2016年02月12日
津田匡保氏(前編)~ネスレに学ぶ、顧客の課題解決の視点から生み出すイノベーション創出術~
社会と企業、双方の「共通価値の創造」(Creating Shared Value:CSV)を掲げ、世界190ヵ国以上でグローバルにビジネスを展開するネスレ。その中でもネスレ日本は、「ネスカフェ システム」「ネスカフェ アンバサダー プログラム」などを通じ、「課題解決型」のマーケティングを続けています。同社 Eコマース本部ダイレクト&デジタル推進事業部 部長の津田匡保氏に、ネスレ日本がどのようにイノベーションを創出しているか、お話をお聞きしました。

ネスレ日本
Eコマース本部
ダイレクト&デジタル推進事業部
部長
自宅にいながら本格的なコーヒーが楽しめる「ネスカフェ システム」はいかにして生まれたのか
──貴社についてお教えください。
津田氏:
ネスレという会社は、日本では1913年に創業し、コーヒーやチョコレートなどを主力商品として扱ってきました。
グローバルでは、栄養、健康、ウエルネス分野において、グループ全体で「共通価値の創造」(Creating Shared Value:CSV)を掲げています。これは、それぞれのビジネスを行う国や地域の社会的課題を解決してビジネスにつなげるサイクルを作ろうという取り組みです。
日本では、人口減少や高齢化、単身、2人世帯などの核家族化が進んでいるという現実があります。これは、裏を返せば家族消費から個食化が進み、コーヒーの個人消費機会は増加傾向にあるということでもあります。ネスレ日本のミッションは、この現実をビジネスチャンスと捉え、どう成長するかということにありました。
コーヒーの個人消費に関する課題、すなわち、自宅にいながらにして、本格的なカフェのコーヒーを楽しみたいというソリューションが、2009年に発売した「ネスカフェ レギュラーソリュブルコーヒー」専用マシンの「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」といえます。
──日本市場向けに開発された商品とのことですが、具体的にはどのあたりが日本向けなのでしょう。
津田氏:
国によって、ソリュブルコーヒーがどれくらい飲まれるかは違います。アメリカは自分でコーヒー豆を挽くレギュラーコーヒーが主流ですが、日本はソリュブルコーヒーが一般的です。このソリュブルコーヒーを、簡単に、使い勝手が良く、かつレギュラーコーヒー並みにおいしく飲めるようにしようという点にこだわりました。
具体的には、お湯も沸かさなくていいし、カプセルなどのゴミも出ないように設計した一方で、細かいところまで掃除ができるように、あらゆるパーツを分解できるようにし、本体を省スペースにしました。海外製は大型のマシンでしたが、設計者に実際の日本の住環境を体験してもらって、改良を加えました。
また、日本人は欧米に比べて「熱い飲み物」が好きです。このため、コーヒーの抽出温度を高くすることに苦労しました。こうした点が受け入れられ、レギュラーコーヒーに比べて、遜色のない味との評価を得ることができ、累計販売台数で300万台を突破するコーヒーマシンになりました。
その他にも、レギュラーコーヒーやラテマキアート、エスプレッソなどが楽しめるカプセル式コーヒーメーカー「ネスカフェ ドルチェ グスト」などの商品が生まれ、一連の商品群は「ネスカフェ システム」と呼ばれています。