2014年11月21日
『テクニウム~テクノロジーはどこへ向かうのか?』 ケヴィン・ケリー氏インタビュー
~『WIRED』創刊編集長が語るテクノロジーの進化と日本の未来
日本はもっと荒々しく、トライして失敗せよ
──日本のデジタルマーケットについてはどう思われますか? 日本はしばしば「イノベーションが起こりにくい社会」だと言われることがあります。
ケリー氏:
日本の市場に関しては、正直よく知りません。ただ、皆さんはまだCDを購入されていると聞きました。私の子どもたちは、CDなんて買ったことはありませんよ。日本の市場に関して、一つメッセージとして挙げるならば、私が『WIRED』を始めた頃、今ある姿を想像することは不可能だったと思うのです。もし私が2、30年前に戻ったとして、携帯電話やインターネットなど今の世の中にあるすべてのことを誰かに伝えたとしても「そんなの無理だね、そんな経済モデルないでしょ。誰がそのお金を払うの? 情報が全部無料でもらえるなんて? そんなの不可能だね」と言われると思います。でも、今ここに、そういった世界は実在するのです。つまり、次の20年を考えたときに、多くのことが若干クレイジーで非現実的、非常に意味不明に思えるはずなのです。そしてきっと、今後20年で最も大きな発明は、今はまだ発明されていないでしょう。考えられてもいないのです。ですから日本のデジタルマーケットも、まだまだいくらでも巻き返しができると思っています。
──最後に、日本の読者に対してメッセージをお願いします。

ケリー氏:
私には23歳の娘がいます。彼女は6か月間かけて日本を含む本当にたくさんのアジアの国々をめぐり、各国の若手企業家たちにインタビューをしていきました。若手企業家たちに会うのは本当にエキサイティングなことです。シリコンバレーで最も重要な発明やイノベーションはトランジスタではありませんでした。ソフトウェアでもなく、企業文化やスタートアップ文化そのものなのです。この文化はさまざまな国で広がっており、これからも増えていくでしょう。まさにあなたがた日本人は、青色LEDでノーベル賞を受賞したばかりですよね? もっとそういうことが必要なのです。私は、青色LEDのようなイノベーションが、これからはスタートアップ文化のなかから出てくると思っています。日本でも昔はもっとそういう文化があったと思うのですが、最近はあまり聞かないように思います。もっと荒々しくあっても良いと思っています。ですから、私からのメッセージとしては「トライをして失敗をしなさい」ということです。
(インタビュー・文=宮崎智之)