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2021年10月29日


行政DXで「誰一人取り残さない」well-beingな社会の実現を目指す

 少子高齢化による労働力不足は深刻さを増し、新型コロナウイルスの感染拡大で社会のデジタル化が加速。行政においても、デジタル変革は待ったなしの状況となっている。しかし、先行する国々に比べると、日本における取り組みは、まだ道半ばというのが実情だ。先行する国々はどのように取り組みを進めているのか。今後、日本はどのような道をとるべきなのだろうか。

行政DXの目的は「少子高齢化への対応」と「住民・職員のwell-beingの実現」

 近年、日本では少子高齢化が急速に進み、2042年には高齢化率が36.1%に達するといわれる。人口減少による過疎化の問題も深刻で、日本創生会議の試算によれば、「2040年までに消滅の危機に直面する市区町村の数は896に及ぶ」見込みだ。

 税収減による公務員の定数削減と高齢化が進む中、職員一人ひとりの業務負担は増大している。「この状況を乗り切るためには、デジタルを活用した新たな取り組みが不可欠です」とNECの小松 正人は指摘する。

 一方で、新型コロナウイルスの感染拡大は国民の意識を変え、行政のビジョンにも影響を与えつつある。

 「これまで自治体は、利便性の向上や効率化・生産性向上のためにICTを活用してきました。しかし、コロナ禍を機に、デジタルを活用して、住みやすいまちづくりや働きやすい職場づくりを行うことも、重要視されるようになりました。少子高齢化社会への対応と、住民・職員のwell-beingの実現。この“二兎”を追うためのデジタル活用が行政DXだと考えています」(小松)

NEC
デジタル・ガバメント推進本部長
小松 正人

海外の取り組みから得られる示唆~「人(ヒト)」「ルール(法制度)」「ビジョン」~

 行政DXが先行する海外で、注目を浴びている事例がある。コロナ禍における感染症対策で大きな成果をあげた台湾だ。

 「台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏が、「well-beingな未来の実現~デジタル活用の課題と展望~」というテーマで、NECの取締役 会長 遠藤信博と対談をしました。オードリー・タン氏の発言の中で、特に以下3点がポイントであると感じました」(小松)

オードリー・タン氏コメント
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 一方、国連の電子政府ランキングでNo.1に輝くなど、行政DXの分野で世界をリードしているのがデンマークだ。デンマークのIT企業、KMDの前CEO・エヴァ・ベルネケ氏はこう語る。

 「デンマークでも、以前は、官公庁や自治体ごとに異なるシステムを利用しており、組織間でデータのやり取りができないことが大きな問題でした。しかし、法令によって組織間のデータ共有や利活用が義務化され、組織を超えたデータの活用が進みました」

 「国が国民や企業に対して“信頼できるデータ”を用意することが、社会のデジタル化に向けたステップの1つ。マイナンバー制度を導入した日本もまた、そのステップを歩み始めています。デンマークでは、社会のあり方を変えるために50年以上を要しましたが、かつての生産性や効率性を重視していた時代から、幸せに健やかに過ごせる社会を創る時代へと移行しつつあります。『よりよい社会をどう実現するか』というビジョンを持ち、その実現に向けて、一歩ずつ歩んでいくことが重要です」とベルネケ氏は語る。

 デンマークには「デジタル対応のための7原則」があり、この7原則に準拠していない法案は、国会に提出できないルールとなっている。また、法整備にもデジタル専門家の参画が義務付けられ、デジタル化を前提としない法律をつくることは事実上不可能となっている。

 行政から市民へのメッセージはデジタルポスト(電子私書箱)に届けられ、市民は一般的な行政サービスにおいてオンラインのセルフサービスの利用が義務付けられている。こうした数々の施策により、行政と市民とのコミュニケーションのデジタル化率は約90%に達した。

 さらに、デンマークでは、デジタルデバイドを解消するための、さまざまな取り組みが行われている。なかでも特筆すべきは、IT弱者といわれる高齢者への手厚いサポート体制だ。例えば、図書館や市民情報センターには、「ITカフェ」と呼ばれる対面の相談窓口や、「ITヘルプ」と呼ばれる電話相談の窓口が設置され、デジタル操作の無料講習会も定期的に開かれている。

 「デンマークでは、ITカフェや無料講習会の講師のほとんどがボランティア。ここは、日本とは大きく事情が異なるところです。そして、住民のライフサイクルに沿ったデジタルサービスを“揺りかごから墓場まで”提供していこうというのが、デンマークの考え方。さすがは電子政府ランキングNo.1の国、と実感させられます」

デンマークにおけるデジタル化の考え方
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本当に必要な人に 必要なサービスを提供する行政DXはどう進めるべきか。

 それでは、日本はどのように行政DXを進めるべきなのか。その道筋において重要なポイントなるのは、「ルール」と「人」だ。

 まず、「ルール」の観点からみると、マイナンバーカードの義務化や行政サービスのデジタル化の義務化、官公庁・自治体間のデータ連携の義務化、政府による国民の所得・資産の把握の義務化などがあげられる。だが、日本では個人情報の情報漏えいなどに対する懸念が強く、国民の合意形成が難しいこともあって、こうしたルール整備を行うことは難しい。

 「日本の世論は、100%の安全・安心といったゼロリスクを求める傾向、リスクではなく不安や不確実な脅威に対する対応を求める傾向が強い。そこで考えられるのが、『リスクを明確にして対策を国民に示し、皆でリスクを共有する』方法です。リスクをゼロにはできないまでも、ゼロに近づけることで合意するわけです。例を挙げると、マイナンバー法では、特定個人情報は『データを暗号化していても、安全管理措置は必須』とされ、ゼロリスクの考え方に基づいて制度化されています。例えば、これをデータの機微度に応じて情報区分を明確にし、区分ごとにセキュリティ対策を設定するという方法が考えられます」(小松)

ルール(法制度):データの情報区分に応じたセキュリティ対策案
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 「所得と資産を政府が把握することで公平な社会が実現する、という意識が強いデンマークと比べると、日本では政府に個人情報を把握されることへの抵抗感が根強い。このため、日本ではプライバシー保護と社会的利益とのバランスを取ることが必要でしょう。さらに、政府への国民の信頼度を向上させることも重要です。そこで、日本における国民との接点である自治体が地域に根差した政策を立案・実行することで、国全体の信頼度を上げられるのではないでしょうか」と小松は提言する。

 それではもう1つの「人」の観点ではどうか。

 「現在、日本のデジタル庁では『誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化』というミッションを掲げています。これは、行政システムに関するアクセシビリティ(誰でも簡単に利活用できること)に限定されたことではなく、システムを使わなくても誰もがデジタルの恩恵を受ける社会をつくることではないでしょうか?行政システムへのアクセシビリティは、いずれAIで解決できると考えています」と小松は言う。

 現在、NECでは、AIを搭載した高齢者向けタブレットによる実証実験を行っている。このタブレットは、画面内のロボットとの会話やタッチ操作により、誰でも簡単に使いこなすことができ、実証実験に参加した方からも好評を得ているという。

ヒト:デジタルデバイド対策
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 「むしろ重要なのは、本当に必要な人に、必要なサービスを行政が提供することです。例えば、国や自治体から補助が受けられることを知らず、補助金の申請を行っていなかった人をどうするか。あるいは、国民一人ひとりのライフサイクルに合った、パーソナライズされた行政サービスをいかに提供するか。自治体職員や地域のサポートがあれば、仮に行政システムにアクセスできなかったとしても、取り残されない社会を実現することは可能だと考えます」(小松)

 そのためには、本当に必要な人に必要なサービスを提供できる、デジタル・DX人財の確保・育成と仕組みが不可欠となる。もちろん、行政職員に求められるスキルも大きく変わってくるだろう。

ヒト:行政職員に求められるスキル
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 つまり「ルール」と「人」の両面から、さまざまな政策を打ち出していくことが、行政DXを加速させるトリガーとなるわけだ。

 「住民と職員のwell-beingの実現という「ビジョン」、プライバシー保護と社会的利益のバランス・地域に根差した政策立案という「ルール」、本当に必要な人に必要なサービスを提供する・そのための人材を確保・育成するという「人」の3つの観点で取り組み、デジタルの力でwell-beingな社会を目指すこと。この成果が行政DXと呼ばれることになるのではないでしょうか」と小松は言う。

デジタルの力で誰一人取り残さない社会を実現へ

デジタル・ガバメントで実現するちょっと先の未来 ~デジタルが導くwell-being~

 日本が目指す、誰一人取り残さない、すべての人のwell-being――。今後もNECはそうした未来や社会の実現に貢献していく考えだ。

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