2016年02月26日
津田匡保氏(後編)~小さく作って、走りながら改良する、ネスレ流「ビジネスモデルの作り方」~
お客様の課題を解決する視点から、数々の「日本発」のイノベーションを生み出しているネスレ日本株式会社。職場のコミュニケーションのあり方を変えたといわれる「ネスカフェ アンバサダー プログラム」の取り組みを通じて学んだことや、今後のイノベーション創出に向けた取り組みになどについて、同社 Eコマース本部ダイレクト&デジタル推進事業部部長の津田匡保氏にお話をお聞きしました。

ネスレ日本
Eコマース本部
ダイレクト&デジタル推進事業部
部長
お客様との「共創関係」がサービスの大きな原動力に
──「ネスカフェ アンバサダー プログラム」の取り組みを振り返って、どのような気付きがありましたか。
津田氏:
各職場から「ネスカフェ アンバサダー」に応募いただき、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を無料でレンタルする「ネスカフェ アンバサダー プログラム」は、おかげさまで現在22万人を超えるほどに成長しました。全国に600万あるといわれるオフィスの数に比べると、まだ道半ばだと思いますが、需要期である秋から冬にかけては月に1万人くらいのペースで増えています。
どういうところに「バリスタ」が置かれているかを見ると、38%が一般的なオフィス、次いで16%が小売店やカーディーラーなどのお店、そして10%が病院、そのあとに大学などの教育機関や美容室などが続いています。
──お客様の声というのは、どのようにサービス改善に活かされていますか。
津田氏:
定期的なサービス改善のために、私たちは、「メールアンケート」や「グループインタビュー」「アドバイザーの職場訪問」「サンクスパーティなどのイベント」「職場の様子を投稿いただくWebサイト」「コールセンター」といったあらゆるタッチポイントを通じ、お客様の声を集めています。
こうした取り組みは、もちろんサービス改善のために行っていることですが、私たちもお客様の顔が実際に見えることで、さらにモチベーションが上がるという副次的な効果もあります。
──こんなユニークな場所で使われていた、というような事例はありますか。
津田氏:
そうですね。自治体が取り組む生涯学習の場で「高齢者大学」というのがあるのですが、廃校になった小学校を使って、高齢者の方が様々なことを学んでいます。あるアンバサダーの女性は、ここで料理を教えながら、自宅でも料理教室を開いて、近所のおばあちゃんたちとお菓子などを作っています。
こういうシニアコミュニティに「バリスタ」が置かれ、コーヒーを通じたコミュニケーションが生まれています。コーヒーを中心としたコミュニティが、いつしか独居老人の安否確認のような機能も果たしています。
──ネスレの競争力の源泉というか、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の「種」は身近なところにあるのだと感じます。
津田氏:
はい。アンバサダーのリクルーティングについては、広告やプロモーションも実施していますが、全体の3割くらいは、他のアンバサダーからの口コミがきっかけで応募されています。良いサービスを提供すれば、お客様が口コミで広めてくれる、いわば、お客様との共創関係がサービスの大きな原動力になっています。今後もさらにサービスを進化させて、職場の新たなチームワークの醸成に一役買っていきたいです。