの実現が、我が国が抱える社会課題を解決し、経済成長を実現するためのカギとなります」としています。

出典:政府CIOポータル

デジタル・ガバメントとは?

 「デジタル・ガバメント」とは、「サービス、プラットフォーム、ガバナンスといった電子行政に関する全てのレイヤーがデジタル社会に対応した形に変革された状態を指す」とデジタル・ガバメント推進方針(平成29年5月30日)では言われています。

 日本の社会問題の解決や経済成長を持続していくために、IT を活用した生産性の向上等の取り組みが必要となっています。今までと同じように住民が行政サービスを享受していくためには、変化に対応した行政、社会の構造を変革していくことが必要なのです。そして住民から見て一連の行政サービス全体を、「すぐ使えて」、「簡単で」、「便利な」ものにするなど、一人一人が行政サービスを享受できるようにすることがデジタル・ガバメントの目的なのです。

出典:デジタル・ガバメント推進方針(平成29年5月30日)

なぜデジタル・ガバメントが求められているのか

 なぜ、政府はデジタル・ガバメントを加速させているのか。理由の一つは、諸外国に比べて日本は行政のデジタル化が遅れており、その非効率さが国際競争力にも影響が及ぶようになってきたからです。

 さらに、日本では少子高齢化が大きな課題となり、地方では過疎化が進むまちが増えています。住民の人口が減っても、自治体が管理する地域の広さや業務の量が大きく変わることはありません。しかし、住民の人口が減れば、財源は少なくなり、職員の数も減少します。このため、住民に十分な行政サービスを提供するには、従来と同じ業務の進め方では対処できず、業務プロセスの変革による効率化が必須になるのです。

 加えて、2020年に世界中で拡大したCOVID-19により、政府も自治体もデジタル・ガバメントの重要性を実感する契機になりました。国民に外出や業務の自粛を要請する際、世界各国で給付金を支給しました。ところが、デジタル・ガバメントの取り組みが進んだ国と比べ、日本では短期間での準備が追い付かず、申請窓口の混雑や給付の遅れ、オンラインより郵送で、といった事態も起こりました。この経験からも政府、自治体、そして国民がデジタル・ガバメントの必要性を改めて認識することとなりました。

デジタル・ガバメントの目的とは
「すぐ使えて」「簡単で」「便利な」行政サービスへ

 デジタル・ガバメントは、行政版のデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼べる取り組みです。そして、デジタル・ガバメントを推進していくためには、利用者目線での利便性が大切となります。つまり、いつでも、どこからでも、誰でも利用できるICTの利点を生かして、「すぐ使えて」「簡単で」「便利な」行政サービスを提供できる仕組みや制度、業務フローを作り、運用していきます。また、誰にとっても使いやすい仕組みの提供によりデジタルデバイトを克服していくことも必要です。Society 5.0時代にふさわしい、効果的で効率的な行政サービスを国民一人ひとりが享受できる行政へと刷新することこそが、デジタル・ガバメントの目的なのです。

デジタル・ガバメント実行計画とは
具体化へ政府が掲げるデジタル化3原則

 政府は、2017年に行政手続きのデジタル化に向けた「デジタル・ガバメント推進方針」を策定しました。そして、2019年には「デジタル手続法」が成立し、本格的な取り組みを進めています。さらに、政府は各省庁のデジタル化を推進する司令塔となるデジタル庁の設置を掲げています。デジタル庁を中心に、各省庁や自治体、行政機関の間でのデータのやり取りを円滑化し、行政手続き全般の効率化を目指しています。

 また、2025年3月までの期間を対象にして、デジタル・ガバメント推進方針を具体化するための計画「デジタル・ガバメント実行計画」には、「デジタル化3原則」と呼ばれる「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンストップ」という方針に則った施策が明記されています。

 デジタルファーストとは、行政手続きをデジタルで完結させるという方針です。手続きの過程に紙を使った従来手法での業務を挟み込まないようにすることで、円滑で効率的な業務を可能にします。ワンスオンリーとは、申請者に一度出した情報の提出を二度三度と求めないという方針です。コネクテッド・ワンストップとは、手続きはどこでも1カ所だけで済ませるという方針です。ここで注目できる点は、民間サービスとの連携も含めて1カ所で手続きを済ませることを目指していることです。例えば、引越しの際には、電気・水道などのライフラインの異動手続きや銀行などへの住所の届出と自治体への転居届を1回で済ませられると便利です。

住民目線でのプロセス変革による「行政の効率化」の実現
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デジタル・ガバメントの実現により、住民目線でのプロセス変革による「行政の効率化」の実現を目指す
出典:NEC Visionary Week
「【SM-06】海外先進事例から学ぶ日本のデジタル・ガバメントのゆくえ ~行政のデジタル化が変える社会のかたち~」NEC デジタル・ガバメント推進本部 シニアエキスパート松見 隆子講演資料

デザイン思考を取り入れた行政サービス設計

 デジタル・ガバメント実行計画では、利用者目線で利便性を向上させるため、デザイン思考を取り入れた行政サービスの設計を進めています。そこで、政府は以下の「サービス設計12箇条」を明示しています。

〈サービス設計12箇条〉
第1条  利用者のニーズから出発する
第2条  事実を詳細に把握する
第3条  エンドツーエンドで考える
第4条  全ての関係者に気を配る
第5条  サービスはシンプルにする
第6条  デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
第7条  利用者の日常体験に溶け込む
第8条  自分で作りすぎない
第9条  オープンにサービスを作る
第10条 何度も繰り返す
第11条 一遍にやらず、一貫してやる
第12条 システムではなくサービスを作る

出典:政府CIOポータル サービスデザイン思考によるサービス・業務改革(BPR)を進めよう

 このうち、重要な部分を説明します。まず、「第11条 一遍にやらず、一貫してやる」と「第12条 システムではなくサービスを作る」では、いわゆるアジャイル開発を推奨しています。行政が取り組むべき課題は日々変わるため、最初に描いた理想の形を一気に目指すのではなく、成功や失敗、それによる軌道修正を積み重ねながら最適な形に作り変えていく開発手法が重要となります。

 また、「第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める」では、 利用者が受ける便益の向上を目指して、最新技術の活用の検討を勧めています。人工知能(AI)やRPA、IoTなどの利用を推し進めて、少子高齢化時代にも対応できる行政の仕組みを整えることも重要になっています。

 さらに、民間サービスとの連携を前提とした場合、「第8条 自分で作りすぎない」が重要になっています。具体的には、外部の民間サービスとの連携を可能にするAPI(Application Program Interface)連携や行政データのオープン化、外部データの活用などが必要になっています。

国内外で見るデジタル・ガバメント実践例

 デジタル・ガバメントは、国内外ですでに実践されています。例えば、大阪府豊中市の取り組みです。同市は、2020年8月に「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を打ち出し、行政業務のデジタル化によって、「暮らし・サービスを変える」「学び・教育を変える」「仕事・働き方を変える」の3軸での改革に取り組んでいます。コロナ禍の際には、NECが自治体に無償提供したAIチャットボットを活用し、「豊中市新型コロナウイルスQA」を開設しました。これによって、場所や時間を問わず知りたい情報を簡単に取得できるようにしました。

とよなかデジタル・ガバメント戦略(2020年~2022年)
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出典:豊中市ホームページ「とよなかデジタル・ガバメント宣言」より引用し、作成

 次は、広島県の例です。同県では、「デジタルトランスフォーメーション推進本部」を設置して、行政業務のデジタル化にとどまらず、「仕事・暮らしのデジタル化」「地域社会におけるデジタル化」「行政のデジタル化」の3つの柱に基づいて、住民や企業を巻き込んだデジタル改革に取り組んでいます。県と自治体が協調しながらのDXを実践し、社会課題の解決に加え、最新技術を活用した経済の成長・発展、次世代を担う人材育成にも取り組んでいます。

 そして、国税庁の例です。平成30年度税制改正を受けて、令和2年分からこれまで紙ベースで処理していた年末調整を電子化しました。これによって、役所のみならず従業員から集まった書類の処理業務を行う企業の効率も向上できます。年末調整に関連した業務は、生命保険料控除や住宅ローン関連の控除証明書など異なる複数の書類を扱い、内容確認や給与システムへの入力、税計算など複雑でした。国税庁は、「年調ソフト」と呼ばれる無償のアプリケーションを公開し、従業員が自宅や職場のパソコンやスマホで、保険会社や金融機関からダウンロードした自身の控除証明書などの電子データをインポートして、正確な控除額を計算できるようにしました。

 海外ではエストニアが、早期からデジタル・ガバメントの実現に取り組んだ先進国家として有名です。2002年に国民ID番号を記録した電子ID番号カードが配布され、婚姻・離婚・不動産売却の手続きを除く全ての行政手続きを24時間365日インターネット上で行うことができるようになりました。住民の94%がデジタルIDを取得済であり、その仕組みは既に広く活用されています。

 また、現在、EU(欧州連合)の中でデジタル・ガバメントの取り組みが最も進んでいるのがデンマークです。日本のマイナンバーに当たる「CPR」、市民ポータルにログインするために必要となる「NemID」、電子私書箱、公金口座を、基本的にすべての国民が保有。様々な行政サービスを効率よく受けられるようになっています。デジタル署名や電子決済が可能なだけでなく、不動産の登記、企業情報の提供などもデジタル化しています。同国では、AIなど最新技術を活用する際に、システム設計前の段階から心理学、文化人類学などテクノロジーの専門家以外にも参加を要請。機敏かつ柔軟に改善のサイクルを回しながら、利用者が納得して利用できるシステムを構築しています。

豊かで安全・安心な社会に欠かせない行政のデジタル化

 デジタル・ガバメントが目指しているのは、住民と行政とのコミュニケーションがより最適で便利になり、また行政と関連機関間の組織の壁を越えた連携により円滑な手続きを可能とする社会です。そのためには、住民と行政との間の「信頼」を確立することが重要です。日本では、個人情報保護法をはじめとしたプライバシーの保護、安全・安心なデジタル利用のためのセキュリティの確保、そして、そしてマイナンバー制度をはじめとした情報についての利活用ルールを定め、デジタル社会における信頼の確保に努めています。

 生涯にわたって、人々が必要な時に必要なサービスを必要なタイミングでシームレスに利用できる、そんな社会の実現のために、行政のデジタル化は重要な手段です。地域ごとの実情や、住民一人ひとりのライフサイクルに寄り添うサービスが、今後行政に一層求められるようになるとNECは考えています。デジタル・ガバメントは、新たな日常を支える基盤となり、暮らしや経済の維持、発展に向けデジタルを活用することで国民の幸福を実現する、それこそが目指すゴールなのです。

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